プロローグ レースの後で
「ウサギとカメ」のお話を知っていますか?
足の速いうさぎと、のろのろ歩くかめが、ある日レースをすることになりました。うさぎは、自分が勝つのは当たり前だと思っていたので、途中で昼寝をしてしまいます。その間に、こつこつ歩いていたかめが、とうとうゴールにたどり着いて——勝ってしまいました。
これは昔から伝えられている、有名なお話です。
けれど、もしこの話の“その後”があったらどうでしょう?
かめはほんとうに、心からよろこんでいたのでしょうか。
うさぎはただ負けて、悔しがって終わったのでしょうか。
じつはこのレース、世界のいろんな国でちがう見方をされています。
「かめは正々堂々としていない」
「うさぎは自業自得だ」
「かめのように地道にやるのがいい」
「いや、うさぎのように才能がある方がすばらしい」
それぞれの国、それぞれの人が、いろんな感じ方をしているのです。
このお話は、レースのあとのうさぎとかめの物語です。
勝ったはずのかめ、負けたはずのうさぎ。
ふたりは、自分の気持ちを見つめなおす旅に出ました。
この旅は、競争や勝ち負けではなく、「自分ってなんだろう?」を探す旅。
そして、相手のこと、自分のこと、いろんな価値観と出会う旅です。
あなたは、かめの気持ちに共感するかもしれません。
あるいは、うさぎの悔しさがわかるかもしれません。
どんなふうに感じてもかまいません。
ただ、少しだけ想像してみてください。
「ちがう考え方があるって、すてきなことかもしれない」って。