男よ!トイレを抱いて死ね!
今日は月曜! 月曜真っ黒シリーズです!(*^^)v
初めて付き合った男からドライブに誘われ、目一杯おしゃれして迎えに来たクルマに乗り込んだら……クルマの中は“ドリンクバー”状態だった。
コーヒーや紅茶を詰めた水筒が10本もあり、男のウンチクと共にそれを連続で飲まされる。そのトリである10本目の“コピ・ルアク”が詰まった水筒を男が取り出した頃には……高速道路の渋滞が酷くなりクルマは殆ど前に進まなくなった。
そして……コーヒーや紅茶を9杯も飲まされた私の尿意も冷や汗と共に酷くなっていた。
私は鼻を膨らませてウンチクを語ろうとする男に「次のサービスエリアへ入って欲しい」と懇願し、男は途端に不機嫌になった。
それからお互い無言の長い時間が過ぎ、ようやくサービスエリアへ辿り着き、やっとの思いでクルマから出た私を待ち受けていたのは女子トイレの長い行列で、目の前が真っ暗になって、その場にへたり込んだ。
クルマから降りる私を一瞥した男の物凄く不機嫌な顔も目の前にチラつくし……
もう背に腹は代えられない!!
私は顔を伏せ、男子トイレへ駈け込んだ。
やっとの思いで平静を取り戻し、駐車エリアに戻ってみると……別のクルマが停まっている。
「えっ?! 場所を間違えた??」
と戸惑っているとスマホにメッセが入った。
『男女の見境の無い下品な女の乗る席は無い!』
私はサービスエリアに放置されたのだった。
それからどんな苦労をして家へ帰ったのかは敢えて書かないが……私を棄てた男に不名誉な噂まで流されて……私は何年か暗い時代を過ごし、男と付き合う事も無かった。
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それは天啓というものなのだろうか……
拗れた挙句の果ての私は“化学屋”になり、日用品メーカーの研究開発職に潜り込めたのだが、そこである日、偶然作り出してしまった高分子ポリマーの副産物は私にとっては極めて画期的な物だった。
無色透明なそれは純水の様な流動性があるが、ある条件下では急速にゼリー状に固まり約24時間後にまた流動体へと戻る。
これで一矢報いられるのでは無いだろうか??!!
あの“悪夢の出来事”から長年ずっと不満に思って来た事……
それは男子トイレに対し女子トイレが少な過ぎると言う事!!
ご存知だとは思うが男子トイレは個室の他に、ずらりと並んだ“朝顔”なる物を擁している。
ここで男共は横並びとなり、恥ずかしげも無く“小用”を足している。
よく言えば『Touch&Go』なのだろうが、掛かる時間が短くスペースも小さく済むのだから女子トイレに比べ、その“処理能力”は高い。
にも拘わらず!!
ややもすれば男子トイレは女子トイレに比べ、その占有面積が大きい!!
これはいったいどういう事か??
明らかに“男社会”による弊害である!!
公平を期すのであれば、女子トイレの占有面積を広げ女子トイレの個室の数を大幅に増やすべきであろう!!
それが成されないのであれば!!
私はささやかなテロ行為に出た!
混雑時の男子トイレに男装して忍び込み、私が作り出した画期的物質を流し込んで、しばらくの間、“朝顔”を使用不可にする。
しかしたった一人の抵抗では並び立つ“朝顔の”前では余りにも無力で……その無念を酔った勢いで、つい愚痴ってしまったら……意外にも賛同者を得た。
そして我ら五人の“戦士”は今、ハイエースに乗り込み、私の長年の怨敵の……あのサービスエリアの男子トイレへと向かっているのだ!
男装した我々は、今までで最もムカついた男の名前をコードネームとして使っている。
ハイエースの運転を買って出たのはトラックドライバーの『マサヒロ』
下した窓に右ひじを出し、咥えタバコをしているが自前の“つなぎ”を着込んだその姿は既に男前で……私が少しメイクを施すとすれ違う女子達の目が皆、♡になった。
膀胱炎になってしまう被害を被った『ノブテル』と会社の汚い男子トイレの掃除を散々させられた『キヨタカ』はざっくりした洋服にフルフェースのヘルメットを被った。
あと、トイレでの被害では無いが……温泉旅館の……大浴場とはとても言えない狭い女風呂で、男からノゾキの被害に遭った『青(これは旅館の屋号の頭文字だが)』は……素はめちゃめちゃ可愛い女の子なのだが、髪をボサボサにしてボウボウの付け髭に小さな丸いサングラスを掛け、レゲエのおっちゃんを演ってノリノリだ。
そして私は……手慣れた男装メイクでヌボーッとした『タクヤ』と化している。
そろそろ渋滞が長くなって来た。
目的地はこの渋滞の先!!
勿論我々は今日のミッション達成の為、前日から水分を控え、サービスエリアでキラキラしているご当地ソフトクリームやジェラートには目もくれない所存だ!
目の前にあるクーラーボックスの中はジュースなどでは無く、我々の武器『Destroyer Of Lavatory』が入っていて、私は1本ずつそれをメンバーへ手渡した。
いよいよ静かなる戦いの幕が切って落とされるのだ!
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私達はそれなりに列を成している男子トイレの順番待ちに加わった。男子トイレの“勝手知ったる”私がトップバッターだ!
私の前の男は貧乏ゆすりをしながらスマホをクリクリやっている。
尿意か他の事でなのか、焦り気味の様だ。
こう言うヤツらの動きこそ妨げたいのに……なんとも惜しい事だが仕方が無い。
そうこうしているうちに“私の番”が来て、私は『D.O.L』の筒先をもぎ取って“朝顔”の中へ勢い良く放出した。
他の四人も次々と放出を終え、我々は目配せして“朝顔”を離れた。
“朝顔”を五基封鎖すれは、少しは女子トイレの数と拮抗するであろう。
我々は怒りに任せたテロリストでは無い!
それなりに節度は保っているのだ。
そもそも下品な男ドモは……必要があれば、その辺の草むらへも放尿が可能なのだし!
さあ、時計を見よう!
もうすぐ……
と、ガヤガヤと妙齢の“お姉様方”の声がして私達の横を通り過ぎ、男子トイレの開いている二つの“個室”のドアがバタン!バタン!と閉められた。
あまりも鮮やかなその技に……男ドモのみならず私達までしばし固まった。
さすがはお姉様方だ!!
帰りの車中……
「今度は個室も占拠して封じてしまおう!」等々、作戦会議の花が咲いた事は言うまでも無い。
おしまい
こういうサスペンス?調もたまにはいいかなと(^^;)
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