お年寄り美少女の憂鬱
登場人物
鈴樹エリカ:転校生の少女。なんだかお年寄りっぽい。
鈴木大輔:エリカのパートナー。エリカの秘密を知っている。
放課後、大輔とエリカは一緒に下校した。ふたりは学校から少し離れた自宅近くの街まで歩きながら、周囲の景色を楽しんでいた。
通り過ぎる自動車の音や、ふたりの横を通り抜ける自転車のベルの音が響く中、ふたりは会話を交わしながら歩いた。時折、ランドセルを背負った小学生たちが走り抜け、元気な声で「待てまてーっ!」と叫び、追いかけっこをしながら家路を急ぐ。その平和な光景に、エリカは心の中が温かくなるのを感じた。
「エリカ、大丈夫? 疲れてない?」
大輔が優しく問いかける。エリカは少し考えてから、微笑んで答えた。
「ええ、大丈夫よ。初めてだから戸惑いもあったけど……。若い人たちと一緒にいると、自分まで元気になった気がするから気をつけなくちゃね」
「……エリカは十分に若いと思うよ」
「……そうだったわね」
エリカはそう言いながら、空を見上げた。その瞳は、どこか遠く――大輔では想像できないような遠く――を見つめるような視線を放っていた。
通り過ぎる人々はそんなふたりを見て、小さく微笑んでいた。ふたりの仲睦まじい姿をカップルだと思っているのかもしれない。大輔はその視線に気がつくと少し恥ずかしさを感じながらも、エリカと共に歩き続けた。
「エリカ、無理しないでね。何かあったら、すぐに言ってほしい」
「ありがとう、大輔くん。優しいのね。私は……」
エリカは言葉を探しながらも、自分の中にある不安と向き合うように、少し黙り込んだ。
平穏な街の風景とともに、ふたりは歩みを進め、鈴樹家へと帰宅する。エリカの心には、まだ解けない謎と、そして新しい生活に対する期待が交錯していた。
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