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第4章  〜呪い〜

「チリン」


「お願いします、うちの子が大変なんです。助けてください」


「ドン」


迷いなく金貨十枚がカウンターに置かれた。


侯爵あたりだろうか。

貴族の男が訪ねてきた。

話を聞くと、娘が魔女に呪いをかけられて苦しんでいるようだった。

戦争で負けた魔女に先祖様が末代を呪われて、今更、娘に異変が起きたらしい。

今まで何度も医者や、霊媒師や、聖女様や、呪術師を雇って見てもらったが、どれも失敗に終わったらしい。


「女神様なら娘のアリスの事をどうにか出来るのではないかと思い最後の希望を託したのでございます」

そう貴族らしき人に懇願されるエリナ。


「「その依頼、お受けします!」」



    *     *

移動中にマレイナとその男が会話していた。

「私の名前はマレイナです、貴方の名を聞かせていただけませんか?」

「これはこれは噂には聞いていましたが、本当に王女様が働いていらっしゃるとは

失礼、私の名はバゼフ・フォン・アングラーと申します」


そして侯爵邸へやってきた。

やはり侯爵だったようだ。


「こちらです、さ、入ってください」

執事が出迎えてくれた。

長髪で白い髪、険しい顔の人だ。


大きな邸だ。

芸術品が多く飾られている。

絵画や彫刻、ワイバーンの首まで飾ってある。

長い廊下を歩いた先にようやく辿り着いた。

「ここがアリス様の部屋です」


「がちゃっ」


そこにはベッドに横になっている少女の姿があった。

「ごほっ、げほっ、げほっ」

かなり辛そうだ。

「大丈夫ですか!?」

マレイナが一目散に駆け寄った。


「貴方は?」

アリスにそう問われた。

「わたくしの名はマレイナ・フォン・アースティン王女ですわ、そしてあの方が女神エリナ様です!貴方のことを治療してくださる方ですわよ」

「え?私のことを治療?」

「うん。アリスちゃん、絶対助けてあげるから安心して、ちょっと見せてもらうね」

そう言って少女にゆっくりと近づいた。


診察、というより鑑定してみると、少女の体には魔神が住み着いていた。

どうやら今になって魔神が少女の体を乗っ取ろうとしているらしい。

どう説明したものか。エリナは次の言葉に困って。

「アリスちゃん、バゼフさん、落ち着いて聞いてくださいね、アリスちゃんの体を魔神が乗っ取ろうとしています」

いなかった。


「えぇええええーーー!?!?」


「それはどういう事ですか女神様」

バゼフが怒鳴った。

通りで今まで呪いが解けなかったわけだ。

数100年前、魔女に呪いとして魔神の魂を埋め込まれたのだ。

「このままで呪いを解こうとすると魔神が外に放出させてしまうかもしれません。

なので外に逃げ出さないように結界を貼ります。少し離れていてくれませんか?」

そういうエリナに皆こくこくと頷いて、部屋を出ていった。


「では魔神の魂を体外へと放出させます」

アリスは唾を飲み込んだ。

「いきます!」


ぱちん

指を鳴らした瞬間に「それ」が出てきた。

そう、魔神である。

禍々しく2本の角を生やしている赤色の魔人。

真っ先にエリナを襲おうとしたが、手が届く寸前で絶命した。


『ジャッジメント』である

脳から送られる電気信号を全て遮断し、心臓を停止させたのだ。

詠唱は間に合わなかったがそんなことは関係ない。

なぜなら女神にとって詠唱とは、ただ単に無詠唱ができない人に合わせたり、格好をつけたりするためだけのものであった。


なのでほんのコンマ数秒のことでも、相手を絶命に追いやる程度の魔法は使える。

それが女神という生き物なのだ。

そして地面に倒れ伏した魔神の死体。

アリスは唖然としていた。今まで自分を苦しめてきた元凶が今、あっさりとその生涯を終えたのである。


エリナは手を

「パン、パン」

と鳴らしバゼフ達を呼んだ。


「終わりましたよ!バゼフさん、マレイナちゃん!」

そしてすぐ彼が扉を押して出てきた、おそらくドアの前で今か今かと待っていたのだろう。

「大丈夫か!何かが地面に倒れるような音がしたが!それとアリスはどうなった!」

そう叫びながら最初に入ってきた。そしてさらに叫ぶことになるのだった。

みんなと一緒に。

そしてみんなが入ってきた時あたりに気づいたのである。

そこに魔神の死体があることに。

ベッドで死角になっていて最初は見えなかったのであろうが。


「「「ぎゃーーーーなんじゃこれはーーーーー」」」


当然のリアクションである。

自分の娘の部屋に魔神の死体が転がっているのであるからそれは誰でも叫ぶだろう。

そしてしばらく経って平静を取り戻した様子のバゼフがもう1度訪ねた。

「これは一体なんだ、それよりアリスはどうなった!」

「アリスさんは無事治りましたよ!」

「おぉそれは良かった」

そう言ってバゼフの頬に涙が伝う。


「そしてこれが彼女を苦しめていた元凶の魔神です。

貴方の娘の身体に住んでいた魔神なので、貰う権利は貴方にあると思うんです。」

そう言って死体を掲げた。

「あ、あぁそれはこちらで処分しておこう」

と言っても魔神の死体はすごく高値で売れるのであるが。

それも無傷の状態のものともなればそれはもう。


「ということで依頼は完了ですよね!」

バゼフはアリスの顔を見てから返事をした。

「もちろんだ!金はしっかり出させてもらう!」

そうして袋いっぱいに入った金貨を見てエリナは微笑むのであった。

透視をして、金貨の枚数は正確に数えている。

そこには金貨が100枚入っていた。

定時額より10枚多い。

その笑顔は商人として、ではなく女神としての微笑みに見えた。


「「ありがとうございました!またお越しくださいませ!」」

マレイナとエリナの声が揃った。


かくして、女神エリナ相談屋はさらに名を上げていったのであった。

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