第3章 〜ワイバーン討伐〜
「女神エリナ相談屋」それがこの店の名前である。
女神ということを一般的に公表するという明らかにおかしいことをしている。
店の内容としては、女神様のお造りになった商品が高値で買える。
と言うものであった。
原価が〇円なのでぼったくりである。
ライターや、入れた水が浄化されるコップ、高価な美容品や、世界トップクラスの剣や鎧がメインの商品である。
それと、店名にある通り相談ができるのだ。
それも女神に!
相談するだけで1回金貨十枚、解決したらプラス90枚
日本円にして金貨1枚が10万円である
当然の価格だ。
女神に相談できるのだから。
そしてどんな相談でも解決してくれる可能性がある。
もうとっくに自重は諦めている。
貴族や王族がお得意様になってくれる確率も高いだろう。
そしてやってきた開店の日。
しばらくしてその音が鳴った
「チリン」
「「いらっしゃいませ」」
「ここが女神エリナ様が在籍されていらっしゃる店でございますか?」
貴族のような風貌のものが訪ねてきた。
「私はこの国の宰相です。相談があって赴いた次第でございます。」
「相談というのはなんでしょうか?」
「あぁそれなんですが、この前姫様がワイバーンの群れに襲われたじゃ無いですか、それが王宮で問題になっていまして、そのワイバーンを討伐すべきだと結論づけたのです。
貴方様であれば信用できますし、高額な代金を支払うメリットがあります。
なので近くの東の森にいるワイバーンを倒していただきたい
もちろんワイバーンから取れた素材は貴方のものとしてその素材を使う権利があります。
いかがでしょう、受けていただけますか?」
マレイナを傷つけたワイバーンが元々気がかりであったので渡りに船である。
ならば選択は1つである。
「「その依頼お受けします!」」
エリナとマレイナの声がハモった。
そして金貨10枚を受け取った。
日本円にして100万円である。
王宮からしたら端金であろう。
「わたくしも同行いたしますわ! なんと言ってもわたくしのことを殺そうとしてきた相手。自分自身の手で敵を倒したいですわ」
マレイナがそう言った瞬間に、エリナはマレイナの魔法行使の魔力効率を100倍にしていた。
ファイヤーボールが500発は撃てるだろう。
流石に今の状態でワイバーンの群れを相手にできるとは思えなかったので。
マレイナはエリナの店員なので特別待遇である。
ということでマレイナと東の森に赴くことになったエリナ。
馬車は王宮側が手配してくれた。
王宮の馬車だけあって普通の馬車より振動が少ないように思える。
そしてエリナは傾けた。
水の入ったコップを。
アイテムボックスを使えばいつでもどこでも飲み食いができるのだ。
マレイナが羨やましそうにこちらを見つめてきたので、マレイナにも分けてやった。
と言ってもただの水なのであるが。
かくして、東の森へやってきた。
「それではやっていこう、ワイバーン討伐を!」
「おぉ!」
マレイナが冒険者のような返事をした。
冒険者にでも憧れているのだろうか。
普通の冒険者は西の森へ行く。
なぜなら東の森の薬草や獲物は借り尽くされており、何もない。なので今は西の森が主流なのだ。
それを逆手にとって、マレイナは目立たない東へ来たのだろう。
だがそれが裏目に出て、不運なことにワイバーンの群れに襲われてしまったのだ。
ここ数100年東の森には立ち入っていなかったらしい。
そのせいでワイバーンなどという凶暴なモンスターの滞在を許してしまったのだろう。
約30分ぐらい歩いただろうか。
マレイナの足ではそう遠くへはいけない。
ということは、すぐ近くにワイバーンの巣があるということだ。
ここで女神が気配を察知した。
「500メートル先にワイバーンの群れがいます!」
エリナは探知魔法をつかていた。
先に敵を発見できたなら先行攻撃ができる。
かなりのアドバンテージだ。
「見えました、あそこです」
「まぁ。この前より少し多いようですわ」
前回マレイナを襲ったのは戦闘部隊で、あそこにいるのは女、子供のワイバーンが多いのだろう。
「では、わたくし行きますわよ!燃え盛る炎よ…………」
小声で詠唱を始めた。
「ファイヤーボール!」
どおん
命中した。命中精度は良かったものの、魔力を練る力が弱かったらしく少し怯む程度であった。
「次こそ!水よ集え…………ウォーターボール!」
どしゃーん
マレイナのウォーターボールがワイバーンの左羽に命中し、今度はワイバーンを落とすことができた。
その瞬間、すべてのワイバーンが一斉にマレイナを襲おうとしてきたが、エリナがサイコキネシスで動きを止めていた。
「マレイナちゃんとどめです!」
「えぇ、わかっていますわ、水よ集いて刃となれ………ウォーターカッター!」
「しゅんっ」
今度は首が切り落とされた。
戦闘経験がないはずのマレイナにしてはよくやった。
魔法行使時の魔力効率を100倍にしたとはいえ…
「わたくし、こんなに魔法使えたかしら」
マレイナが自分の魔法に疑問を持ったようだ。無理もない。エリナに魔法行使の魔力効率を100倍にされているのだから。
そして同時に周りのワイバーンの顔が青ざめたような気がした。
と言ってもワイバーンの顔色など窺えないのであるが。
「次は私ね! ジャッジメント!」
ボドドドドド
落ちてきた。
それはもうボトボトと
エリナはワイバーンの、脳が体に送る電気信号を遮断し、相手の動きを止めたのである。
もうすでに心臓は動いていない。
「これで任務完了ですね!」
マレイナは驚愕していた。
流石に女神のすることとはいえど、何も起こらずに敵が一瞬にして死んでいくなどとは思ってもいなかったであろう。
そう、絶対に。
「きゃーーーーーーー」
大量に落ちてきたワイバーンの死体に思わず叫び声を上げたマレイナであった。
「ちりりん」
「ということでワイバーンの素材を買い取って欲しいんですけど」
「嬢ちゃんら手ぶらじゃねぇーか、何を買い取れってんだ」
「いえ、アイテムボックスの中に入っているのですけど」
「なにぃ?その歳でアイテムボックスが使えるのか?まぁたしかに才能があるならおかしいことじゃないな、ま、せいぜい頭1つとかだろうけどよ、ていうかなんでお前らがBランク級モンスターの素材を持ってんだよ。」
「さっき討伐してきたので」
「嘘つけきっと誰かが、運べないから収納持ちの嬢ちゃん達に渡すとか言われて貰ったんだろ」
そう言われたが黙ってワイバーンを5頭だけ取り出した。
残りの2頭は念のため取っておくのだ。
なにせアイテムボックスの容量は無限なのだから。
「ぁあっ…こっこっこっこれ…」
途中でなぜか鶏みたいになっている。
「なんだこれはーーーーー多い、多すぎる。」
驚くのも無理はない。
何もない空間から5頭もワイバーンが出現したのだ。
普通のアイテムボックスでは、ベテランの魔術師でもワイバーンまるまる1頭ぐらいが限界であろう。
それをいとも容易くこれだけの量を…
しかも5個中4個は無傷に見える。
傷をつけずにどうやって倒したというのか。
こんな状態のいい素材今まで見たことがない。
普通は少なくともやけどの跡くらいはつくものだ。
なにせワイバーンは空を飛んでいる。いくら低空飛行していたからと言っても魔術師無しじゃ勝てないだろう
「このワイバーンどうやって仕留めたんだ……」
疑問に思っていたが、1つの答えに辿り着いた。
「おまえ、いや、貴方様はもしや、女神エリナ様であられますかーーーー!!」
バレた。
普通王女の方が先に気づかれると思うが、ずっと城に引き篭もっていたらしく世間にはあまり顔を知られていないようだ。
そして素材料の金貨20枚を受け取った。日本円にして200万円である。
これだけ品質のいい素材なのだから妥当な価格だ。
「ここにも噂が広がっていましたか、と言っても私がやらかしたギルドの買取室なのですが…」
噂が広まっていて当たり前である。
「チリリン」
そう言ってギルドを後にした。
これが後のドラゴンスレイヤー女神という異常な二つ名の元凶となるとは夢にも思っていなかった。
* *
「ということで依頼達成の報酬を受け取りたいのですが」
「ああわかっているさ、金貨90枚用意している」
「ドン」
「ありがとうございました!」
こうして女神エリナ相談屋は初めての相談を成功させることができたのであった。