第2章 〜王宮〜
「お金稼が欲しいな〜」
女神ともなれば、その場でポン!っと金の塊でも、金貨でもジャラジャラとだせるものだが、そんなことをしてはつまらない。
なのでどうにか正攻法で稼ごうと思ったある時。
「回復ポーション持ちか治療魔法を使える魔術師はいないかーー‼️」
そんな叫び声が聞こえてきた。
急いで駆け寄ってみると護衛と思わしき人が貴族と思われる女性を担いでいた。
女性の背中には、爪で引っ掻かれたかのような傷があり、血も滴っていた。
おそらく、家での生活に退屈した貴族が、外に出て護衛をつけたもののワイバーンの群れにでも襲われたのだろう。
なぜ分かるのかって?それは女神だからだ。
「私に見せていただけませんか?私、医者の資格や、回復のポーション、治療魔法全て持ってますけど。」
そういって女神はその女性の元へと近寄った。
「無礼者!このような小娘にどうこうできるわけがないだろう、無関係な者はさっさと下がっておれ」
そう言って追い返されそうになったが違う意見を持つ人もいた。
「いや待て今はこの小さい希望にかけるしか無いのでは…」
「おいお前、やれるだけやってみろ」
「無理だろ、さっさと下がらせろ」
護衛の中で何やら揉めているようだが、構わず助けてやることにした。
なぜなら彼女は女神なのだから。
「範囲ヒール」
よくみると護衛たちもボロボロの傷だらけだったので今回は範囲ヒールという魔法を選択した。
「おぉ傷が癒えていく」
「うっ、うぅ…」
少女が唸っている。
「王女様!お目覚めですか!」
「なんだこの魔法は…王女様の傷が元通りに!」
「この歳であり得ん、こんな上級魔法を使えるなんて」
「神の御業じゃ、ありがたや」
こうして意図せずして王女様という重要人物に出会う事ができたのであった。
これが後の女神としもべ達のメンバーの1人になるとはまだ誰も思っていなかった。
* *
「わたくしの名は、マレイナ・フォン・アースティンですわ
お助け頂きありがとうございます!」
王女様の御礼が心に沁みる。
「ぜひ王宮に来ていただきたい」
「あなた様の偉業なら王様からの褒美をいただくこともも期待できるでしょう。」
少女の護衛にそう言われ、満面の笑みで王宮へ赴くこととなった。
渡りに船であった。
馬車内でこんな話が始まった。
「あなたの名前はなんと言いますの?」
「私はエリナです」
「まぁ、素敵な名前ですわね、あの魔法はどうやって覚えましたの?」
「昔、友達がゴブリンに襲われて怪我をして、助けてあげたい一心で「ヒール」と叫んでいたらいつのまにかにできていたんです」
そういう設定にした。
「素敵!まるで女神様にでも昇格したみたいですわね」
エリナは少しビクッとしたがバレてはいないようだ。
そして再び、次は全員がビクッとなった。
後輪が破損した衝撃で馬車が跳ね上がったのだ。
「後輪が破損しました」
御者がマレイナにそう告げた
「それでは王宮に行くまでにかなり時間がかかってしまいますわ」
エリナはめんどくさいなと思い、替えの後輪を用意してやることにした。
エリナがやったのだとバレない方法で。
「まぁ、これはなんですの?後輪が天からゆっくり落ちてきましたわ!」
これぞまさに後輪の降臨であった。
「よくわからんがこれで王宮まで今日中に着けそうだ」
そうして王宮へやってきた。
長い廊下を歩いていると、やがて「それ」がいる部屋までやってきた。
国王陛下である。
「お主が我が娘を救ったという少女か」
王室に招かれ、そう問われたエリナ。
「我が名はハルラン・フォン・アースティン。そなたの名はなんという」
「エリナでございます」
「そなたに褒美を与えたい
まずは金貨100枚と男爵位の爵位を授けようではないか
それと、なんでも一つ願いを言うが良い、これは、王としての褒美では無く、父親としての恩返しをしたいのじゃ」
「では自分の店をいただきたく思います
私は他国からやってきて、お金を稼ぐ手段がないのです
ですから店を開き、そこでお金を稼ごうと思ったしだいです」
「うむ、なるほどな、ではこの国で最もいい物件を提供してやろう」
と言うことで王都の最良物件を頂くことになった。
「あの、お父様、わたくしもその店で働いてみたいですわ」
自分のことを助けてくれた救世主。まるで女神に見えていたのだろう。マレイナはエリナのことに興味津々だ。
「いやしかしな」
「いけません、姫様ともあろうものが平民相手に商売など…」
姫様の発言に、王様や、宰相様までもが否定した。
「お願いしますわ、店で働いてみるのもいい人生経験になると思いますの」
「し、仕方ないな…そう言うことで良いか?エリナよ」
「はい!当然です!」
と言うことで王女がうちの店で働くことになったのであった。
王都では、物件争いが激しく、そうそういい物件に巡り会えることはないのであるが、今回は特別に王様からの贈り物として、お言葉に甘えて頂くことにした。
「と言うことでここが私の店です!」
「ここがわたくしたちのスイートホームですわね」
王女が何やらおかしなことをいっているが、エリナは深く考えなかった。
「内装は無いそうですが、なかなか綺麗で広い家ですね、さすが王が勧めるだけある」
エリナのギャグにマレイナは気づいていなかった。
こっちの世界ではマイナーなギャグなのだろうか。
「ではまず家具を置きましょうか!」
木造加工師を雇うのは面倒なので、自分で作ることにした。
この女神はどこまでめんどくさがり屋なのか。
「ところでマレイナ王女様」
「わたくしのことはマレイナとお呼びくださいまし!」
「じゃあマレイナちゃん!ちょっと目を瞑ってもらってもいい?」
「はい、構いませんけど」
そう言って目を瞑るマレイナ。
そしてエリナはその隙に作りだした。
鉄製の装備立てや、ミスリル製の装備、それと日用品置き。
「目を開けていいですよ」
そこにはさっきまでなかった物がたくさん出現していた。
明らかに常人に出来る技ではない。
「まぁいつのまにこんな棚が!それに装備品まで!あなた様はやはり女神なのですね?」
もう手遅れである。
もう自重するのは諦めたような顔のエリナ
「ふっふっふ、気づいてしまいましたか…
そう!この私こそがこの世界の創造主にして女神エリナなのである!」
もう隠すことすべてをやめてしまったエリナ。
めんどくさくなったのである。
この後この話が王の耳に入り、国中で大騒ぎになること間違いなしだが、仕方がない
いや、仕方はなく無いがもう隠すのは疲れたのである。
これが1番気持ち的に楽な道だとエリナは思った。
「まぁこの世界に君臨され奉られました女神様でしたのね!どうかこの国を守護し守っていただきたく思いますわ!」
こうなるに決まっていた。
王女様がただの平民の少女にオーバーな敬語を使っている意味がわからない状況に。
いや、オーバーと言っても女神相手なのだから当然の反応なのだが。
こうしてこの長い1日は終わりを迎えるのであった。