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袋メン。

作者: たのし

お腹が空いた。確かこの前買って置いた袋麺があったはずだ。私はキッチンの乾麺とかお菓子とかお菓子とか入ってある引き出しから、『袋メン』を取り出すと、夜食には少し重いかな?でも、夜中に食べるラーメンは背徳感が心地よいから良き良きっと鍋に水を入れ火をつけた。


 袋メン九州醬油味の袋を開け袋の中の様子を伺う。背脂コッテリなんて書いてあるからきっと濃ゆいスープが待っているに違いない。しかし、除くとそこには麺は入っておらず、袋の中からじっと上を向きこちらの様子を伺う男が入っている。


 私は咄嗟に袋を閉じ沸騰している鍋の火を止める。もう一度袋の中身を確認すると、「やぁ」っと手を上げ私に挨拶をした。


 その男は身長は人差し指くらいで中肉中背。年齢は私と変わらないくらいだろうか?髪はブロンドで、皺のない白いタキシードを着ている。麺は入っていないが粉と油らしい袋は入っている。


「貴女よ、名は?」


 その男は上を向き私と目を合わせると唐突に話し、質問をしてきた。


「智香……貴方は?何者よ」


「ふん。私か?私はカタリーフランソワーズ14世であるが、この名を聞いたことはないか?」


「無いわ。私からしたら袋メンだし……」


「何?私の名を聞いた事がない?フランソワーズ家を聞いた事がないだと?まぁ良い。世には世間を知らん者もまだまだおると言うことか…失礼。もっと貴女に周知できるよう勤めを全うするようにいたそう。して…」


 その中肉中背の自称ヨーロピアン王子は袋をガサガサしながら「ここから出してはくれぬか?」っと言ってきたので、私はキッチン台に置くとガサガサと四つん這いになったヨーロピアン王子が袋の中から現れた。


 よく見ると肌はクラッカーの様に白く、目はブルーハワイに濃いブルーが複雑に混じったキャンディの様にまんまるだった。体系を除けばくっきりとした顔立ちでイケてる部類に入る。


「ところで、貴女よ。ずっと体を縮こませていた。湯に浸かりたい。準備せよ」


「嫌よ。いきなり図々しすぎるわ」


「ふん。そこに火を付ければよかろう。ケチくさい」


「分かったよ。王子はそんなに我儘なんですか?」


「我儘ではない。私の城では優秀な召使がいつでも入れる様にしてある。貴女こそ、それすらできない出来損ないではないのか?」


 我儘に反論するのも疲れ、私は袋麺用に沸かそうとしていた鍋の火を思いっきり強火にし、グツグツと煮えたぎるまで待った。


「どうせ袋麺だし、食べてやろうかしら」


 鍋そこからプカプカと浮いてくる気泡を見ながらそんな事を考えていると「ほれ、幕で囲まないから」っとタキシードのボタンを外すヨーロピアン王子がまたネチネチと指図をし始めた。私はその時よからぬ事を考えた。タオルでグツグツに沸いたお湯を囲ってしまえばヨーロピアン王子には見えない。そして私が摘んでドボンすれば……。


「分かったわ。ならほら、そこに仕切りを作るからタキシードを脱いで。それと、あなたに丁度のサイズの素敵なパジャマと体を隠すものも用意するわ」


「ふん。なかなか気がきく貴女ではないか。先程は取り乱した。深く陳謝するぞ」


「いいわよ。あなたも疲れただろうから……ささ、仕切りとそれとパジャマと体を隠すタオルね」


 私はシルバニアファミリーの男の子が着ているパジャマとカーテンを取りキッチンの一角に見繕った仕切りの中にそれを入れると、ヨーロピアン王子を案内した。


「ふむふむ。白の床が大理石の様で悪くない。ちと待っておれ」


 ヨーロピアン王子が服が脱いでいる間に私は引き出しから菜箸を取り出すと、気づかれない様に後ろ手に隠した。


「よかろう。どれ……」っと言った瞬間私は後ろ手に隠した菜箸でヨーロピアン王子を持ち上げるとグツグツグラグラ沸いた鍋の中に落とした。


 ヨーロピアン王子はぐぎゃーっと言うと煮えたぎった鍋の中にポトンっと落ち何も話さなくなった。私はヨーロピアン王子の入った鍋の上に蓋をすると、袋麺の中から付属の粉と香味オイルを取り出し、暫し待つことにした。


 そして、3分が経過した頃だろう。鍋の蓋を開けると、何とグラグラグツグツ沸いているお湯の中で気持ちよさそうにくつろいでいるではないか。


「貴女。良いアトラクションだったぞ。それにプライベートを確保するために天窓を閉めるとはこれまた良き配慮。褒めてやるぞ」


 私は何故……っと膝から崩れ落ちると再度立ち上がり「湯加減はどうですか?」っと尋ねた。


「良き」っと返事が返って来て「して……私が入ってきた中に二つ袋が入っておったろう。その内の銀色の方を入れてはくれないか?持たせてくれた入浴剤だからな。それが無いと風呂に入った気がせんので」


 私は右手に持っていた銀色の袋を開けるとローズのいい香りが鼻を刺激した。


「これ、ラーメンのスープじゃないの?」


「ラーメンとはなんだ?いや……どうでも良い。早く入れんか」


 私はローズの粉末を鍋に入れると先ほどより良い香りがキッチン中に広がった。


「それで、もう一つの袋を小さな器に取っておれ」


 いつの間にか言われるがままの私はシルバニアファミリー専用の食器に袋の中身を開けて入れると、女の直感で分かる高級なオイルの匂いがした。


「あなたこれ、どこのオイルよ」っと尋ねると私も聞いた事がある、高級ブランドの名前を挙げた。


そして、ヨーロピアン王子はグラグラグツグツの鍋から「出せ」っと一言言うと私は菜箸で取り出し、先ほどの仕切りの中に移した。


そして、一時するとヨーロピアン王子はシルバニアファミリーの男の子のパジャマを着て出て来た。


「ふん。良い風呂だ。湯加減も申し訳ない。お前、召使いからいきなり私の貴婦方になれるぞ。嫁になれ」っと、堂々と言って来た。勿論お断りである。


「ふん。勿体無い。なら私は今日からここに住む。召使いくらいにはしてやるから喜べ」


「いや。私的には嫁にも召使にもならないわ。早くこの家から出てってちょうだい」


「ふん。我儘な娘だ」


それから、ヨーロピアン王子はキッチンから降るとシルバニアファミリーのお城のベットに寝転がり、眠りについた。


そして、図々しく居座ったヨーロピアン王子は今日、女の子のシルバニアファミリーに「ふん。貴女、私の貴婦方になれ」っといい、無視されていた。


おしまい。


-tano-

読んで頂きありがとうございます。

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