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第五話『魔術至上国家』

前回、第五話を誤投稿致しました。


 

 臀部に伝わるガサツな振動、魔界とは違う外の世界にルスはため息を吐く。


「はぁ……」

「……以上が彼女達の基礎情報になります。続けて——」


 揺れる馬車の中、魔王軍・第一軍団。

 総大将ユーリ・ピュアーズが()()の情報を淡々と述べていた——


「——ルスさん。ちゃんとお聞きになられてますか?すぅううっ……はぁはぁ……はぁはぁ……」

「話しかけるな、僕の髪を匂うな。お前の声は()()()()()()。クソ変態野郎が」


 現在のルスの立場からも、元中佐と言う立場からも絶対的な上司である総大将ユーリに不遜な態度をとってしまう少年。

 即刻、打ち首を命じられてもなんら不思議ではないだろう。

 だか、そんな事にはならない。

 何故ならば、


「はぁっはぁっあぁ……貴方がヴォロスに連れられ私の前に現れた日を鮮明に思い出します……あれはまるで——天から()()が降臨された様な……はぁっはぁっ思い出しただけでも身が悶えてしまいますっ!!」


 ユーリ・ピュアーズがルス・ゲオンを同じ下界の生物として扱っていないと言う点にある。


「きもい、黙れ、任務内容と関係のない話をするな——」

「あぁ……お怒りになったルスさんも素敵で——わぁお……」


 警告を無視したユーリの眼前が爆発し、垂らされた前髪が少し焼かれる。


「では、気を取り直しまして。今回の任務でルスさんに遂行していただく内容は——」


 一つ、目標国の国力規模の詳細。

 二つ、目標国の正しい国家思想。

 三つ、目標国の腐敗進行度。

 四つ、目標国の魔族に対する敵意。


「以上が今回の主な任務内容となります。(のち)に細かな指示が命じられる可能性はありますが、基本的にはルスさんの独断で行動してもらって構いません。ここまでで、何か気になる点はございますか?」


 任務内容に関しては、何も疑問点はない……

 しかし……一つだけ気になっていた事がある——


「——フェル様は何故、僕にこの任務を?」

「それは……」


 やはりか。

 珍しく、総大将ユーリが難しい表情を見せる。

 ルスはその表情で何かを察する。


「理解した……これ以上、下手な詮索はしない。悪かったな、黙って死んでくれ」

「同情と辛辣っ!!これは耐えられないっ!!くはっ!!」


 口から血を吐き痙攣している変態に、軽蔑の眼差しを向けたルスは、再び外の世界にため息をつくのだった。


 ■■■


「本当に良かったの?」


 場所は魔王城——

 この城の主人と一人の男が向かい合う。


「お?何の話じゃ?」


 魔王フェルとその部下、ヴォロス・ゲオン。


「あの子を突然人間界に放り出すなんて……」

「なんじゃ、今さらになって。お主も反対はしなかったではないか?」

「それに関して、僕は否定も肯定もしないよ。他ならないあの子の親である、キミが決めた事だから」


 フェルは食事をする手を置いて話を続ける。


「でも、僕が気がかりにしてるのはそこじゃないよ?キミはつい昨日まで軍を退役したいと願っていた。それが今日になって第四軍からルスくんの席を空けるためにと、自分の望む退役時期を引き換えにしている。それに加えてキミの軍のユドル伍長が全治一ヶ月の怪我を負ったと、ルスくんを傷つける様な虚言まで僕に吐かせた——」

「…………」


 ヴォロスはフェルを遠く見つめ、黙々と咀嚼している。


「ヴォロス……一体、何が目的なんだい?」


 愛らしい表情からは想像し難い、美しく鋭い目つきと禍々しい何かがヴォロスを捉える。

 ——咀嚼した流動物(しょくじ)が喉を通り過ぎる。


「安心せい。お主が心配する様なことは起こらん。ただの親心(おやごころ)じゃよ」


 ニカっと笑顔を見せる友にフェルは気を張る事をやめる。

 これ以上詰め寄ろうが彼は何も教えてくれない。


「そっか。なら、オッケー」


 ならば、その意味が理解できるまで僕はキミ達を見守るよ——


 ■■■


「ルスさん、窓の外を見てください」

「……二百三十ろぉおん?」


 馬車内のシミを数えるルスにユーリは窓の外を見ることを促す。

 そうしてルスの視界に入った光景は彼から言葉を奪う。


「……」


 小高い丘から見渡される目的地の全貌……


 首都を囲む巨大な防壁。

 その上部各所には、迎撃用と思われる魔術武器が多数備えられている。

 そして、物々(ものもの)しい防壁内部には、防壁に沿って整えられた区画があり、多数の建物が規則正しく建ち並んでいる。

 俺が暮らしていた魔王領・テリオの4倍程の面積をよくもここまで丁寧に……都市を外から眺めるだけで国財の高さが窺えてしまう。


 しかし、そんな目を疑うほどに整頓された街並みの中で、それが霞んでしまう様に際立っているモノがある。

 それは、中心に聳え立つ巨大な()

 おそらくは()()()()()()()()だろう。


 堂々たる王城が目をとめるのは当然だが、さらに際立たせる理由がソレにはある。

 アレは……


「……"障壁魔術"か?」

「ふふふっ。ご名答でございます」


 100メートルを超えているであろう、王城の頂を起点に発動されている"障壁魔術"——


「あの広範囲を——」


 驚くべきは、その術式効果範囲の広さ。

 ()()()()をドーム状に覆う障壁魔術……


「は?」


 どうなっている……?

 術式陣の繋ぎ目が感じ取れない……つまりは、


「王都全体を"一つの魔術"で?」


 一般的な魔王軍・魔術部、一等兵の障壁魔術ならば100平方メートルほどの範囲を覆う事がやっと。

 ユドルや俺でさえその数十倍ほどが限界だ……

 それを王都全体に……?


「それは、もはや——」

「——"魔術の域を超越"していますね。ふふふっ」


 魔術の先にあるもの。

 俺の中でそれは()()だと勝手に解釈されていた。

 しかし、いま俺が目の前にしている()()を超越した何かは紛れもない()()である。

 そう、それは俺の知り得ない()()


 つまり、それは"未知なる脅威"である……


「魔法に匹敵する魔術を生み出した国家——本日より貴方が暮らす事になる目標国……その名を」


 ——焦る脈と高鳴る鼓動。


 『魔術至上国家 ——エーデル王国—— 』



第四話に引き続き、第五話をご拝読いただきまして。

本当にありがとうございます!!

これからもよろしくお願い致します。


少しでも面白いと感じていただけましたら

感想、いいね、ブクマ、評価もお願いします!!

凄くモチベが上がりますっ!!

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