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革命の狼煙



「……」



 先程の一件を報告するために役所へと戻った僕を待っていたのは、不機嫌を擬人化したような顔で眉間にしわを寄せているカイさんだった。今にも爆発寸前といった感じで怒りを貯めている彼女と話すのはすこぶる嫌なので、正直すぐにでも帰りたい。



「……軍から一報は受けていたが、ラウドが闇ギルドを作ったというのは本当かね?」



「は、はい……『破滅龍(カタスドラッヘ)』という名前の闇ギルドを立ち上げたと、そう言っていました」



「……」



「……」



 沈黙が重い……!


 市長室の中はかつてない緊張感に包まれ、掌にはじんわりと汗がにじんできた。これ以上この場にいるのは精神衛生上よろしくない。



「あ、あの、カイさん……報告書をまとめたいので、一旦退出しても……」



「ふざけるなよ、あのクソオヤジが‼」



 カイさんは怒号と共に拳を振り下ろし――とても立派で重厚な造りの執務机が、粉々に砕け散った。

 破片が宙を舞い、僕の右頬を掠めていく。



「三大ギルドのマスターが闇ギルドを作っただと? 馬鹿も休み休みにしろ! これだからギルドの連中は信用ならんのだ‼」



 頭の血管が何本かぶち切れたんじゃないかと思わせる剣幕で、彼女は怒りをあらわにする。


 前々から正規ギルドに関して不満を持っていたカイさんにしてみれば、今回の出来事はまさに不安が的中したといった感じなのだろうか……それにしても、ここまで感情を剝き出しにするなんて、相当頭にきているようである。


 是非とばっちりを受ける前にお暇したい。



「こうなれば絶対に容赦はしない、徹底的に叩き潰す‼ 『破滅龍』の掃討を最重要案件とし、必ずあのクソオヤジの首をはね飛ばす‼」



 発言が物騒すぎると突っ込みたかったが、とてもじゃないけど今のカイさんには話しかけられない。次に粉々になるのは僕かもしれないのだ。


 そんなドン引きの視線に気づいたのか、彼女は固く握っていた拳の力を緩める。



「……すまない、熱くなってしまった。みっともないところを見せてしまったな」



 恥ずかしそうに頬を掻く姿は奥ゆかしいが、しかし数秒前までの破壊神が如き映像が頭から離れない。


 余計なことを言わないように気を付けないと。



「えっと……僕に何かできることってありますか? 一応、浅からずこの件に関わってしまったので、できることがあれば協力させてください」



「ありがとう、クロスくん。恐らく君たち特別公務パーティーの力を借りることになるだろうから、その時はよろしく頼むよ」



 僕程度が役に立てるとは到底思えないが、僕が動けばベスも動く……初めから他力本願過ぎて格好つかないが、あいつに動いてもらえれば事態は好転するはずだ。


 ベスの存在は、謂わばウルトラⅭである……先刻ラウドさんを退けたのもあいつの実力あってのことだし、味方としてあれ程頼もしい奴もいない。



「ラウドたち『破滅龍』を放置すれば、それだけ国中に衝撃が広まってしまう。各地のギルドや冒険者が、奴に追随して闇ギルドを作りはじめるのは想像に難くない……そうなれば、待っているのは無法地帯だ。辛うじて保たれている国とギルドの力関係が崩れ、エール王国は崩壊するかもしれん」



「……まさに革命ですね」



 今のシナリオは考え得る中で一番最悪なものであるにしても、それに近しい状況が起きることはほぼ確実だ。冒険者に対して圧倒的な影響力を持つラウドさんが無法な闇ギルドで暴れているとなれば、それに続く荒くれ者が大量に出現することになるだろう。



「私たちは一刻も早くクソオヤジ共を潰す必要がある。でなければ、あいつの力は毒のようにこの国とギルドを蝕んでいく……重ねてお願いするが、是非力を貸してほしい」



「もちろんで――」




「断る」




 僕の快諾の返事に、幼い少女の声が被さる。


 途端、カイさんの眼力が鋭くなった。


 ……えっと、僕、帰っていいですか?



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