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打ち上げ酒場



「かんぱーい‼」



 未踏ダンジョンの探索を終えた僕らはエジルさんの運転でソリアの中心地へと戻り、酒場へと繰り出していた。以前仕事をした時もそうだったが、このスキンヘッドは何かにつけ酒を飲みたがる迷惑野郎なのである。


 ……少々口が悪くなってしまったけれど、でも朝まで付き合わされるこっちの身にもなってほしい。あの時はジンダイさんという屈強に屈強を重ねた威圧感の塊みたいな人もいたし、途中で帰るなんて絶対に無理だったのだ。



「いやー、やっぱり俺たちいいコンビかもしれねえなぁ、おい! クロスの炎と俺の水龍魔法、二つ合わせれば敵なしだぜ!」



「その二つを合わせたら、僕の炎消えますけどね……」



「んなことはどうでもいいんだよ! おら、乾杯すんぞ!」



「十秒前にしたばっかでしょう……」



 文句を言いつつ、一応グラスを持ち上げる。


 あまり乗り気ではないが、これからは飲みの付き合いも大事にしていこうと決めたのだ。ベスやニニに友達がいないと憐れまれてしまうのは、こうした場を楽しもうとしない僕にも責任があるのだから。


 軽く一口分グラスを傾けた僕の後頭部を、ニニが引っぱたく。



「なーんですかその拙い飲みっぷりはぁ! 漢ならがぶっといってくださいよーがぶっとー!」



「お前は酒飲んでないのになんで酔っぱらってるんだよ」



「そいつは鼻が良すぎて匂いで酔っぱらっちまうらしいぜ。ギルドの中でも、酒くせーっつってよく酔っぱらってやがった」



「羨ましい人はとことん羨ましい体質ですね、それ」



 ちなみに、全く必要ないと思いつつ、念には念を入れて注釈しておくと、この国には飲酒に際する年齢規制はない。


 だから十八歳である僕がお酒を飲んでいても、何も問題はないのだ。


 僕たちはクリーンにやっています。



「クリーンって言うかグレーって感じですけどねー! やりたい放題やり過ぎたコンテンツが規制を受けることになっても、文句は言えませんよー!」



「その発言の方がよっぽどグレーだろうが! 酔っぱらったら何を言ってもいいわけじゃないぞ!」



「って言うか、見た目十歳児の裸が出てきた時点で普通にコンプラ的にアウトですけどねー!」



「それ以上口を開いたらお前の存在をアウトにするぞ、ニニ!」



「それもまたいいんじゃないでしょうか? ベスさんみたいな中身千五百歳の似非ロリエフルより、見た目と実年齢がイコールの私の裸の方が、まだ逃げ道がある気がしますね!」



「ねえよ! お前が脱ぎ出したら、そこでこの物語は終わりだ!」



 楽しい飲み会だ。


 不覚にも大声ではしゃいでしまっているが、僕は決してお酒に強くない……あー、頭がガンガンしてきた。


 そんな時。


 僕の頭痛を加速させるような眩い光が、机に立てかけていた杖からほとばしる。



「お主ら、酒を飲むなら儂も呼ばんかい!」



 そんな駄目人間代表みたいなことを言いながら登場したのは、他でもない。


 我らがロリエエルフ、エリザベス様だった。



「……っておい! 裸じゃねえか!」



「何を狼狽えておる、事前に言っておいたじゃろうが。早くローブを寄越さんかい」



「出てくるなら先に一声かけてくれ! 心の準備ができないだろうが!」



「安心せい。杖が発した光が上手いこと拡散して、儂の裸体は隠されておる」



「物理学はそんな都合よくはたらかない! いいから早くそのローブを着てくれ!」



「忙しない奴じゃのぉ……まあよい、とりあえず酒じゃ!」



 やっと服を着たかと思えば、ベスは横暴な物言いで酒を要求する。そんな彼女を見て、口をパクパクさせている人物が一人。


 エジルさんだった。



「べ、ベスの姉御⁉ いつからここにいたんですかい⁉」



「あん? ああ、ジンダイのとこのつるっぱげか」



「エジルです! こりゃ、姉御がいるにもかかわらずお酌もしねえですみませんでした! 今取ってきます!」



 彼はそう言い残し、危なっかしい走り方で酒場のカウンターへと向かっていった。



「……お主、あやつに儂のことを話しておらんかったのか? 杖の中に封印されとると」



「いや、確か車の中で話したはずなんだけど……」



「あの時のクロスさん、乗り物酔いでまともに会話できてませんでしたからねー! エジルさんも話半分に聞いてましたよー!」



「それがわかってたならお前が補足してくれればよかっただろ」



「私は私で、魔動四輪の匂いが苦手で参ってたんですよー!」



「おい、お主。なんでニニはこんなに上機嫌なのじゃ。グラスに入っとるの酒じゃないじゃろ」



「なぜかは知らないが、匂いで酔うらしい」



「なんとまあ、羨まし体質じゃな」



 本当に羨ましそうな眼差しでニニを眺めるベスだった……もしかしたら、昔旅していたというニニの先祖のことを思っているのかもしれない。



「ベスの姉御! 酒持ってきましたぜ!」



「うむ、ご苦労。褒美に乾杯してやるから、一気に飲め」



「わかりやした!」



 強者だと慕う相手の言うことは絶対なのだろう、めちゃくちゃな要求にも関わらず、エジルさんは右手に持った酒を一気に飲み干した。


 良い子はマネしちゃ駄目だからね!



「よっ、さすがギルド一のつるっぱげ! 禿の中の禿、キングオブ禿!」



 ニニがエジルさんの頭を撫で回す……いよいよぐだぐだになってきたな、おい。


 そんな二人を尻目に、ベスは僕に向き直る。



「お主よ、少し外に出て話さんか」



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