楽しいお買い物 001
「マージでこの杖イカしてんのぉ! よし、これに決めたぞ!」
ベスが自分を封印するという衝撃的な発言をした翌日……僕とベスは、とある品を購入するためにソリアの商業地を練り歩いていた。
とある品――彼女を封印するための杖である。
「そんな厨二病が喜び勇んで飛びつくようなデザインの杖、僕は持ちたくないからな」
「ちゅうにびょう……? 今は変な病気が流行っとるようじゃの……それよりもどーじゃこの棘! かっこよ!」
「精神年齢が見た目に引っ張られてるじゃねえか」
かっこよ! じゃないんだよ。
こっちはまだ、昨日の話を消化しきれていないってのに。
「……なあ、ベス。普通に日常生活を送っているだけでも魔力を消費してしまうから、それを防ぐために自分を杖に封印するんだよな?」
「それもある。まあわかりやすく封印と言ったが、要は休憩状態じゃ」
「それじゃあ、魔力の吸収の方はどうするんだよ。お前が杖の中にいちゃ、消費は抑えられても吸収はできないんじゃないのか?」
「そこは安心しろ……ほれ、儂とお主が初めて話した時のことを思い出してみるがよい」
「初めて話した時……?」
彼女との初会話は、あのダンジョン最深部でのこと……その時は、何て言っていたっけ?
……そうだ。
「杖に魔力を込めろ……」
「しかり。そして儂はあの時、お主から渡された魔力で腹が少しばかり満たされたんじゃ。魔石を食っても腹が膨れんのに、お主の微々たる魔力が空腹の足しになった……そこに鍵があると、そう踏んだのじゃ」
「……それはつまり、僕の魔力がすごいってことか? 腹持ちの良い魔力みたいな」
「なわけあるかい。それじゃったらお主から直接吸い取っとるわ」
そりゃそうだ。
僕が原因でないとすれば……杖に封印されていたという事実の方が重要なのだろう。
「理屈はわからんが、恐らく肉体を介さず魔力を取り込むことで、効率よく吸収できるのじゃろう……身体の異常は、身体がなければ正常になる」
「まあ、そう考えることもできるのか?」
「そう考えてみるしか手はない、と言った感じじゃの。このままでは、儂はただお主らの隣を歩く小さくてかわいいマスコットに成り下がってしまう」
「それは今でも充分そんな感じだけどな」
ベスの言い分はわかった。僕も一晩経って、冷静に話を聞けるようになったらしい。
彼女が死の危険から遠ざかり、尚且つ今までみたいに魔法を使えるようになるというのなら……杖に封印する方法を試してみる価値はある。
「そう深刻そうに捉えるでない。さっきも言ったが、封印とはあくまでわかりやすさ優先の物言いじゃ……いつでも好きな時、好きなタイミングで杖から出ることができるようにするわ」
「え、そうなの?」
「無論じゃ。でなければ、お主とニニがピンチになった時にかっこよく登場できんじゃろうが」
「じゃあ本当に、休憩状態って言い方がしっくりくるな……それで、魔力の吸収はどこからするんだ? まさか、僕が常に魔力を送り続けるのか?」
「お主のちっぽけな魔力など当てにしとらん」
ズバッと言い切ったベスは、手に取った杖を僕に見せつけてくる。
「この杖は魔石を嵌めることができる。本来、魔石の魔力を利用して魔法を強化するための機構じゃが……それを儂が利用する」
「……嵌めた魔石から、魔力を吸収するってことか」
「これが成功すれば、消費を最大限に抑えながら魔力を吸収できる……我ながらマジイケてる考えじゃろ」
「その言葉遣いはマジイケてないけどな」
千五百年物のギャルは時代についていけてないらしい。
まあ、とにかく。
ベスの考えの全容を、僕はようやく理解することができた。
やっぱり昨日の僕は頭が沸いていたらしい……自分の判断ミスでニニを危険に晒し、直後ベスまで倒れてしまったのだから、冷静でいろという方が無理な話だ。
「というわけで、このイカした杖を買うぞ」
「それとこれとは話が別だ」




