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ニニ・ココ 003



 僕とニニが見据える先――木々の間から姿を現したのは、A級モンスター。

 ファントムゴーレムだった。



「――っ」



 その巨体を視認した瞬間、緊張が走る。


 さっきまで仲睦まじく雑談をしていたこのダンジョンがA級相当であると知り、背中に冷たい汗が伝った。



「【シールド】!」



 ニニが防御魔法を展開する。盾から青白い魔力が広がり、僕らとモンスターとの間に壁を作り出した。


 直後。


 ゴーレムの右腕が振り上げられ――雷が放たれる。



「くぅ!」



 通常のゴーレム種とは違い、ファントムゴーレムは魔法攻撃を得意としている……ニニの展開した防御魔法は敵の魔法を防ぐもののはずだが、あまりの衝撃に壁がひび割れ始めた。



「【シールド】‼」



 ニニは更に魔法を重ね掛けすることで、雷を抑えようとする。だがその驚異的な威力に押され、苦しい表情を浮かべていた。


 どうする……僕が隙を突いて攻撃を仕掛けるか? でも、僕の魔法じゃA級ゴーレムの気を引くことすらできないかもしれない。


 僕とニニの二人だけじゃ、A級モンスター一体にだって敵いっこないのだ……くそ。



「ベス! 助けてくれ!」



 ニニが生んでくれた猶予の間に僕が取るべき行動――それはベスを呼ぶことだった。


 彼女は空中から僕たちを見ていると言っていたが、それにしては登場が遅い。もしかしたらどこかで休憩していて、A級モンスターの出現に気づいていないのかもしれない。



「【火炎斬り】!」



 僕は上空に向け、目印代わりの炎を撃ち出す……これでベスも気づいてくれるはずだ。


 後は、彼女が到着するまでの時間を稼ぐ!



「ニニ! 僕に【プロテス】を掛けてくれ!」



「っ、何をするつもりですか、クロスさん!」



「僕が囮になってあいつの注意を引く! ニニはその間に、防御魔法を掛け直しておいてくれ!」



 このままこの場に留まっていてはジリ貧だ。


 僕が前に出て敵の攻撃を引き受け、その間に彼女の防御魔法を万全な状態にしてもらう……リスクはあるが、何もしないよりはマシだ。



「そんな……危険過ぎます! 相手はA級です、私の【プロテス】じゃ気休めにもなりません!」



「仲間を守るのがリーダーの務めなんだ。大丈夫、僕は死なない」



「……っ」



 ニニの防御魔法は今にも破られてしまいそうだ、グズグズしてはいられない。


 僕は【プロテス】によって全身に魔力の膜を張ってもらい、【レイズ】で身体機能を高める。



「クロスさん、ご武運を」



「ああ、任せとけ」



 言って、僕は防御魔法の範囲外へと駆け出した。


 そのままファントムゴーレムの側面へと回り込み――思いっきり剣を振るう。



「こっちだ木偶の坊! 【火炎斬り】!」



 果たして、僕の魔法はゴーレムの頭部に直撃し。


 その巨体を、真横に()()()()()



「――!」



 自分が一番驚いている……だが確かに、僕の攻撃はあいつに効いているみたいだ。


 ベスと一緒にダンジョンを攻略する中で、魔法の威力が上がっていたのか……? 実感はなかったけれど、こうしてA級モンスターを横転させるだけの力は身についていたらしい。


 これなら、充分奴の気を引くことができる……!



「グオオオオオオオオオオオオッ!」



 起き上がったファントムゴーレムは唸り声をあげ、標的をニニから僕へと移す。


 振り上げた拳に魔力が集まり、雷となって放たれた。



「くっ!」



 僕は大きく膝を曲げて跳躍し、その攻撃を躱す。【レイズ】によって強化された僕の肉体は、軽業師も顔負けの身体能力を手に入れていた。



「食らえ、【火炎斬り】!」



 空中で身を翻しながら、思いっきり剣を振り回すと同時に魔法を発動する。

 炎の連撃がファントムゴーレムの頭上から降り注ぎ、その巨体にダメージを与える。


 ……これ、もしかしたら討伐できるんじゃないか?


 未だにベスが姿を見せないのは、僕たちがA級モンスターを倒せると踏んでいるからなんじゃ――




「下です! クロスさん!」




 ニニの叫び声に反応した時には、遅かった。


 宙にいる僕の真下――ファントムゴーレムが雷を放った地面に、魔法陣が描かれている。


 あれは……時限式の魔法!



「ぐあああああああああああああああ‼」



 魔法陣から撃ち出された雷に全身を貫かれ、力なく地面に落下した。


 ニニの【プロテス】と自分で掛けた【レイズ】のお陰で即死は免れたが……くそ、体が痺れて指先すら動かせない。


 無様に地べたに這いつくばる僕の元へ、ゴーレムがゆっくりと近づいてくる。


 そして、その無骨な腕を振り上げた。


 どうやら――僕はまたしても、死の危機に直面したらしい。



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