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ニニ・ココ 002



「クロスさんが使える魔法って、炎属性の攻撃魔法以外は何があるんでしたっけ?」



 魔法陣を目指して歩きながら、僕とニニは互いの魔法について話し合っていた。資料を通して大まかなことは知っているが、細かいところを把握するに越したことはない。



「他に使えるのは、【レイズ】っていう身体強化魔法だけだよ。僕は新しい魔法を習得する才能がないらしくてな、今は使える魔法を鍛えてる最中なんだ」



「なるほど。何かを極めるというのは、男らしくて素敵ですね」



「……ニニが使うのは、【シールド】と【シルト】、それに【プロテス】だったっけ?」



「はい。【シールド】は魔法攻撃を、【シルト】は物理攻撃を防げます。【プロテス】はみなさんの体の周りに魔法防御の膜を張ることで、多少の攻撃なら無傷に抑えることができます」



「……なんか、すごいな」



 盾使い……初めて一緒にパーティーを組むけれど、めちゃめちゃ頼もしいんじゃないか? 結局僕らは命あっての物種だ、何に優先しても死なないことが重要なのである。



「私の一族は、代々盾を用いた魔法を得意としていたんです。ですから、私にもその才能があったというところでしょうか」



「それは素直に羨ましいな……僕なんか、剣を使う魔法は一つしか使えないんだぜ?」



「それでも何もないよりはいいでしょう。クロスさんのご両親は、冒険者をしてらしたんですか?」



「あー……」



 一瞬言葉に詰まってしまったが……しかし隠すことでもないか。



「僕、赤ん坊の頃に捨てられたらしくてさ、家族のことを知らないんだ」



「……そう、だったんですね。すみません」



「いや、全然気にしてないから大丈夫だよ。幸いキエナ村の人たちに拾われて、何とか生きてこられたし」



「……いえ、その……本当にすみませんでした……」



 ニニはとても申し訳なさそうに猫耳を垂らす。僕自身が気に留めていないので、そこまでしゅんとなられると逆に困ってしまうのだけれど……。



「ま、まあ、この話は終わりにしようか……えっと、魔法の話だったっけ?」



「……」



 あれ、まだ落ち込んでる?


 本当に気にしていないんだけどな……仕方ない、ここは年上のお兄さんとして、空気を和ませるとしよう。



「ところでニニ。スカートを捲っては貰えないだろうか?」



 殴られた。


 左頬に、割と重めの右ストレートをお見舞いされた。



「い、いきなり何を言い出すんですかあなたは! やっぱりただの変態じゃないですか!」



「いや、落ち着いてくれ。この質問には深いわけがあるんだ」



「スカートを捲れという言葉のどこに深い意味があるんですか! 自分のセクハラ行為を正当化しようとしないでください!」



「それがな、深い意味はあるんだよ」



 そう。


 彼女の後姿を見た時から、ずっと疑問に思っていたこと……解決しなければならない、究極の命題がな。



「端的に言おう。そのスカートの裾から覗く尻尾は、パンツを通っているのかいないのか……そこに漢のロマンがある!」



「そんなところに漢のロマンはありません!」



「いいやあるね! 尻尾用の穴が開いているパンツを履いているのか! それとも普通のパンツの太腿や腰部分から尻尾を出しているのか! はたまた履いていないのか! はっきりしてもらおう!」



「どうしてそんなにテンションが高いんですか……パンツくらい履いてますよ、当然でしょう」



「履いてるんだ!」



 履いてるんだ!

 俄然興味が沸いてきたぞ!



「では答えてもらおう。そのパンツには尻尾を通すための穴が開いているのか、いないのかをな!」



「そんな情けないことを格好つけて言わないでください!」



「僕はそれを知るまで死ねない!」



「積年のわだかまりを解決するまで戦い続ける主人公みたいに言わないでください! 何も解決しません! てい!」



 再び殴られた。

 今度はボディに重たい一発……くぅ、効いたぜ。



「僕は諦めないぞ……お前の秘密を暴くまで、徹底的に追い詰めてやる……」



「いやもうほんとに怖いんですけど。目が血走ってるじゃないですか……やめてください、クロスさん。このままだと、ここであなたを始末することになってしまいます」



「さすがに、殺される程のことじゃないのでは?」



「いいえ。あなたはこの世の深淵を覗き込もうとしてしまいました……深淵を覗く時、深淵も又あなたを見ているんですよ」



「この場合、僕はパンツと目が合うことになるけどな」



 深淵の向こうには、どうやら桃源郷が待っていたらしい。

 やぶさかではない。



「そう、お尻の桃の形と桃源郷とを掛けた、素晴らしい発想なのだ」



「急に何を言ってるんですか。気持ち悪い」



 シンプルな罵倒が一番心にくることがわかったところで、おふざけは終わりにしよう。僕の思惑通り(?)、ニニも元気になったようだし。



「あ、そろそろ魔法陣が近づいてきたみたいですよ」



 ニニも悪ふざけに飽きたのだろう、周囲の匂いをクンクンと嗅いでいる。


 そんな彼女の動きが――止まった。



「クロスさん、右前方にモンスターの匂い……それもかなり強力な魔力です」



「……わかった。いけそうか、ニニ」



「愚問ですね。私はいつでも臨戦態勢ですよ」



 僕は剣を引き抜き。

 彼女は盾を構える。



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