新メンバー 003
「えっと……じゃあ面接を始めたいん、です、けど……」
改めて椅子に座り直した僕とベスとニニさんだったが……しかしとても面接といった雰囲気ではない。
ニニさんはより警戒を強めた目で僕を睨みつけているし、ベスは物珍しそうに猫耳を眺めている。
……と言うか、何で僕がこんなに怯えられなきゃならないんだ。
「どうじゃどうじゃ、お主。やはり猫耳はいいもんじゃろ、そそるじゃろ」
「やめろ。お前の特殊な性癖に僕を巻き込むな」
「何も恥じることはない。お主くらいの若さであれば、無生物に欲情しても仕方ないのじゃからな」
「人を性欲モンスターみたいに言ってんじゃねえ。そんな描写は今まで一度たりともなかっただろうが」
「そうか? 初めてお主の部屋を訪ねた時も、裸の儂を見て興奮しとったと記憶しとるが」
「お前の記憶がいよいよ当てにならなくなってきたようだな!」
そんなことは一切ない!
事実無根だ!
「……お取込み中なようでしたら、一旦出直しますけど」
僕とベスの馬鹿馬鹿しい言い合いを見て、ニニさんは腰を浮かそうとする。
「いやなに、いつものことじゃから気にするでない……儂の名前はエリザベス。ベスと呼ぶがいい」
退席しようとした彼女を、ベスが止める。
……にしても、最初からベスって愛称で呼ばせるのか。いつも気に入った奴にしかそう呼ばせないって言ってるのに、どういう風の吹き回しだ?
それだけ猫耳が好きということなのだろうか。
「……ベスさんも、探索係なんでしょうか」
「否。儂はお主が希望しておる特別公務メンバーというやつじゃ。こっちの冴えない顔をした男が、探索係でありパーティーのリーダーじゃ。一見頼りなさそうじゃが、儂が唯一信頼しておる人間じゃよ」
「……この人が、ですか」
ニニさんの警戒度が少し薄まった感じがする。うん、最初からそうやって褒めてくれてればよかったよね?
「じゃあ、改めて面接を始めたいんだけど……ニニさんは、どうして特別公務メンバーになりたいのかな?」
「……一カ月と少し前、私の所属するギルドが跡形もなく吹き飛ばされた事件がありました。その場に居合わせたメンバーによると、どうやら老人言葉を喋るエルフがジンダイさんと戦った結果、そうなったと言うんです」
「あー……」
そうだ、この子の所属しているギルド、「竜の闘魂」だった。であれば、僕たちの所業が耳に入っていても不思議はない。
「しばらくして、今度は未踏ダンジョン探索係という役人が暴れ回っているという話も聞くようになりました。そして、その中にエルフがいるらしいという噂も」
「ふむ、儂のことじゃな。表に姿を出さずとも噂になってしまうとは、罪な女じゃ」
「うるさい黙れ……それで、そのエルフのことが気になって、こうして応募したって感じなのかな?」
「……概ね、そんな感じです。エジルさんやジンダイさんを圧倒する力を持つエルフが探索係にいるのなら……是非一緒に仕事をしたいと、そう思いました」
うーん、なるほど……正直、わかるようなわからないような、そんな志望動機だった。
まあ、ピンとこないのは僕がそういう思考にならないからだろう……そういう、強い者と一緒にいたいという感覚。
思い返してみれば、他にも「竜の闘魂」から数人の応募者がいたし……案外メジャーな理由なのかもしれない。
「うむ。若いのに見る目のある女子じゃ。よし、採用!」
「ちょ、ちょっと待てってベス!」
「何を待てというんじゃ。こうして儂らと共に冒険をしたいと言っておるのだから、それで充分じゃろ」
「いやでも、どんな魔法を使えるかとか、実力を確かめてからじゃないと……」
「構わん。弱いなら儂が守る」
「……」
ベスはない胸をドンッと叩き、男の僕でも惚れてしまいそうなかっこいいセリフを吐いたのだった。




