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新メンバー 002



「ベス! どうしてこの子を選んだんだ!」



 大声が出た。


 市長室にいる間、カイさんとベスの話を黙って聞いていた所為で、音量の調節が上手くいかなかったらしい。



「な、なんじゃいきなり……儂、何か怒られるようなことでもしたか?」



「あ、いやごめん……ちょっと喉の使い方を忘れて」



「少し喋ってなかっただけで忘れるとか、普段どんだけ会話してないんじゃ。友達がおらんにも程があるじゃろ」



「なぜ僕の交友関係の薄弱さに話が逸れる」



「お主と知り合ってからしばらく経つが、儂以外の誰かとまともに話してるのを見たことないぞ。大丈夫? 相談のろうか?」



「普通の口調で心配するな。マジみたいじゃないか」



「いや、おおマジなんじゃって。お主、この街に友と呼べる存在はいるのか?」



「それは……いないけど……」



 でも、僕は元々友人を多く持ちたいタイプではないのだ。

 全然気にしてない(涙)。



「それを言うなら、お前だって友達いないだろうが」



「儂にはお主がいればそれで充分じゃ」



「えっと、その……」



「なに本気で照れておるんじゃ、たわけ……千五百年も生きれば、人付き合いの仕方も落ち着いてくる。多くの関係を持とうと意味がない、己の両手で支えられるだけの人数と付き合うのが、最善なのじゃと気づいたまでよ」



 妙に含蓄があるのは、やはり彼女の長い人生経験の裏打ちがあるからなのか。


 それとも、仲間に裏切られたことがあるからなのか。



「ま、これも丁度いい機会じゃと思ってパーティーメンバーを増やすのも悪くない。お主にもいい刺激になるじゃろ」



「……さいですか」



 ベスがいいと言うのなら、僕に止める気はない。


 ただ、数ある応募者の中からどうして()()()を選んだのかは、わからないままだけれど。


 僕は一枚の書類に目を落とす。

 そこには、ベスが興味を持った冒険者の素性が書かれていた。


 名前は、ニニ・ココ。


 その十五歳の少女は――人間ではない。


 獣人の女の子だった。





 昼過ぎ。


 うつらうつらと寝ぼけていた僕は、ノックの音で意識をはっきりさせる。


 この部屋――探索係の部署を訪ねてくる人はそう多くない。三人いるという先輩たちとは全くタイミングが合わず顔も見たことがないし、頻繁にここを訪れるのは執務から逃げてきたカイさんくらいだ。


 だが、あの人はノックなんて上品なことはしない。



「失礼します。ニニ・ココと申します」



 若い少女の声色……間違いない、先程まで目を通していた書類に書かれた人物だ。


 特別公務メンバーに応募してきた、獣人の少女。



「はい、どうぞ」



 快く招き入れたものの、しかしその後何をすればいいのか皆目見当もついていない。カイさんはとりあえず面接っぽいことをすればいいと言っていたけれど……ええい、当たって砕けろ。


 僕はそれっぽい雰囲気を出すために、急いで机の上を片付けて椅子にふんぞり返る(完全にカイさんの影響を受けてしまった)。


 直後、ゆっくりと扉が開いた。



「初めまして。『竜の闘魂(ドラゴンガッツ)』ソリア支部所属、ニニ・ココと申します。役職は『盾使い』です。今日はよろしくお願いします」



 はきはきと喋る彼女の頭部に――猫耳。


 桃色の頭髪から、にょきっと猫耳が突き出している。


 顔はまだ幼く身長もさほど高くないが、服の上からでもわかる体のしなやかさや手足の長さが、独特の雰囲気を醸し出していた。


 初めて見る……これが獣人。


 獣の特徴と人間の特徴が入り混じった、混合種。


 エール王国の東の地域に多く住んでいると言われるが、この辺りでは滅多に見かけることはない……必然、僕は好奇の目を向けてしまった。



「……あの、ここ、未踏ダンジョン探索係であってますか?」



「あ、ああ、あってるあってる。大正解だよ」



 いけない、出会い頭に観察し過ぎて不審がられてしまった。

 ここはクールにいこう……第一印象は大事だからな。



「こちらこそ初めまして。僕は探索係のクロス・レーバンだよ。よろしくね」



「はあ……よろしくお願いします」



 めちゃめちゃ警戒されている。


 普通にショックだ。



「ん……来客かの」



 ここからどうやって僕の信頼を取り戻そうかと思案していると、部屋の隅から寝ぼけた声が聞こえてくる。


 どうやら、完全に昼寝をかましていたベスが起床したらしい。



「……? おお、マジで猫耳じゃの! いやー、久しぶりに獣人を見たかったんじゃが、相変わらずめんこい容姿じゃのぉ。どうじゃ、儂の言っておった通りじゃろうが。お主なら絶対に気に入ると思ったんじゃ、猫耳」



 開口一番、とんでもないセクハラ親父だった。



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