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新メンバー 001



 カイさんの命令を受け、僕とベスは次々と未踏ダンジョンを攻略していった。

 まあ、お察しの通り僕はほぼ何もしていないけれど……それでも、少しずつ強くなれている気はする。


 ベスはベスで、正式に暴れる許可を得て大喜びだった。ダンジョンを出る度に「今日も一段と腹が減ったの」なんて、軽口を叩いている。


 そんなこんなで。


 初めて二人で探索係の仕事をしてから二週間が経ち、僕らの攻略したダンジョンの合計は八つに上った。


 B級相当のものが一つに、C級が五つとD級が二つ……正直、一緒にいる僕も舌を巻くどころじゃ済まない事態である。


 否応なく、未踏ダンジョン探索係の名は街中に轟いた。


 あそこの部署に規格外の化け物がいるらしい。いや、百人越えの大人数で攻略しているに違いない。俺たちギルドの仕事を奪うつもりか。


 そんな噂が、街のあちこちで飛び交っている。


 幸いベスの存在が表立って広まっている様子はないので、ギルドからの引き抜きや他国から命を狙われるなんて事態にはなっていない。


 それどころか――むしろ。


 僕たち探索係にとって、思わぬ追い風が吹き始めていた。





「今日も特別公務メンバーの応募が複数きているぞ。全く、嬉しい悲鳴だね」



 市長室に呼び出された僕とベスは、上機嫌に椅子にもたれるカイさんの話を聞いていた。


 ちなみに、ベスは誰かに呼び出されるということが無条件で嫌いらしく(実に彼女らしい)、対照的に不機嫌な面持ちである。



「先週から徐々に数が増えて、今じゃ百件を超す勢いらしいじゃないか……どうだい、何人かは気になる者がいたかい」



 探索係の評判が上がったことで起きた現象……それは、特別公務メンバーになりたいと希望する冒険者が増えたことだった。

 今までは年に一人応募があればいい方だったらしいのだけれど、この短期間で百人を上回る数の応募者が出ている。



「ふん。儂が興味を持つような人間など早々おらぬからの。全員突っぱねたわい」



 カイさんは、実際に現場で動いている僕とベスに採用の権限を与えてくれた。しかしこの通り、ベスのお眼鏡に適う相手は中々見つかっていない。



「それは実に残念だ。まあこの波はしばらく続きそうだから、気長に見繕ってくれたまえ」



「初めて応募がきたときから言っておるが、滅多なことがない限り誰もパーティーに入れる気はないぞ。儂はこやつと冒険がしたいだけじゃからな、どこぞの馬の骨ともわからん奴らに背中を預けるつもりはない」



「それなら私も最初から言っているだろう。必ず新しくメンバーを迎えてくれと……これは命令だ」



 二人の間に緊張が走る。


 ベスの活躍に心底期待しているカイさんではあるが、だからと言って組織の上下関係を揺るがすことはしないらしい。



「君たちの働きには甚く感謝しているが、しかし私には私の考えがある。公務員である以上、また特別公務メンバーである以上、私の命令には従ってもらうよ」



「……ふん。儂相手にそこまで大きく出るとは、肝の座った女じゃ」



「クロスくんが公務員を続けたいと願っている間は、君も下手なことはできないだろう? 高を括らせてもらってるさ」



 ベスが市長に反抗すれば、当然僕にしわ寄せがくる。それを彼女が良しとしないとわかっているからこそ、カイさんは強気に出られるのか。


 僕の存在がベスに対する抑止力になっているとも言える……我ながら分不相応な大役だ。



「ちっ。仕方ないのー、適当に選ぶか」



「急に投げ槍だね。そこはもっと慎重にいくべきじゃないかと、私は注意せざるを得ないよ」



「くじ引きで良くないかの?」



「いいわけないだろう。席順を決めるわけじゃないんだから」



 珍しくカイさんが突っ込みに回っていた。



「……とりあえず、これが今日きた応募者の情報だ。目を通しておいてくれ」



 彼女から手渡された用紙は五枚。それぞれ、簡単な経歴や志望動機なんかが書いてある。

 ……やっぱり、みんなどこかのギルドに属している冒険者だ。ギルドで働きつつ、最近評判の上がっている探索係で仕事をして箔をつけたい、みたいな感じだろうか。


 ざっと見たところ、今回の応募者も今までと似たり寄ったりで、ベスの興味を引く人物はいなささそうだな。



「こいつに決めたぞ」



 僕の予想を裏切り、ベスが高らかに声を上げる。

 彼女の手には、一枚の紙が握られていた。



「それはまた……随分と性急だね。本当に適当に選んだのかい?」



「いや。めちゃくちゃ吟味した。吟味に吟味を重ねた上での結論じゃ」



「一分も見てないじゃないか。嘘に嘘を重ねないでくれたまえ」



「ファーストインプレッションってやつじゃよ……とにかく、こやつを呼んでくれ。直に見てみたい」



「……わかった。君たちに採用権限を与えたのは私だからね、仰せの通りに」



 言って、カイさんは通信魔法でどこかに連絡を始めた。


 ベスが気に入った人物か……正直、興味がないと言えば嘘になる。


 まあそれよりも。


 僕、今日まだ一言も喋ってないんですけど?



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