アイリーン学園4
「カナ!なぜ、邪魔をする!!」
「…バトルで関係ない人を傷つけたらだめ。失格。」
カナと呼ばれた女子生徒は朝クラスにいた1人の女の子だった。
「でも、シルベールが2階に行かなかったんだ。俺が悪いわけじゃない!」
「…ロメロ・リンセント」
「…失礼、自分を忘れていたよ。確かに僕は格下の君たちに手加減をしてあげないといけなかった。…だが!いや、今回は見逃してあげるよ。明日の試験でとりあえず僕と君たちの差がはっきり分かるからね。では…」
そう言ってロメロは部屋から出て行った。
「あ、あのありがとうございます。カナちゃん。」
「ううん、当然のことをしただけ。…ケガはない?」
淡々と話す彼女はクールというより感情があまり見えにくい感じの子だった。
「はい、ありがとう!」逆にカレンは感情が豊かで見ていて安心する。無事でよかった。
「カレン、ごめん!全然守れなかった。」俺は頭を下げる。
「ううん、全然ですよ。それよりロメロくんと互角で戦ってて本当に強いんだね。」
「いや、あいつはまだ本気じゃなかったと思う。」
「うん、彼は広いところが得意だからそれに奥の手も持っている。」
カナという女子生徒も話してくれた。
「本当にカレンを助けてくれてありがとう!」
「別に、友人を助けただけの話だから。それより、さっき私の知らない魔法を唱えようとしていなかった?」
無表情なのに急に距離をつめてくる。
「え、いや俺魔法使えないしそんなわけないじゃん!」ここは誤魔化す。
「でも、レン君のその剣は魔法ですよね?」カレンがペンに戻った剣を指さす。
「ああ、これは元々呪文を唱えさえすれば、俺の思った形に変形できるだけのもので、俺の力じゃないんだよ。」
「そうなんですか?思っただけで変形できる魔法って結構高度な魔法なのでレン君のオリジナル魔法なのかなって。」
「違う違う!これは俺の師匠が俺にプレゼントしてくれたもので俺の魔法とは関係ないんだ。」
「そう。でも君がここに転入してきたからには何か特別な力や才能がないと来れないはず。」
なんか俺の中を見透かすような眼をしてじぃ~と見つめてくる。綺麗な顔だけに少し目を合わせられない。
「ちょ、ちょっと、カナちゃん。レン君の事見すぎだよ~。」俺とカナ?の間に割って入ってくる。
「ごめん、まず紹介。私は神崎カナ。よろしく。」
ん?神崎?どう考えてもここの世界の名前とは違う感じがする。俺はこのカナという女子生徒を全身しっかり見ていた。
俺が考えて事をしているのが、不審に思ったのか
「レンさんも早く自己紹介してください!」目をバッテンにして少し怒っているようだった?なんでだ?
「ああ、ごめん。俺は」
「音西レン。小学6年生から引っ越してきて基本的にみんなの中心にいて人気者スポーツも出来、勉強もまあそこそこ。高校までは…ね。」
「え?」いまこいつなんて言った?小学生?人気者?何言ってんの?
「え?どうしたの?カナちゃん何言ってるの?」カレンも驚いている。
「お前、」
「カナと呼んで」
「カナ、やっぱりお前も日本から来たんだな。」
「ええ。」無表情のまま答える。
「俺のことも知っているのか?」多分こいつは俺のことを知ってる。いや結構知っている。
「ええ。」
「じゃあ、教えてくれ。俺が日本でどんな奴だったか。」
「…やっぱり記憶がないのね。」カナはそう言った。
「そうだ。」
「教えてもいいけど、」
「ありがとう!!」
「条件がある。」
「なんだよ。」
「明日私より成績が良かったら教えてあげる。」
「わかった。」
「ただし私に負けたら、1つ言う事を聞いてもらう。」
こんな条件で怯んでたら、この先やっていけない。
「わかった!」
「レンならそう言うと思った。ふふっ。楽しみ。じゃ。ウインド。」
そう言ってカナは一瞬で帰っていった。
「カナちゃんが笑ってた…」ぼそっとカレンがつぶやいていたが、俺は明日のことを考えていた。あいつに明日俺のことをしっかり教えてもらう。そのうえでこれからどうするか。まあ、魔法師にはなる予定だが。とりあえず明日カナに勝つ。俺が色々考えていると袖がぐいぐい引っ張られている感じに気づく。
「レン君、大丈夫?」カレンが心配そうに上目使いで見ていた。可愛い。
「ああ、大丈夫だ。ごめんな、考え事してた。」
「それより、大変な約束しちゃったね。」
「何が?」
「レン君知らないの?カナちゃんはこの学園で1番の秀才って言われてるの。1番魔法師に近い人って言われてるんだよ。」
「…マジで。」
「マ、ほんとです。」つられてマジって言いそうになった。カレンは置いといて
そんな優秀な奴に俺が勝てるのだろうか。せめて明日オリジナル魔法を使っていいかアイリスに交渉だな。負けたくねぇ。勝って絶対俺の忘れた記憶を思い出す!
俺は明日のテストにめちゃくちゃ燃えていたのだった。