目覚め
ここはどこだろう?暗い…。何も見えない。音が聞こえる。ざわざわと。なんていってるんだろう。わからないな。まあいいか。そんなに特別聞きたいことでもないし。でもなんで暗いんだろう?先も見えないしこれから先って何があるんだ?あれ?何のためにここに今俺はいるんだろう?
「…哀そうに。」
ん?今騒音とは違った声が聞こえたような?
「…きなさい」
さっきよりはっきり聞こえる。来なさい?どこへ?何を言っているんだ?
だれだ?というかここはどこなんだ?教えてくれ!
「いきなさい。そしてあなたは自分のsfhyfrksdhjduied」
行きなさい?だからどこに行けばいいんだよ!
声はノイズと共に消えてしまった。なんだ?小さな光がこっちに向かってくる。なんなんだ?ここは一体なんなんだ?!!
目が覚めると周りには建物も何もない人気もない荒野だった。あれは夢か?というかここどこだ?頭が少しズキズキする。早く家に帰って寝よう。家…どこだ?
ん、なんでだ?思い出せない!まてまて、俺は音西れん。…ダメだ名前しか思い出せない。記憶喪失?なんでだ、きっかけも何も思い出せない。…そうだ手掛かりになりそうな物!
俺はポケットの中を探る。…ない。ポケットに入っていたのは使い古されたペンとメモ帳だった。なぜか服は破けてて少し大きいような。いったい目が覚める前は何があったんだ?というか一文無しでこれから記憶もなしでどうすればいいんだよ!
叫びたい気持ちでいっぱいだったが、とりあえず喉乾いた。水飲みたい。
周りを見渡すが水の気配なんてない。どうしよう。
とりあえず周りに何かないか探さないとな。俺は勘で右に走り始めた。
少し走ると水の音が聞こえたような気がした。
やったか!
俺は音がした方へ走っていく。
すぐに水の音が聞こえる場所についた。そこには池があった。やった水だ!池の水はすごく綺麗で透き通っていた。これなら普通に飲んでも大丈夫そうだな。俺は水を手ですくい沢山の飲んだ。うまい!あれ?そう言えば結構走ったのにあんまり息切れをしていなかった。俺ってこんなにスタミナあったっけ?というかスピード結構出てたような。。それに普通水の音も聞こえないくらい池も遠くにあったような。もしかして、俺ってすごかったりするのか?そんなことを考えていると、なぜか水面に映っている俺の姿は幼く見えた。高校生くらい。いくら記憶がないにしても俺は大人だった。…気がする。なんで?こんなに若返ってるんだ?この世界って何なんだ?もちろん俺の問いに答えてくれる人なんか周りにはいない。
だが、違う声なら聞こえた。
「グルルルッ」
俺の背後から聞こえる。振り向くととても普通の動物とは思えないような大きさの獣が後ろにいた。あ、これ喰われるわ。
俺の身長の4倍近くある。普通に食われる。死ぬ。俺はそう思った。
全速力でその獣から逃げた。
「ガルルル」もちろん俺の後を追いかけてきた。俺だって結構早く走れているはずだが、あっという間に追いつかれる。4足歩行の獣って早すぎだろ!
前足で捉えられそうになったのを上手く手で払いのけられた。
捕まれたらそのままガブリだ。あっという間にあの世行きだろう。
怖い、今にも膝が笑って動けなくなりそうだ。だが、死にたくない。どうにかして生き延びなければ、自分のことも思い出せないまま死ぬなんてまっぴらごめんだ。
俺は獣から背を向けるのではなく向き合った。獣もその姿に少し警戒しているようだ。俺はゆっくり上着を脱ぎ獣の攻撃を受け流せるように構えた。
一瞬のように獣は俺にとびかかった。俺は上着で自分の姿をくらまし、回避した。つもりだった。だが、獣の爪は俺の腕をひっかいていた。すごく痛い。血も出てる。右腕はもう使えないだろう。獣はもう1度とびかかろうと態勢を整えている。俺にはもう上着もない。逃げても追いつかれる。武器も特にない。終わったか…。
俺の人生何もなく記憶さえないまま終わるのか。もう悲しいのか何なのか訳が分からない。
「くそぉぉぉぉ!!!」俺は大きな声を出していた。まだ終わりたくない。せめてこの獣に一泡吹かせるくらい、いや相打ちくらいには持っていってやる!
俺は持っていたペンを構えた。目をつぶせばまだ勝機はある。
「かかって来いやぁ。獣ぉぉぉ!」
「ガルルル」
獣が走ってとびかかってくる。
「うぉぉぉ!」俺もぎりぎりに引き付けて躱し目を狙う算段で動いていた。
「タイムワールド」
誰かの声が聞こえた瞬間獣は凍ったように止まってしまった。
「え?」
「大丈夫か、君。」声の主の方向へ向くとローブを被った人が立っていた。
「まだ気を抜くな。こいつは死んでいない。時が止まっているだけだ。」
「どういう?」
ローブを被った人は獣の前で手を動かしているように見えた。俺にははっきりとその動きを捉えられなかったというのが正しかったと思う。
「スタート」そうローブを被った人が言った。
次の瞬間獣に切り傷が順にでき、ばらばらになって消えてしまった。
「これでもう大丈夫だ?生きているか?」
「助かったのか。ありがとうございます。」
頭を下げてあげた瞬間頬に痛みが走った。
パン!
叩かれたのだ。全く見えなかった。
「痛ってーな!」
「お前はバカなのか。本当に死ぬところだったのだぞ。素人が倒せるものじゃないのだ。」
俺は驚いた。怒られたことにじゃない。ローブを被った人は女だったのだ。
「ご、ごめんなさい。」俺は全然悪くないのに、その時はそう言うしかなかった気がした。
ローブの女性も俺の反省の色が見えたのかすぐに
「この近くに洞窟がある、そこで傷の手当てをしてやろう。」
そう言って俺たちは洞窟へと向かった。
灯りはランプ1つ。だけどあまり大きくない洞窟では十分だった。座るのにちょうどよい岩があり、俺はそこに座り傷の手当てをしてもらっていた。
「私は癒しの魔法は苦手でね、これで我慢してくれ。」
そう言って傷口に草をすりつぶしたようなものを塗られた。
「くっ…ぅぅ。」
「男なんだがら変な声を上げるな。」
「そんなこと言われても。うぅ!」
包帯で強く腕を巻かれる。
めちゃくちゃ痛い。痛いと言わないだけましだと思ってもらいたい。
「この薬草は痛い分すぐ治る1日もすれば治るだろう。」
「あ、ありがとうございます。」
女性はパイプタバコみたいなものを吸い始めた。不快な匂いは無く、すごくいい匂いがした。
甘いバニラのような匂いだ。
「それはそうと、なんであの獣と戦っていたんだ?」
「いや、普通に襲われたんだけど。」
「何を言ってる?普通あの荒野にいること事態おかしいのはわかっているのか?」
「いやそれがまったく…」俺がとぼけているようにも見えなかったのか、
「何かありそうだな、聞こうではないか。」女性は耳を傾けてくれた。
俺の話を不思議そうに聞いてくれた。
「なるほどな、気が付いたらこの荒野にいていきなり襲われたと。気が付く前の記憶は無く、どうすればよいかまったくわからない無一文なわけだな。」
「その通りです。」
「ちょっと頭を貸してみろ。」そう言って女性は俺の頭を両手で持ち、顔を近づけてきた。
「ちょ、ちょっと何しているんですが?」
「静かにしろ。」どすの利いた声でそう言われて俺は何もできなくなった。
顔が近い。このままキスされるのだろうかと思った。が、そんなこともなく頭と頭をくっつけて目を瞑っていた。すごく整った顔立ちだ。いかにもお姉さんみたいな感じ。きりした目と鼻立ち口も小さく綺麗な人だなと俺はぼぉーと考えてた。
「おかしいな…。」
目を閉じたままその人は言う。
「何がおかしいんですか?」
「君の記憶が見えないのだ。」そう言いながら俺の頭から離れる。
「そうですか…。」これからどうしたらよいのだろう。
「まあ、そんなに悩まなくてよい。それよりお前はこれからどうするんだ?」
「特に何も思いつかないのですが、でも生きていくためにはやっぱり強くならないといけないなと思いまして。」
「ほう、それで?」
「助けてもらった上に図々しいとは思いますが、俺に魔法を教えてください。」
「断る!」
「えっ!!そこは普通に教えてくれる流れじゃなかったですか?」
「そんな流れなんかない。それに私のことをエロい目で見ていたことは知っているのだぞ。」
女性は自分の体を抱くように俺のことをじぃ~と見ていた。。
「えっ…。」そうか!確かに記憶を読み取れるなら今思っている事くらい知るのは造作もないか。
「ごめんなさい、普通にお姉さんきれいだし、あんなに距離が近かったら誰でも考えますって。」
「…フフッ。冗談だよ、このままここで放置するのも気が引ける。ちゃんと町まで案内してあげよう。」
「やった、良かったです!」
「ただし、魔法についてはもう才能なのだ。だから素質がなければ普通に私の秘書にでもなってもらおうかな。」
「そこまでしてくれるんですか!本当にありがとう!」
「まあ、お前の勇姿もさっき見せてもらったし私はお前が気に入った。それと…。いやこの話はまたにしておこう。」
「気になるんですけど。」
「まあ、気にするな。まずは自己紹介だ。名前くらいはわかっているのだろう?」
足を組みながら聞いてくる。
「俺は、音西れん。見た目は結構若いけど多分20歳以上のはずだ。それ以外は自分の情報は分からない。よろしく。」
「ほう、大人か」なぜがニヤッと笑っていた。何か笑う要素があったのか?
俺の疑問を組んでくれたように、女の人は話し始めた。
「私はアイリス。年齢は327歳だ。」
「えっ…?!ええええええ!327歳?」
「そうだ。」にやにやしながら答えるアイリス。
「ばば」
「これ以上の言葉を言ったら命は消え」
俺は両手で口をふさいだ。なぜがアイリスが綺麗だと思ったことを後悔しそうだった。だが、見た目は本当にきれいなのだ。これもアイリスのいう魔法なのか?
「アイリス、聞いてもいいか?」
「君は年上にため口で話すのか?」
「う。」
「まあいい。なんだ?」
「魔法ってゲームとかであるやつか?」
「げえむ?とはなんだ?」
確かに、ゲームという単語が急に出てきたんだ?思い出そうとすると頭痛がする。でもこれは思い出せる。
「前にいた所にあったはずのものだった気がする。炎とか水で攻撃とかできる呪文とか。」
「なるほど…」
アイリスは顎に手を当て少し考えてから。
「確かに魔法はそういった類のものだ。私くらいになると詠唱無しで魔法を使えることも出来る。」
「そうなんだ!すげぇ。」
「お前にもなにか才能があればいいな?」
「どうやって才能があるかわかるんですか?」
「めちゃくちゃ簡単だぞ。」
アイリスはまたもニヤニヤし始めた。
「なぜが嫌な予感がするのですが…。」
「じゃあ、準備するから脱げ!」
「・・・はぁぁ?!」