腹が減りゃ戦は出来ぬ
俺たちは王都にやってきた。
「すげええ!これが王都なのか!!」
「スウルは王都初めてなのかい?」
「ああ、生まれて初めてだ!」
すげえ、あっちには火を噴くオトコが踊ってるし、こっちには村の5倍はある市場がある。こんなにもすごいところだったのか、王都は。
村のみんなも連れてきてやりてえなあ…
「王都はこの国で一番大きな市場や、武器屋街があるからね。」
「オレも王都にゃ、よく来るけど結構良心的な価格のとこが多いからな。」
「そうですわね、わたくしも食べ物はそこの市場でよく買いますわ。」
「ほえ〜、すげえな。」
さっそく市場の方へ向かっていくと、さまざまな声が飛び交っている。
「いらっしゃい!お兄さん今日入ったばっかの新鮮な肉だよ!」
「ポーション用の薬草仕入れてきたよ!早いもん勝ちさ!」
「らっしゃ!らっしゃ!近海の海鮮が入ってぞ!」
オレの村では確実に見たことない肉や魚、薬草が普通に置かれていた。
「すっげえ!おっちゃん!これなんて動物の肉?!?」
「お!兄ちゃん、これはバスクって馬の肉だ!臭みも少ないし、何より味付けしなくても肉の旨味だけで酒が三杯は飲める!」
「ほえ〜、みんなは食べたことあるのか?」
「僕はあるよ、団でもよく食べるんだ。」
「お、お兄さん騎士団の人かい?いつもあんがとな、ご贔屓にしてもらってよ。」
「いや、僕が決めてることじゃ…」
「エルはこんな美味そうなの食ってんだな!」
「スウル…(キュン!)」
スウルが満面の笑みを見せると何故かエルは噎せた。
「ゴッホ、ゴホ、そ、そうだね、スウルも食べたいかい?」
「いいの?!」
「ああ、少し早いがお昼にしよう。ここは裏で定食屋もしてるんだ。」
「オレも王都に来るとココで飯だな。」
「まあ〜わたくしは初めてですわ。」
「なんだい兄さんらウチで昼飯食ってくのかい?」
「ああ、4人お願い出来るかな?」
「あいよ!ちょっとまってな!シルビー!シルビー!お客さん4人だ!!」
店主が奥の家に向かってシルビーという人を呼んでいると奥から女性が出てきた。
「はいはーい!お待たせ!お客さんだね!こっちから入って!」
奥から出てきたシルビーさんは、真っ赤な髪をおさげに結び、腰だけ巻いたエプロンをつけやってきた。
「ゴメンねー、こっちの入り口狭くて。」
「いや大丈夫ですよ。」
「ええ、おや、スウルそこに段差ありますか気をつけて下さいね。」
「え?」
エルが気を利かしてくれたのに俺は段差につまづいてしまった。
「危ない!」
エルは俺を支えてくれた。
「ご、ごめん。」
「いえいえ大丈夫ですか?」
「スウル、大丈夫か?」
「お客さん大丈夫!?」
「ああ、大丈夫です。」
「ここの段差削ったほうがいいもしれないね。ゴメンよお客さん。」
「まあまあ、何もなかったんですし、大丈夫ですわ。」
「そう?それじゃあ、席に案内するね!」
お店自体は広すぎず狭すぎずといった感じだ。
席もお昼には沢山の人が座れるくらいの席はあるみたいだ。
「はいよ!こっちのテーブルにお願いね!」
「ありがとう、シルビーさん。」
「メニューは机の上にあるから決まったら呼んでね!」
そういってシルビーさんは他のお客さんの注文を受けにいった。
「メニューすごいあるんだな。」
「ここはお肉を使った料理が有名らしいんだ。騎士団の団員もよく行くんだ。」
「そうだな、俺もここにきたら肉をまず頼むな。」
「へー、ハーツのオススメはどれなの?」
「オレのか?そうだな、さっきオッチャンが言ってたバスク肉だな、筋も少なくてどこの部位を食べても美味い。」
「じゃあ、俺はそれにするよ!」
「では僕はこちらのハブンを頼もうかな。」
「エルそれなに?」
「これはハブンという鳥のことだよ。」
「鳥か、なあなあ半分こしようぜ?」
「は、はんぶこ!?」
「あ、いや、もちろん嫌だったらいいけど…」
「いや、しよう!ぜひ!僕のを半分こしよう!」
「う、うん…」
なんだか急にエルが身を乗り出してきたが、王都ってもしかして、半分こは悪いことなのか?村じゃよく下の子らとしてたんだが…
「おいまて、スウル。」
「え?なにハーツ。」
「オレはこのドーリエを頼む。」
「え、あ、うん。」
「…」
「…?」
「聞かねえのかよ。」
「え、あー、ドーリエは村でもよく食べてたから…」
「そっか…」
急にハーツがシュンと落ち込んでしまった。
なんだか大きな獣がじゃれてたら怒られたみたいだ。
「ママンは何にするかきまっ!!どうしたの!?」
「大丈夫ですわ、すこし尊すぎて…」
ママンは何するか決まったのか聞こうと見たら、鼻血を出していた。
「いや、でも…」
「ええ、わたくしのことは気にせず。」
「俺ハンカチあるから、ほらこれ使って。」
「申し訳ございません。洗って返しますわ。」
「ああ。」
(これからわたくし目の前でアーンが観れると思うと興奮してしまいました。わたくしは壁。壁ですわ。)
「それで、ママンはどれ?」
「ええ、わたくしはこちらのサラダのセットとカーティヌを。」
「カーティヌってなに?」
「カーティヌは焼き菓子の一種ですわ。ジンジャーの効いたすこし大人な焼き菓子ですの。」
「はわ〜、俺の村ではなかったな…なあママン少しそれ貰ってもいい?」
「ええ、もちろんですわ。」
「それじゃあ、シルビーさんを呼んでもいいかな?」
「ありがとうエル。」
エルが手を挙げるとすぐにシルビーさんがやってきてくれた。
「お決まりかい?」
「ああ、僕はこのハブンを。」
「ハブンね。」
「オレはドーリエの200で。」
「ドーリエ200。」
「わたくしはサラダのセットとカーティヌを。」
「サラダセットとカーティヌね。カーティヌは食事と一緒でいいかい?」
「ええ。」
「はいよ。」
「俺はバスクで!」
「バスクね、部位が今日は胴、脚、尻があるけどどうする?」
「え、部位?」
「オレのオススメは胴だな。」
「じゃあ、胴で!」
「胴ね。注文は以上でいい?」
「ああ!お願いします!」
「それじゃあ、待っててね。」
シルビーさんは注文を取り終えると厨房に向かって行き、中の人たちにオーダーを通していた。
「この後なんだけど、ここから一時間ぐらいのところに今スポットが出来てるらしいんだ。」
「スポットか、実力を見るには十分だな。」
「近隣に街や民家は大丈夫でしょうか?」
「ああ、幸い平原らしく家畜の散歩させてる時に見つけたらしい。」
「平原っていや、ゴズ平原か?」
「あそこは広いので、魔法が打ちやすくてわたくし好きですわ。」
「スポットってなに?」
「「「…」」」
「え?え?」
「スウル、スポット知らねえのか?」
「うん。」
「ママン説明してやってくれ。」
「ええ。スウル、この世には魔物がいる事はご存知ですわよね?」
「ああ、魔王が生み出してるんだろ?」
「そうです。魔物には何種類かあります。その一つが魔王が生み出してる魔物です。そして、魔力がある特定の場所に留まってしまい魔力溜まりが出来てしまい、魔物を生み出すというものがあります。あとは、人間が魔族と契約や、乗っ取られたりしておきる魔物落ちがありますが、魔物落ちはここ何十年も発見された事はありません。」
「へー、じゃあ、魔王が生み出した魔物。勝手に発生した魔物。人間が元になった魔物がいるってことか?」
「ええ、その認識で大丈夫ですわ。そして、スポットというのは、その魔力溜まりのことを指しますわ。」
「なるほど、じゃあその平原に魔物を生み出す場所が出来てしまったから駆除をしに行かないといけないってことか!」
「ああ、正解だよ、スウル。」
えっへん!とスウルが胸を張ると、3人は悶えました。
(スウル…賢いアピールしてるのかな?愛らしい。)
(あー、ガキでもわかることを…クッソ、このやろう)
(ハァァ。この無知な少年が大人2人から色々と手ほどきを受けて自分好みに調教されると思うと…滾りますわ!)
次回!アーン回!
一話一滾り。
バスクは馬肉
ハブンは鶏
ドーリエは豚 と思っていただければ。