10年後になりました。
時は過ぎ10年後・・・
・・・・・・・・・・・・・・
「ちょっと待ってください!!」
絢爛豪華な広間の真ん中に場違いな俺はいた
俺はどうしてここにいるんだろうか…
王都『リン・エージェン』
俺はここのど真ん中にそびえる王家の城に連れてこられていた。
一週間前、俺は故郷のポポロン村で農作業に励んでいると王都からの使いという騎士が、やってきた。その騎士は村の広場で王国からの御触れを読み上げた。
「この村にいる治癒魔法を使える者はすべて王城に来るように、これは王命である。」
村に住むみんなは俺が治癒魔法を使えることを知っているから、いっせいに俺のほうを向いた。
「む、その者。お主は治癒魔法を使えるのか?」
「あー、はい。使えます。」
「お主は王都に来い。ほかにはおらぬか?」
この村では俺しか治癒魔法を使える者はいない。治療できる者はいるが高齢の薬師の婆さんぐらいだ。
「この村では俺だけっす。」
「そうか、では明日この村を出発するから準備をせよ。」
「あ、あした?!」
「急ぎらしいので、すまんな。」
明日出発って…流石に急だろ…
ったく、家帰って荷物詰めるかな。
「明日俺はここに来ればいいのか?」
「ああ、そうだな。我らは村の宿場に泊まるから、では明日の10時にここに集合だ。」
「あいよ。じゃあ、荷物詰めてくるよ。」
俺は家に帰って自分の荷物を詰めることにした。
道中、村の悪ガキたちが俺のケツを拳で殴ってくる。
「いってーな、殴るな!」
「スウル兄ちゃん、王都行くんだろ!!」
「土産よろしくな~。」
「兄ちゃん悪い女に引っかかんなよ!」
こいつらはユン、ヒーク、シュオ。
俺の母ちゃんがこいつらの出産の手伝いをしてから、それ以来家ぐるみの付き合いだ。
「ケツ殴るようなやつらにはなんもねーぞー。」
「おうぼうだ!」
「「そうだそうだ」」
「うっせ、はやく父ちゃんらの手伝いに行け。」
「「「はーーい」」」
俺とあいつら三人の親父は村の鉄工房で働いている鍛冶師だ。
ゆくゆくはあいつらも鍛冶師になるだろう。
三人が工房に向かうのを見送り、俺は家に着いた。
「スウル、あんた王都に行くのかい?!さっきミモンから聞いたよ!」
この人は俺の母さん、サンメル。村一番のお針子だ。
ちなみにミモンはヒークの母さんのことだ。
「ああ、王命らしくてよ。治癒魔法の使い手を探してるんだとよ。」
「治癒魔法ねぇ。たしかに使い手は少ないけどこんな田舎まで来るなんてなにか急ぎの用でもあるのかしらね。」
「俺もわっかんね。明日出発すんだとさ。」
「そりゃあまた急だね。」
「騎士さんにそういわれた。」
「そうなのかい?それじゃ今日は晩御飯豪華にしようかね。」
「お、それじゃあ肉がいいな。」
「まかせな、それじゃあ市場にお肉でも見に行くかね。」
「俺は明日の用意しておくわ。」
母さんは市場に向かったから、俺は自室で明日の準備をするか。
その夜・・・
「スウル、お前王都に行くんだって?」
「ああ、明日出発するんだとよ。」
この人は俺の親父、ゴーディ。工房の副工房長をしている。
「なんでも、治癒魔法の使い手を探してるらしいよ。」
「治癒魔法か…」
母さんが伝えると親父はすこし考えるように言った。
「どうした親父?」
「いや、なんでもない。」
(まさか10年前の…いや考えすぎか。)
「今日はスウルが王都に行く宴だよ。」
「おおーー!うっまそーー!」
「サンメル、ありがとう。」
親父は母さんにチュとキスをした。
はいはい、いくつになっても仲いいですね。
「そうそう、スウルあんたに渡しておくものがあったよ。ご飯の後に渡すわね。」
「ああ。」
晩御飯を終え、母さんは奥から何かを持ってきた。
「これはあんたが来年成人の時に渡す予定だった服と剣よ。田舎出身とはいえ流石に帯剣してないと見栄えが悪いだろ。」
「工房の新作だ。服はサンメルが作ってくれたんだぞ。」
「そんないいもの俺が貰ってもいいのかよ。」
「ポポロン村代表みたいなものでしょ。」
「村が下に見られちゃいかんからな。」
「ああ、そうだな。」
その夜は早く寝て明日からの旅に備えることにした。
なんせ王都まで4日はかかるからな。