魔王城ルガーナ城
今回は魔王グルードのターンです。
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場所は変わり、魔王城。
ここは魔界にある魔王の城、ルガーナ城。
「グルード様!ゴズ平原に配置していましたジャイアントイーターが討伐されました!」
「なに?!まあ、良い。ゴス平原は王都にも近くある程度のレベルの冒険者がゴロゴロしてるだろう。」
王の間を、勢いよく開け報告してきた男の名はダース=ローデン。魔王グルードの側近である。シルバーカラーの長髪を一つに纏めて、首元まで閉めた詰襟は真面目さの象徴のようである。
「こちら使い魔にその時の映像を撮らせておりますので、ご確認下さい。」
そう言って、ダースは鳥の見た目をした使い魔を使って記録させた映像をグルードが持つ水晶に投影させた。
「ふむ、4人の冒険者が倒したようだな。騎士に槍使いが前衛のようだな。ん?これは精霊師か?厄介な奴がいるな。」
「左様ですな。グルード様、この者なのですが私は見たことがない魔法を使っているようなのですが…」
「ふむ、どれどれ。」
グルードはスウルを見始めた。
すると、グルードは心の中にザワつきを覚えた。
「この者、まさか…」
「グルード様、知っておられるのですか?」
「ん、ああ、いや…」
10年前に自分を助けてくれた人間。
スウルだと、グルードはすぐにわかった。
グルードはすぐにスウルを手元に置きたいという衝動に駆られた。しかし、スウルは人間、自分は魔王。立場が違いすぎる。
「グルード様?」
ダースが呼びかけるとグルードは直ぐ様、指示を出した。
「このパーティはなかなかに厄介そうだな。よし、俺が対応を考えるからダースは下がってくれ。ああ、この映像は残しておいてくれるか?」
「かしこまりました。それでは私は晩餐のご用意をしてきます。」
ダースは鳥の使い魔を連れて部屋を後にした。
ダースが退出し、静かになった部屋にはグルードが1人で先程の映像を眺めている。
「ああ、スウル…スウル…スウル…懐かしい。我が愛しきスウル…」
「めっちゃくちゃカッコよくなってるんですけどーー!!!!!うわーー!昔の記憶のまま育ってると思ったらまさか冒険者になってるなんて!うわー!筋肉もついて、昔はプニプニしてたのに!でも、顔は幼さが残ってるし笑顔とか昔のままじゃん!え?尊い…」
1人になったグルードは取り繕うことをやめて、スウルの感想をつらつらと連ねていった。まるで推しの尊さを噛みしめるオタクのように。
「というか、待ってくれ。この3人は誰だ?なんか見た感じ3人ともスウルに羨望の眼差しを向けているような気がするんだが…この騎士は多分鎧脱いだらガチムチそうだし。こっちの槍使いは褐色の肌が健康的だし。てか、この精霊師、胸でかすぎじゃないのか?というか、この3人全員胸でかくないか?まさか!その胸でスウルを誘惑する気か!?ええい!くそ!俺の方がスウルと出会ったのは絶対早いのに!この!!羨ましい!!」
グルードはエル、ハーツ、ママンがスウルに良からぬ感情を抱いてる事に直ぐに気づき、地団駄を踏んだ。
そして、そのグルードの姿を陰ながら見つめている男がいた。
ダースだ。
なにやらグルードの様子がおかしいと思い、分身体に晩餐の用意を任せ、本体はドアからこっそりと覗いていたのだ。
「ああ、グルード様。その少年がスウル様だったのですね。良かった。長年の想いが実りそうなのですね。このダース感激でございます。」
ダースは幼少期からグルードに仕えていた為、グルードが寝言で(スウル、スウル)と呼んでいたことは知っており、また時折グルードがポポロン村の事を尋ねてくるので、変身しこっそりとポポロン村の様子を伺い当時グルードを助けてくれた者を調べていたのだ。
「グルード様。このダース、微力ながら協力させて頂きます。」
と、ハンカチで涙を拭きながらダースは調理場に向かい、グルードの晩餐に精がつくものを沢山用意しようと決めたのだった。
グルードはオタク特有の早口を使った。