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最終話(仮)第30話 これからもよろしくお願いします。

何回も書き直した結果、最終的に色々端折りました。

シンプルかつ自分らしく、接骨木らしくって事で、今までで一番難産だった気もします。

どこで切っても半端になるので、前後編ではなく一話にまとまっております。

 俺は執務室でトロッコの使い心地の書類を見て、職員の声を文字として知る事になる。

 実際に現場に行けないから仕方ないけど、概ね好評みたいだ。

 主に腰痛改善と、運搬する際の人員削減と一気に運べるから時間的な物だ。

「むー。これは特に改善案もなさそうだし、そのまま鉱山に敷けるだろうか?」

 お茶を一口飲み、鉱山の坑道の広さとかを思い出し、間道は無理でも本道なら奥まで行けそうな気はするので、草案を書き始める。


 ドアがノックされ、返事をして顔を上げるとティカさんが笑顔で入ってきた。

「式の正装が仕上がりましたので、一度袖を通してみましょう」

 式典系の事はアニタさんではなく、ティカさんやシルベスターさんに一任されているので、ここぞとばかりに出張って来る。やっぱり嬉しいんだろうか?

「あの……なんで二着あるんですかねぇ……」

 一つはわかる。ここに来てから着た赤い服だからだ。けど叙勲式用なのか、装飾がかなり増えている。そしてもう一つはシンプルで色が黒い。で、隣に純白の肩出しのマーメイドドレスとウエディングヴェールが……。

「素敵なドレス……。私に似合うかしら?」

 そんなティカさんの言葉を聞きながらドレスに触ろうとしたら、アニタさんが思い切り体当たりしてきたのでかなりよろけた。俺がこんなによろけるって、かなりの力と速度だったんだろう。流石元騎士だな。

「汚れてしまうので触っては駄目です! これは女性にとって神聖な……あ。申し訳ありませんでした!」

 アニタさんは自分がした事が、どれだけヤバイ事だったのかを少し冷静になって気がついた様だ。普段からあまり硬くならないでって言ってたからな。

「いやいや、これは俺が悪いんです。ドレスに触ろうとしちゃったので……。ってか、これがあるって事は……近いうちに結婚式と……か?」

 俺は首を傾げてティカさんに聞いてみた。

「えぇ、御座いますよ。ロディア様とニワトコ様の結婚式が」

 超笑顔でティカさんが答えてくれた。なんか来る所まで来た感が強いな……。


「んー、やっぱり俺達のだよなぁ……。一緒に置いてあるんだし。ってか肩出しのマーメイドラインか。ロディーの体形なら、無難なAライン辺りか、細身の人に合うスレンダーラインは……王族の式じゃ無理か。マーメイドも細身の人用だから、華やかだからありっちゃアリだけど、胸元がなぁ……。腰が括れてるから問題はなさそうだけど……。んー」

 俺は顎に手を当て、少し目を細めてロディーの体形を思い出しながら目の前にあるドレスを見る。

「ウエディングドレスを見て、そんな感想を出す人っているんですね……」

「いるみたいですね。(わたくし)も初めてです」

 アニタさんとティカさんが、なんかあきれた目でこちらを見ている。

「普通は綺麗とか、似合いそうとかだと思いますが」

「えぇ。ましてや伴侶となるお方が着るんですよ?」

 二人が俺に対して、こんな事を言うのは初めてだな……。やっぱり結婚式は女性にとって特別なんだろう。俺はこっちに両親がいないので、何とも言えない心情だけどな。


「ふむ。ここは素直に誉めておくべきでした。女性陣の方の目がマジだったので、ふざけて良い範疇を超えてしまったんですね。申し訳ありませんでした」

 ってか、こういうのって当人同士の二人で選んだりするんじゃないの? 王族だから専属のデザイナーがいて、ある程度要望を聞き入れて、って感じなんだろう。

「んー。よく見なくても、細かいところが凄すぎるな。大半の人は一生に一度しか着ないからなー」

 俺はドレスの前で中腰になり、吐息や唾が飛ばない様に口元を袖で隠し、よく観察した。


 ふむぅ。なんか金をかけたらかけただけ高くなる意味がわかったわ。マジで刺繍的な装飾がえげつない。そこに専門的なデザイン料が入るし、素材的な物もはいる。このヴェールだって前世みたいな透ける様な薄さではないが、この世界基準で物凄く薄くて軽そうな素材だ。しかも長い。三メートルから四メートルくらいありそうだ。魔除け的な意味合いもあるし、長いほど格式が高いらしいから、王族としては短い方なのだろうか? 王位継承的に三位だし、身長も低いからあんまり長すぎてもアレな気もするし。

 ってか縫製技術がそこまで高くないから、物凄い職人の努力が感じられる。十七世紀末にはウエディングドレスの文化があったとか聞いているが……。多分他の迷い人の知識で広まったと思っておこう。

 そう思いながら視線を少しずらすとリングケースに指輪が刺さっていた。また体当たりされたら困るので手に取る様な事はしないが、細くてシンプルなのに、王家の紋章や名前が彫ってある。彫金技術も凄いな。こんな細い奴なのに、文字が潰れて読めないとかが一切ない。

 ロディーが前に、装飾品類はいらないとか言ってたのはこういう事だな。普段から俺もアクセサリー類をしないから、専属彫金師の凄さに気がつかなかったわ。


「あの、ニワトコ様? 素直に綺麗とか、そういう言葉は出ないんですか?」

 アニタさんがジト目でこちらを見ている。だって仕方ないじゃない……。

「そういうのは着ている本人の前で言いたいので、実は言わずに取っておいてます」

 笑顔で答えておいた。実際に着ているロディーがここにいたら、迷わず言っていただろう。

「そうですか……。そういうのもあり? ですかね?」

 アニタさんが少しだけ首を傾げ、微妙な表情で顎に手を置いている。

「ドレスに対して言っても良いですが、それは職人に対して誉めているのと変わらないので、今度書状でも送っておきますよ。……あれ? これって旦那じゃなくて父親が送った方が良いの……か?」

 そこで何となく思っちゃったので、顎に手を置いて左の方を見て真剣に悩み、結果その辺は俺は送らない事にしておいた。

 変な事をしても相手側に迷惑をかけるかもしれないからな。

「はぁ……あと五日後かー。なんかクソだるいなぁ。プロテア義父さんが一回で纏めてくれたのには本当に感謝だ」

「練習通りにすれば問題ありません。ニワトコ様はほぼ完璧に仕上がっております」

 ティカさんは良い笑顔で太鼓判を押してくれた。

「ありがとうございます。けど他の人の目とかあると緊張しちゃうんですよ」

「訓練でできない事は本番でもできません! まだ五日もあります! 練習あるのみです!」

 アニタさんはこぶしを握り、熱く語ってくれたが、兵士系の教官的なかんじがする。なんか海兵隊を訓練する教官が、なんか背中の後ろに見える気がする。



「あ゛ー。気が重い」

 俺は装飾過多な服をティカさん監修の下、きっちり着こなして時間まで待合室で待機している。

 もちろん着替える前に散髪やら風呂は済んでいるし、俺からしてみればかなり時間がかかった感覚だ。

 多分今は会場設営やら、お偉いさんがゲストルームっぽい場所で待機でもしているんだろう。

 俺はそんな事を思い、肩のモップみたいな物を指でいじりながらお茶を飲むが、形が崩れるとか、細かい糸くずが落ちるって事で注意された。マジで勘弁してほしい。



「ニワトコ様。準備ができましたので会場へ」

 なんか鎧を着こんだ礼装をした兵士が待合室に来て、先導する様に歩き、今まで必要ではなかったので行った事のないエリアの方に、どんどん連れて行かれた。

 そして重厚な観音開きのドアの前にも礼装した兵士が立っており、俺達が近づくとタイミング良くドアを開けてくれたので、練習通りに決められた歩幅で歩き、入ると奥行が十メートル、間口が十メートル程度の部屋だったが、中央に赤い絨毯が敷かれ、左右には俺の着ている服の色違いや装飾の有無はあるが、青色や緑色、黄色の服を着ている人達が並んでいた。

 そして正面にはプロテア義父さんが、三段くらい高くなっている場所で、今までに見た事のない真剣な表情で立っており、視線だけを右に動かしてみると、ダリア義母さんやヘリコニア義兄さん、トレニア義姉さんが立っていたがロディーはいなかった。

 左を見るとサルビア一家やサイネリアさん一家がいる。家族全員青色の服を着ているので、爵位順に並んでいるみたいだ。

 あたり前だけど、奥が爵位が高く手前が低いと考えた方が良いだろう。日本にも右大臣や左大臣とかあって、どっちが偉いかわからないが、そう並んでいるんだからこれがこの世界では正しいんだろう。


 「ニワトコよ。この度の功績を称え――」

 俺は足の短いフットマンなのかフットツールなのかわからない、ソファのできそこないみたいな物に片膝をつき、何回も練習した言葉を口にする。

(わたくし)ニワトコは、国の為に更なる――」

 普段とは全然違う真面目すぎる、プロテア義父さんが俺の肩に剣を当て、皆の目があって少し緊張して間違えそうになったが、全て言い終わり肩から剣が退けられたので立ち上がった。

 そしてプロテア義父さんが、赤いトレーを持った見た事ない人が近づき、そこから勲章を取り俺の胸に付け始め、三個ほど増えた。

 個人的に重さは感じないが、色々と重く感じる(・・・・・)――

 これが爵位の重さって奴か……。

「これからも国の為に助力してくれ」

 そして練習にはなかったセリフを言い、プロテア義父さんが超笑顔で俺の肩を叩いた。

「はっ! これからも国の為に、より一層努力させていただきます!」

「うむ。()の番は終わった。そのままそこで待機しておれ」

 ん? なんか予定がどんどん狂っていくな。ってどこに行くんだ? なんで脇の扉から出ていくんですかね? あんた王様だからそこから出る必要ないよな? 練習になかった展開だぞ?

 ってか、滅茶苦茶偉そうな教会関係者っぽい人が出て来たんですけど? すげぇ刺繍だなぁ。教会関係の序列とか爵位並みに知らないけど、大司教とか司教って呼ばれてる人? 教皇とか枢軸卿ってのもいたけど……。

 本山? のある教会なら教皇とか枢機卿って人が来るんだろうけど、一国の王都の教会で一番偉いなら大司教? 本当良くわからない。

 ってかなんで助手っぽい人が指輪の入ったトレーを持ってるんですかねぇ……。この人が聖檀のかわり?


 そんな事を思っていたら俺の後ろのドアが開く音がして、どこに隠れていたのかわからないが、なんか音楽が流れだした。

「あー。はいはいはい。そういう事っすか……」

 俺は小声でつぶやきながら振り返ると、プロテア義父さんがウエディングドレス姿のロディーと腕を組み、ゆっくりとこちらに歩いて来る。

 俺、結婚式の練習してないんですけど? ってか服! 服このままなの? ってか何回か練習するものじゃないの? ましてや王族に婿入りですよ? ミスしたらヤバいんじゃない?

 ってかプロテア義父さんニヤニヤすんな。俺は少し呆れた感じでを後ろを見ると教会関係者達も微笑んでいた。横を見るとやっぱり義兄姉達は笑顔、サルビア達も笑顔。

 ってか全然知らない貴族達を見ても微笑ましい顔になっている、こりゃ俺抜きで壮大な打ち合わせがあったに違いない……。だってどこの馬の骨かわからん奴が! って雰囲気じゃないし。

 絶対にコレ、数日前から予定されてたわ。俺の結婚式の衣装は、盛大な囮だわ……。


 ヴェールをかぶっていて表情は良くわからないが、一応二人は落ち着いてる様だ。そしてプロテア義父さん達が俺の前まで来たので、ロディーの手を取り腕を組む。

 うん。確かこんな感じだったはずだ。友人の結婚式のチャペルで見ただけだけどね!

「では、まずは讃美歌を」

 滅茶苦茶偉そうな神父様がそんな事を言うが、讃美歌なんか知りません! こっちの世界に来て教会に行ったのは最初の言葉が通じてない時だけです!

「ニワトコ様は、新婦ロディア=ザイフェ様を健やかなる時も、病める時も――」

 あ。異世界でも似た様な感じなんだな。様式が違ってたらどうしようかと思ったわ。こっちでも男側が最初なんだな。婿入りでも……。

「はい。誓います」

「ロディア=ザイフェ様は、新郎ニワトコ様を――」

「はい。誓います」

 ロディーの声を聴いたが、いつもよりハキハキと答える様な感じではなく、落ち着いた感じで答えた。

「では、誓約の証として、指輪の交換をニワトコ様からロディア=ザイフェ様へ」

 俺は助手っぽい人が持っている指輪の挿さっているトレーから指輪を取ろうと思ったが、助手の人が軽くズラして俺の取ろうとした指輪を教えてくれた。練習してないし、知らない内に指輪が作られてたし、半分指輪が隠れてるから、どっちがどっちだかわからなかったんです!

 機転を利かせてくれたから良いけど、俺の指輪をロディーにはめるところだったわ。

 俺はロディーの長手袋を外し、指輪を左手の薬指にはめ、今度はロディーが俺の左手薬指に指輪をはめてくれた。

 神父様の方を見ると、笑顔で顔を縦に軽く振っていたので問題はないだろう。


「では、誓いのキスを」

 そう言われ、俺はロディーのヴェールをめくると、普段は全然していない化粧が薄くしてあり、大人しくしているので別人の様に感じ、ドキドキしてしまった。

 何秒くらいが普通なんだっけ? 長くし過ぎても問題があった様な? んー。十秒くらい?

 そして俺は、いつもと雰囲気の違うロディーの唇にキスをした。

 厳粛(げんしゅく)な雰囲気なので拍手とかはないが、多分平気だろう。友人の時も拍手がなかったし。

「これで二人は、夫婦になる事が神に認められました」

 ここ教会じゃないけど、神って言葉使っていいの? 大丈夫? この結婚式。

「この結婚証明書に署名を」

 神父様がニコニコとしながら、助手から受け取った紙とペンをこちらに出してきたので、いつも通り接骨木と漢字で書き、続いてロディーも書いて無事に結婚式は終了したので、後は二人で腕を組んで退室するだけだな。多分だけど。

 俺は無言で手を出し、ロディーが組んできたので、後は流れでそれらしく腕を組みバージンロードを歩いて退場するが、米なんてこちらで見た事がないのでライスシャワーではないだろうなと思っていたら、鳥の羽を皆が投げている。

 フェザーシャワーって奴だろうか? こんなものあるんだな。なんか映画みたいに、羽が舞って幻想的で綺麗だ。



 そのまま先導する兵士達に従い、謁見をするバルコニーに案内された。

 そこには王都に住んでいる国民が集まっており、俺は口を半開きにして驚いた。

「国民には通達済だったんだな……」

「当たり前でしょ。こんなおめでたい日に呼びかけないと、結構不満が溜まるのよ」

「別の日に改めてだと思ったけど、そうでもないんだな……」

 とりあえず笑顔で手を振っておこう。

「「「うぉぉぉぉぉぉ!」」」

「凄いな……。手を振るだけでこれか」

「王族だし、なんだかんだで国民に正式に顔を出すのは初めてでしょ?」

「あぁ、そうだったな」

「塩と薪の値段が下がったのは、ニワトコのおかげだと皆知ってるんだよ」

「スラムに大きな宿も仕事を作ったのも、あるんじゃないかしら?」

 俺が笑顔で手を振っていたら、遅れてプロテア義父さんとダリア義母さんが、俺とロディーの隣に着き、一緒に手を振り出した。

「街道も安全になって、商人も喜んでるし」

「そうそう。寒村にまで道を敷き始めて、往来も増えたしね」

 ヘリコニア義兄さんとトレニア義姉さんもバルコニーに来て、一歩引いた場所で手を振り出した。


「ほらニワトコ、手を振ってないでなんか言え」

 ヘリコニア義父さんに肩を軽く叩かれ、そんな事を言われてしまった。

「あの。練習もなしにぶっつけ本番って苦手なんですけど?」

 俺は笑顔のまま手を振り続けながら、プロテア義父さんに抗議した。

「機転を利かせて、口八丁で乗り切る事も必要だぞ? ほら、頑張れ」

「あ、はい……。皆さん。接骨木です! この度、本日付けでロディア様と結婚させていただきました。これからも皆様の為に頑張りますので、よろしくお願いします。まぁ、見えない所で動いてるので見かける事は少ないかもしれませんが、これからも影で暮らしを良くしようと頑張ります!」

 俺は砦時代で出していた様な大声で叫ぶと、集まっていた国民が大きく沸きあがり、一気にテンションが上がっているのがわかる。

 なので俺は手を振って答え、これからも頑張らないといけないなと思いつつも、今後の事が頭をよぎったが、今日くらいは止めておいた。


 バルコニーから城内に戻り、俺が着替えていた部屋までロディーと一緒に兵士の先導で戻った。

「ロディー。厳粛な雰囲気だったから言えなかったが、そのウエディングドレス物凄く似合ってる。とても綺麗だよ」

「ちょ、ちょっと。いきなり何を言い出すのよ!」

 ロディーが頬を両手で押さえ、顔を真っ赤にしていた。可愛いなぁ。

「前に衣装は見たんだけど、アニタさんに綺麗とかって感想は出ないの? 的な事を言われてね。着ている本人の目の前で言わないと、服を誉める事になるからまだ言いません。って言ってたんだ。だから二人きりの状況で言わせてもらった」

 多分俺の顔も赤くなっていると思う。けど今言わないでいつ言うんだ? って状況なので、頑張って言ったさ。

「多分だけど、普段化粧をしてないのもあると思うし、ウエディングドレスを着ていて、物凄くお淑やかにしていたからだと思うけど、一瞬別人に見えたのも事実だ。普段からそうしていてくれとは言わないし、普段のロディーの雰囲気も好きだけど、たまにはこういう一面も見せてくれると嬉しいな」

「望めばいつでも見せてあげるわよ? もちろん夜でも(・・)ね」

 ロディーは優しい表情で笑い、俺の首に手を回すとキスをしてきたので、腰に手を回しながらされるがままに、満足するまで好きにさせていたらノックが鳴った。

 けど返事をしなかったので、中々ノックをした人が入って来ない。もちろん返事をしてないからだ。

「ロディア様? ニワトコ様?」

 この声はティカさんだ。けどまだキスは終わらないので、俺は何となくそれに応えていたが、体感でノックがされてから一分くらい経ったくらいでロディーの唇が離れた。

「いいわよ」

 ロディーがそう言うと、ドアを開けてティカさんとアニタさんが入ってきて、少しだけ口元を緩ませた。

「んん゛。申し訳ありませんでした。少し来るのが早かったようですね」

 ティカさんが咳ばらいをしながらそう言い、アニタさんの方に目を向けると、人差し指で唇を右から左へとなぞったので、口紅が俺の唇についているみたいだ。

「問題ありませんよ。今夜は結婚初夜になるので、また違った事に――」

 そこまで言ったらロディーから肘鉄を食らったので、言葉が途切れた。

「結構痛かったわー。ウエディングドレスでそんな事しないでほしいな」

「ならそんな事を言わない事ね。まったく……」

「ははは、ごめんごめん」

 そう言って俺はロディーに、仕返しという事で軽くキスをして視線を二人の方に戻すと、五人ほど人が増えていた。もちろん義父母や兄姉、トニーさんの五人だ。

「ははは。お義兄ちゃん見せつけてくれるねー。そういうのは寝室でやった方がいいよ?」

「ロディー、ニワトコ義兄ちゃん。結婚おめでとう。けど、そういうのは部屋でね?」

「さっさと孫の顔を見せてくれよ。もう結婚したから、作り放題だ――」

 プロテア義父さんがそこまで言ったら、ダリア義母さんの鋭い肘鉄が飛んでいた。

 なんか似た者家族になりそうだなぁ……俺達。

「ロディーちゃん。お父さんの言う事は気にしないで良いからね? ニワトコ君も、これからはちゃんと私の事を、お母さんって呼んでね?」

「あ、はい……その辺は慣れるまで大目に見て下さい」

 俺は軽く乾いた笑いを出しながら言い、何となく気まずくなったので皆から視線を逸らしておいた。

「あぁ……大切な事を言い忘れてました。これからもよろしくお願いします」

 俺はロディーの手を握り、皆の顔を見ながら笑顔で言った。

最終話(仮)です。

続けようと思えばいくらでも広げられますが(生ごみを捨てただけで作物が育つか、鉱山のトロッコ、塩害地域の耕作、スラム整理、等)、最初の予定通り大体30~40万文字の間で終わらせようとしてこうなりました。

気が向いたら続きを書くかもしれませんが、別作品の盾FPSも似た様な事を言っておいて書いていないという……。

ちなみに本当にこの終わり方で良かったのか? と、結構悩みましたが、盾FPSも似た様な感じなのでお許しください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本も二巻共に買いました。電子版も二回以上読みました。大変面白いでした。作者には大変でしょうが続編を是非お願いします。期待度マックスです。 [一言] 番外編としてヘルニア様を待ってます。 …
[一言] お疲れ様です。
[良い点] お疲れ様です。ってエエエ!? 内政チート物語としてはこれからなんじゃないんですか? とても残念です。
感想一覧
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