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第21話 授業って疲れるね 前編

姫騎士の書籍化が決まりました。

それに伴い、タイトルを正式な物に変更します。

 風車や製塩所の視察から戻った翌日、俺はトレニア姉さんに会う為にメイドを呼んだが、執務室にいなかったら、このメモを専属の執事かメイドに渡してきてくれとお使いも頼んだので、問題はないはずだ。

 内容は、戻ったら話があるので呼んでください。程度の物だ。呼ばれるまでに、聞きたい事を書いたりできるので、それはそれで良いんだけどね。



 そして昼食後、執務室がノックされたので返事をすると、見かけないメイドさんが入ってきたので、多分トレニア義姉さんの専属メイドだと思う。

「トレニア様がお呼びです。ご同行お願いいたします」

「わかった」

 そして俺はメモと筆記用具を持ち、立ち上がってメイドさんの後ろをついて行き、トレニア義姉さんの執務室に向かった。


「用事って何かしら? とりあえず座って。貴女は下がって良いわ」

 事前に来る事はわかっていたのか、既にテーブルにはお茶とお茶菓子が用意してあり、ソファーに座って待っていてくれた。相変わらず机は汚いけど。


「で、どんな用事ですか?」

 メイドさんが出て行くといつもの口調に戻り、顔付きも少し柔らかくなった。

「この間製塩所の視察に行ったでしょ? そこで海面より低い土地があって、塩害が酷いから、何か良い物はないかと思ってね。お姉ちゃんに相談しに来たんだ」

 そう言って胸ポケットからメモを出し、トレニア義姉さんに渡してからお茶を一口飲んだ。


「風車で水を抜いてから、綿やこのアイスプランツって塩に強い植物や作物を植えたいって事ね。他にも案が沢山あるみたいだけど……」

 その他色々と書いてあるので、トレニア義姉さんは少しジト目気味に聞いてきた。今までの傾向で、これだけで終わるはずないと思ったんだろう。

「そうだねぇ……。もういっその事排水は少しにして、疎水を引いて水と混ぜて、汽水域にある亜熱帯のマングローブでも植えて、何かエビとかカニ、貝を育てるとかかな? 木は木炭にもなるし。もしくはラベンダーとかカモミールみたいなハーブも植えて、大規模な香油所でも建設するか。それか排水だけして、飼い葉になるオーチャードグラスとかとトールフェクスを植えて牛とかを放牧して、海水で塩分を取らせるか……。予算の話をまだしてないから、まずは塩に強い植物だけの提案だけ持ってきた」

 この国で、亜熱帯の植物が育つかどうかはわからないけど。それともカブトガ二の有用性を教え、養殖所を作ってみるのもおもしろいかもしれない。


「んー。あの辺で放牧ねぇ……。あまり大規模な畜産をしてないのには理由があると思うわ。それと暖かい地方の植物は無理だけど、このアイスプランツってのはおもしろい植物ね。ちょっと私の師匠や知り合いにこの植物の事は聞いてみますけど、ラベンダーは良いと思いますよ? 放って置いても勝手に増えるし、管理すれば大きくなる。それに香油はどの層にも売れますので、季節が五順するくらいを目処にどんどん増やして、精製するのも良いかもしれないね。これはお兄ちゃん()と予算や計画のすり合わせかな。そう言えば最近ラベンダーの浮いたお風呂に入ってないなー」

 トレニア義姉さんはそう言い終わらせると、リスの様に焼き菓子を食べ、お茶を飲んでほっこりしている。

「なら、そのアイスプランツを育てて流通に乗せるプランは保留で。まずは疎水を引いて、ラベンダーが植えられる様に整地し、海水を風車で抜く計画でいいかな?」

「そうね。あるかどうかわからない植物か種を期待するより、まずはできる事からね」

 トレニア姉さんはティーカップを持ちながら笑顔で答え、お茶を一口飲んでからソーサーに置いた。


「で、視察先でロディーとは何か進展はあった? ベッドに縛るとか縛らないとか、噂になってるわよ?」

 その言葉で、俺は口に運びかけていたティーカップを途中で止めた。

「……どのくらい噂になってます?」

「城中ね。多分城壁の外にも行ってるかも」

「あ゛ーーーー」

 その言葉に、俺は左手で顔を押さえながら変な声を出し、ゆっくりとティーカップをソーサーに戻した。

 多分尾鰭がついて広がってるなこりゃ。どっちかがどっちかを縛って、夜中にお楽しみしてるとかになってそうだ。もうスキャンダルじゃねぇかよ……。


「で、どうなの?」

 トレニア姉さんは、少し顔を前に出して、小声で聞いてきた。

「普通ですよ普通。可愛いからちょっと意地悪したら、ロディーが主導権を握りたかったらしく、縄か何かで縛らないと逆転しちゃうぞー……と。お姉ちゃんこそどうなの? そう言う話は一切聞かないけど」

 俺は少し仕返しをする様に聞いてみた。


「顔は好みだけど趣味の合わない人や、理解してくれない人が多くて……。このまま婚期を逃しちゃうのかしら? かといって、根無し草の植物専門の冒険者を婿に取るのもねぇ……。優秀な人と結婚したら、王族って事で自由に動けなくて、もう取りにいけなくなるし、私としてはそうなると結果的に損しちゃう事になっちゃうねー」

「妥協するか、もう寛容な人しか駄目じゃん……。本当にお姉ちゃん大丈夫なの?」

「ま。どうにかなるかな? 候補は絞ってあるし。後はお父さんと話し合って、その人が国の為に何ができるか……かな? ニワトコお兄ちゃんみたいに優秀じゃなくてもいいから、ある程度の水準は欲しいわね。理想は花の好きな、優しい人なんだけどね。貴族の男が花とか育ててると、女々しいとか言われちゃうから、結局世間では変わり者ね」

 トレニア姉さんは、少しだけ視線を上げて遠い目をした。どうも本当に好きなタイプの人はまだ見つかっていないみたいだ。


「じゃ、このアイスプランツの事は師匠に聞いておくわね」

「ならこっちは、とりあえずラベンダーを植える為に、整地と製油所の草案で」

 お互い目を合わせて軽くうなずくと、話し合いは終わりとなり、退室しようとしたらトレニア姉さんが声をかけてきた。

「最悪の場合は、お兄ちゃんがもらってくれる?」

 そして目を細め、少しだけ微笑んで言ってきた。


「……俺のいた国じゃ、一夫多妻は駄目だったんですよ。それに貴族とか儲かってる優秀な商人なら別だけど、一人の男が王族の女性二人ってのは色々とまずいでしょう」

「ふふふ、冗談よ。本当お兄ちゃんは真面目ね。ま、候補の一番最後にいたのは本当だけどね。もうどうしようもなくて、無能な商人と結婚とか修道院に行くよりはって程度よ。その前にニワトコお兄ちゃんか植物専門の冒険者になるけどね。ちなみに優秀な種ならばって考えがお父さん達にあるから、頭の隅にでも入れておいてね。そこに行き着く事はまずないと思うけど」

「その事実は聞きたくなかったなぁー。お姉ちゃんはロディーとも姉妹仲がいいから障害は少なそうだけど、そうすると地位的な問題でロディーが第二婦人になっちゃうのは俺的に駄目だなー」

 俺は肩をすくめ、片目を細めながらため息を吐いた。そして廊下に出るとアニタさんが待機していたので、先導されて執務室に戻り、もう一度ため息を吐いた。

「ここの王族マジ怖いわー。絶対トレニア義姉さんのあの目は本気だったな。答え次第じゃ、明日にでも寝室にベッドが一つ増えるところだった……」

 最悪アニタさんに聞かれてたなありゃ……。



 トレニア姉さんとの話し合いから三日。今日は土木部隊を任せる、貴族の勉強会なので、少し緊張しながら資料を人数分用意し、城の会議室の壁に事前に描いた絵を張り付け、ソワソワしながら頭の中でイメージトレーニングを繰り返す。

「重苦しい会議より気楽……。プレゼンより気楽……」

 そして自己暗示をかけるように呟き、水差しからコップに水を注ぎ、一息で飲み干すとノックが鳴った。


「どうぞ」

 そしていかにも普通ですよー。って感じで返事をして、ドアが開くと見知った顔が四人いる。執事やメイドさんとかも付いてきている。

 なんで義父さんと義兄さん、サルビアやアニタさんがいるんだよ。あげくになんかめっちゃ顔が厳ついおっさんもいるしよ……。しかもゾロゾロと護衛付きかよ……。

「私達の事は気にするな。この者達の教育に専念しろ。少し興味があったから来ただけだ。実際どの様に運用するのかを知らなくては、今後の予算やらで支障が出るのでな」

 プロテア義父さんが王様の顔で言い、一番後ろの簡素なイスに座った。

「最悪外交の手段として、技術提供も考えている。知らないと説明できないだろう?」

 そしてヘリコニア義兄さんもその隣に座り、サルビアや顔が厳ついオッサンも座った。

「では、講義の邪魔はしない様に」

 そしてどこかの元特殊部隊隊員で、大学で歴史を教えてる人っぽく振る舞う。


「まずは一番最初に言っておく事がある。兵士養成所で、体力や技術面で本来不合格になる者を王立の土木部隊に来ないかと打診する予定だ。君達にはその兵士に教える立場でもある。気を引き締めて聞く様に。それと言葉使いはお互い気にしなくて良い。わからなければ手を挙げて質問をしろ。わからないままわかった振りをすると、今後に差し支える」

 そう言うと、厳つい顔のおっさんが手を上げた。なんでお前が手を上げるんだよ!

「我々も質問をして構わないか?」

「えぇ、どうぞ。この場にいる時点で受講者です。ただ、教材は今日来る予定だった人数分しかありませんので、文句は言わない事」

「わかった」

 で、このオッサンは誰なんだ? 関係者? どう見ても軍人だぞ?


「では、一枚目をめくってくれ。道路整備の利点と欠点からだ」

 そして俺は、道路が平らだと、馬車の車軸が傷まず、移動速度も速まり、維持費も押さえられる所から始まり、欠点は工費と時間と人員が大量に必要という事を説明した。



「六枚目だ。独自の基準と規格化された道具、装備一覧だ」

 そして道具の説明をして、ヘルメットの説明になったら、一人が手を挙げた。

「なぜ、防具がヘルメットだけなのでしょうか?」

「動きにくいからだ。重い防具を着たまま穴を掘りたいか? この部隊の主な運用は道作りだが、山での作業中に落石があった場合、頭部の直撃だけは避けられる」

「目立つ色の布の服というのは、どの様な事でしょうか?」

「お互いを視認しやすくし、事故を減らす目的だ。遠くにいてもよく見える様にする。広い草原で魔物に襲われたり、排泄時に離れて一人になっても問題ないようにだ」

 本当は反射板ベストみたいな物でも良いけど、物がないんだよなぁ。蓄光草とかコスト高いし。


「十二枚目だ。コレは土嚢といい、袋に土を積めて重ねる事により、普通に土を盛るより効率的に、崩れる事を防止したり、大雨が降った時に家の中に水とかが入るのを防ぐのに使う。小川をせき止めたりもできるので、場合によってはこういうのもあると覚えておけ」

 そして土嚢の説明を終わらせ、同じページの別な道具の説明をしようと思ったら、厳つい顔のオッサンが手を上げた。


「騎馬突撃防止の柵の裏に積めば補強になったり、簡易的な矢を避けるのにも使えるか?」

「杭の根本に置けば支えにもなるし、矢は容易に防ぐ事ができる。崩れない様に横から見て、三角になるようにすれば簡易的な防壁にも使える。即席の崩れにくい土を固めた物になるからな」

「確かに……。柵の裏に土を盛るのは大変だが、これなら簡単そうだ」

「次の説明に入っていいか?」

「あぁ、かまわん」

 そしてオッサンは、何かメモを取っているが、俺は気にせずに続ける事にした。


「二十枚目だ。基準はこの紐を使う。事前に調べたが、馬車がすれ違える幅や人が歩く場所を作っても、この紐六本分あれば十分だという事にした。新設部隊ではこの紐を一メートルとし、今後全てメートルという単位を採用する。なので余程険しい山道や、深い森じゃない限りは、道幅は最低六メートルという事になる」

 そして特に質問がなかったのでどんどん進めていく。


「二十二枚目だ。部隊の衛生面や娯楽、食事に関してだ。輜重兵の隊長と事前に打ち合わせをして、一度に百人の調理が可能な野外調理器具を作成した。そして――」

 町と町の中間辺りでの過ごし方や、休暇での一時帰宅。出張してくれる娼婦。水の出せる魔法使い。その他の説明を終わらせた。


 そしてマジックアイテム科で作ってもらったプレートの簡単な説明に移る。

「ここから見える場所に、耕した土とプレートという物が置いてあるが……。振動しながら前に進む。窓際に移動してくれ」

 そして俺は、待機していた兵士に合図を送ると、フワフワになった土の上にプレートをかけて締め固めているのが見える。

 もちろん目立つ作業着にヘルメットを装備させている。

「へこんでいたりする場所に土や砂利を混ぜて、あの様にして締め固めて平らにする道具だ。これで水溜まりができるような、小さなへこみを平らにして、避けて通る事を減らして移動速度を上げ、車軸の傷みを押さえるのが主な用途だ。ま、俺は迷い人で魔力がないから使用できないが、聞いた話だと魔法が使えなくても使えるのがマジックアイテムらしいから、稼働させられる時間に差はあるとは思うが土木部隊の全員が使えるはずだ。効率を考えて適切な数を配備させる。もういいぞ」

 そして兵士に声をかけると、絞め固まっている土の上を、プレートを稼働させたまま、倉庫の方に向かっていった。


「もっと大きな物や、効率的な物も作れるが、大きく移動にも手間がかかるから、今は検討中だ」

 ロードローラーやブルドーザーとか。ってか、魔力が高ければ、簡単な車だって作れるんだろうけど、タイヤとかサスペンションとか面倒そうだし、それぞれの回転数を合わせたり、スタビライザーとか一気にそういうのを作ると色々と、技術のバランスが崩れそうだし。

 そうなると魔力イコールガソリンってなるしな。最悪魔力を貯められる物ができれば、一気に普及しそうで怖いし。

 まぁ、ショベルカーとかは動きが色々難しいし、油圧とかまだまだだろうなぁー。

「ここまでで質問はあるか? ……ないなら小休止に入る。各自トイレを済ませたり、隣の部屋で飲み物でも飲んで後半に備えるように。休息終了の合図はこの鐘を鳴らす」

 そしていったん呼び鈴を鳴らし、城のメイドさんを呼んでお茶を煎れるように頼み、くじ引きとか、ガラガラと回転させて玉を出す場所に良くある、鐘の音を聞かせてから解散させる。



「ふう。変に疲れた……」

 俺はイスに座り、資料をめくりながら後半の講習に備えて、脳内でどう進めるか考えていたら、なぜか座っていた四人が資料をめくって興味深そうに見ていた。

「ふむ。この調理器具はいいな。馬で引かせるのか。草案と簡単な絵しか見てないから、詳細の書いてある絵はかなり興味深い」

「一度に百人分の食事が作れるってのは良い。うちではあまり使う機会はないと思うが……」

 そしてプロテア義父さんと、オッサンが話し合っている。

 国王にあんなに近づいて平気なん? ってか普通に話してるな。


「見た事のない計算方法と精巧な地図があるな。ニワトコ様、これは?」

 そして、一応敬称を付けてサルビアがコレはなんだと聞いてきた。興味があるんだろうなぁ。

「あぁ、それは体積の計算の仕方だ。縦掛ける横掛ける高さで、どの程度の量の土を使ったかとかを表す。硬い土を掘り返すと三割かさが増え、絞め固めると八割になる。だから大きな穴を埋めるには、どこか土のある場所からどの程度運べば、この穴は塞がるか。って感じで使う。地図は縮尺の概念を使うのに描いた。それをそのまま大きくすれば、ほぼぴったり王都の外壁と一致する。つまりもう少し小さく描けば、街から街に引いた道路の形や、どこに何があるかが把握できるが……。機密的な問題で、多分詳しく描かれる事はないと思うだろう。ま、一応だ……」

 まぁ、麦の貯蔵が袋単位だったから、最悪立方メートルで管理してもいいかな? って感じでやった。機会があればトンで管理したいけど、まだ無理だろう。

 ってか、一回麦を回収して、計ってから袋に戻すのは手間だから、何袋で約一立方メートルって感じだろうなぁ。

 大きなサイロみたいな筒のアレを作るのにも技術面で問題があるしなぁ……。


「お茶の方はどういたしましょうか? こちらにお運びしますか?」

 そして会議室で雑談をしていたら、アニタさんが聞いてきた。

「目上の者が一緒にいたら気が休まらんだろう。皆が良ければここで飲むとしよう」

 そして王様らしからぬ発言をして、アニタさんが軽くお辞儀をして会議室から出て行った。もの凄く暇になると思ったから頼んでなかったのに、なんで他のメイドさんに頼まなかったんだろう?


「私はどこでもかまいません」

「俺もここでいい」

 その返事で王様と、残りの二人がここでお茶を飲むと言ったので、俺も飲むと言い、会議室で飲む事が決まった。


「あの土嚢という物は、多少値は張ると思うが良いと思う」

 そしてオッサンがお茶を一口飲んだら、いきなりそんな事を呟いた。

「専用の製作所を作り、単価を下げて工兵部隊にでも使うか?」

「そうしてもらうと、大変ありがたい。急な陣地構築やら、防衛に使えるからな」

 このオッサンは話を聞くと、工兵のお偉いさんっぽい。ってかずいぶん義父さんとフランクに話すな。ロディーとアルテミシアさんみたいな関係なんだろうか?

 多分義父さんも、訓練して、騎士団とかにでもいたんだろうなぁ。


「戦争で旦那が亡くなった未亡人を優先すれば、雇用も生まれます。ミニウムから賠償として取った金銭での遺族への補償では、季節が数回巡ればなくなりますからね」

 お。サルビアも中々良い事を言うな。実家の義母が良い感じに訴えられれば、領地運営は安泰だな。

「そうだな。少し急だが、私の判断で進めておこう。ニワトコ、問題はないな?」

 なんでそこで俺に振るんだよ。国王なんだから自分の裁量で決めてくれよ。

「……そうですね。小さな子供もいると思うので、子供を預ける施設を隣接させれば、安心して働けると思います」

 そして保育所的な感じのも提案をしてみた。そうすれば女性も、子供の心配をしないで働けるからな。


「教会や孤児院みたいなものか。できた袋をそちらに回し、折り畳んで箱詰めくらいやらせれば、小遣い程度の金は渡せるな……。そうすれば親も喜ぶであろう。最悪スラムの孤児にも、労働の対価として食料を与えるのも良いかもしれんな」

 労働基準法もないし、救済だと思えば確かにいいのかも?

「労働の対価としての食料や小遣い程度ならいいですね。炊き出しの様に何もせず与え続けると、何もしない、何もできない大人になる可能性もありますからね。希望者には文字の読み書きや、簡単な計算も教えても良いかもしれません」

 ついでだから、国の識字率を上げつつ、数字で騙される事のない子供の育成だな。変に賢くしてやれ。


「そうなると、スラムにいる浮浪者が騒ぐかもな。俺も働かせろ、教えろ。なんて言うかもしれん」

「そうしたらニワトコが設立する、王立の土木部隊にでも入れるさ。あぁ、そうだ。製塩所の報告書を読んだが、概ね順調らしいな。太陽で海水を温める施設ができるまでは稼働できないが、報告書通り(・・・・・)なら一日の生産率も上がるとの見立てらしいが?」

 オッサンとプロテア義父さんが話していたら、いきなりこっちに話題が飛んできた。本当に脈略ねぇな。


「えぇ。普通より濃い海水から煮詰めますからね。これで効率が上がらなければ、少し改良案を出します。効率が上がり、人手が足りないなら雇用も生まれ、普通の商人への販売も視野に入れられるかと」

「ふむ。そうすると賑わいを見せ、人口が増えるかもしれんな。そしたらあそこを持ってる貴族に、手紙と補助金でも出して、町を広げる様にさせるか……」

 プロテア義父さんも、王様らしい事はできるんだな。今までふざけてるか緩い感じのところしか見てないからなぁ……。

 あとそれ。この前責任者に言って来ちゃったんですよ……。

 そして全員で他愛もない話しをしながらお茶を飲み、時間が来たので俺は鐘を鳴らして、休憩の終わりを知らせた。

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