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第20話 多少塩の値段が下がればいいな

どこで区切っても半端になるので、一話にまとめました。

 地図やら兵站の事とかを説明してから十日。塩作りに必要な風車が完成したって事で連絡が入り、視察に行く事にしたが、鍛冶屋のオッサンが一緒に行くのを拒否した。

 詳しく説明したら、何十日も店を空けたくない。別に俺の事は気にしないで良いから、試作品持って行って現地で作ってもらえ。ってなった。

 個人の主張は大切にしたいので、今度また何か大きな仕事を頼む事を言い、今回は諦めた。


「ねーねー。私も一緒で良かったの?」

「んー? ロディーが平気なら、俺は別にかまわないよ。むしろ一緒にいてくれた方が嬉しいし」

 馬車の中でそう言うと、隣に座っているロディーは顔を赤くして膝をバシバシ叩いてきた。



「で、今回はどんな感じなの?」

 宿に着き、ベッドに腰を下ろしたらまずそんな事を聞かれた。

「そうだなぁ。この前描いた図面を細かくしてきたから、それを現地の大工に頼んで、太陽と風を使って海水をどんどん濃くして、使う薪の量を減らせる感じにして――」

 そう言いながら図面を取り出し、風車からアルキメデススクリューを使い、海水を汲み上げ、緩い傾斜のついた広い水路を通して流下式塩田のある場所まで運ぶ。

 そして箒を吊り下げた蒸発用の漕まで運び、今度は汲み上げ式ポンプで何回かそれを繰り返し、塩分濃度が高くなったら煮る。

 それを何個も作り、製塩の効率を上げる方法をロディーに説明した。

 風車から水路に流す部分を切り替えたり、枝分かれにして流し込む以外の場所に蓋をすれば、ある程度までは増やせるしな。


「これなら初期費用と管理費や維持費だけで、薪代は安くなる。あとは人件費かな。だからなるべく早く道路の整備を着手したい。そうすれば荷馬車の車軸が傷まないし、搬送速度もあがる。ぶっちゃけ国営の製塩所だし、急な出費用の予算も組まれてたから、問題はないと思う」

 俺は図面を軽く指で叩きながら、少しだけ不安な顔で言う。

「けど本当手探り状態で、コレで利益が出るまでは、国内分だったら季節が十回巡るくらいかかる。隣国への輸出も考えるなら数回。生産力を上げれば物価は下がるし、どうなるかはわからない」

 そしてため息を吐きながら、首を振って両膝に肘をついて前かがみになる。

 正直輸出とか儲けとか、そう言うのはまったくわからないし、税関なんてのは外交の畑だしなぁ。


「とりあえず運営してみて、百日くらいは様子を見てみないと、何ともいえないのは確かかな」

「薪代を下げるのにここまでするのが凄いわね……」

「けど長い目で見れば、管理費と維持費だけでどうにかなるかなーって感じ。じゃあさ、海水から塩がどれだけできるか知ってる?」

 俺はロディーに笑顔で聞いてみた。


「んー。コップ一杯でスプーン一つ?」

「おしい。コップ十杯で大体スプーン六杯から七杯かな。コップ一杯だとスプーンで半分より少し多いくらい。それを煮詰めるだけでも、結構薪代がかかるよね? だから道具と人件費で海水をある程度蒸発させる」

 海水濃度三コンマ五パーセントで、一リットルを全て鍋とかで蒸発させれば、三十五グラム前後の塩ができる。そう考えると、寸胴とかで煮ても一握りくらい。何時間火にかけてればいいんだよってなる。

 現代でもガス代がもったいないくらいだ。


「確かにそう考えると、薪代ってバカにならないし、塩の値段が高いのも、何代前かわからない国王が、国営にしたのも納得できるわね」

「そうそう。木だって植えてから伐採できるまでどのくらいかかるかもわからない。遠くに行くほど、値段も上がるしな。だから最初にお金をかけて設備を調えれば、薪代も抑えられるし、禿げ山もできにくい。一回マジックアイテムの事を知ってから、そっち方面でも考えたけど、一般人がそれだけ火を出せる魔力を持っているかなって思って、考えるのを止めた」

 そしてドアがノックされ、食事が運ばれてきたのでテーブルの上を片づけて、粗食を食べたいと思いつつ、離れよりは質が少し劣るだけの料理を食べた。





「地元の貴族が挨拶したいので、屋敷まで御足労願いたいと昨日宿屋に来ました。どうしますか?」

 翌日。朝食を済ませてのんびりとお茶を飲んでいたら、アニタさんがそんな事を言ってきた。

「どうするって言われてもなぁ。別にお忍びって訳じゃないし、向こうの顔も立てないとまずいでしょ。俺としてはここでも良かったけど、相手のプライドとかにも関わるし」

「そうね。こういうのも仕事だから仕方がないわよ」

「王侯貴族って本当めんどくせぇ……」

 俺はそう言ってため息を吐きながらイスの背もたれに寄りかかり、一気にでたダルさを全面に出しながらお茶を飲んだ。


「だらしないなー。仕方ないと思って諦めて。そのうち慣れるわよ」

「立ち振る舞いとか、まだできないけど?」

「ニコニコしながら相槌打ってればいいわよ。私が相手するから」

「この平民がぁ! とか思われてそう。そういうの()面倒くさい。滅多にないだろって事で、後回しにしてたのがまずかったな」

 俺はため息を吐き、お茶を一気に飲み干してから、ゆっくりとカップをソーサーに置いた。



「ようこそいらっしゃいました」

 ニコニコとした貴族夫婦に出迎えられ、調度品が多くある部屋に通されてから、なんかどうでも良い話が始まり、笑顔で話を合わせておく事にした。

「ニワトコ様は、道の整備などを手がけるとお聞きしておりますが、今後どの様な感じになるのですか?」

「そうだな。今回の視察の目的は塩を作る為に、薪を節約する為なんだが……。その塩を運ぶには荷馬車が必要だ。重ければ重いほど車軸が傷み、修理に費用がかかる。かといって運ぶ量を少なくすると儲けが出ない。へこんでいたり、ぬかるんでいたりすれば車輪がはまり手間もかかる。その道を整備すれば、車軸の傷みもすくなくなり、搬送速度も上がる。そういう地味なところから手がけ、隣国へ輸出する塩の値段を下げ、外交を有利にしたり、友好国との関係を盤石にするのが狙いだな。やっている事は地味だが、必要な事だ。だがそういうのは外交官の仕事なので、本当にそれだけだ」

 俺は飲んでいたお茶を置き、別に得意気に言うこともなく、普通に説明できたと思う。


「本当に地味ですが、とても大切な事だと私は思いますわ」

 奥さんが笑顔で言ってくれているが、なんか微妙に本心で言ってない気がする。

「そう言ってもらえると嬉しいが、まだ準備段階だ。本当に上手くいくのかもわからないが、道なんか誰でも使うのだ。なら綺麗な方が良いに決まってる。多分だが、私の考えた製塩方法で塩の値段が下がれば、道が綺麗なら個人で買い付けに来る商人も増えると思う。だからまずは王都から製塩所、物流の多い大きな港街までは最優先で取りかかる。後に塩街道とか呼ばれ、人の往来も増えて、ここは宿場町として栄えるかもしれん。実際に我々も王都から馬車でこの街で宿泊したからな」

 俺がそう言うと、貴族夫婦は少しだけ驚いた顔になったが、直ぐにニコニコとした顔に戻った。

 もう少し表情は隠しておこうぜ? 別に俺だからかまわないけどさ。


「ま、いつになるかわからないから、自分の領地をどういう風に整備するかとか、急な変化が起こってもいい様に、資金は少しずつ貯めておいた方がいいだろうな。あまり人のやり方に口出しすべきではないが、上手く回っている内に、今後の動きに注視しておいた方がいい」

 俺は特に表情を変えず、少しぬるくなったお茶を飲んだ。

 たしかここの貴族の税はごまかしとかはなかったはずだし、領民への税も普通だった気がする。



「あ゛ー。変に疲れだー」

「あれくらいでだらしないわね。所々ボロも出てたし、今後の課題ね」

「あいー」

 話し合いが終わり、少し出発の予定が遅れたが、貴族の屋敷から問題もなく港町に向かった。





 夕方に塩田施設建築予定の町に着き、宿に泊まって翌朝にできあがった風車を見に行く。

「おー。立派な風車じゃないか。他のより二回りくらい小さいけど……」

 日差しが少し強いので、スーツの上着を脱いで、歩きながら腕に掛け、立ち止まって風車を見ていたら、そのタイミングでメイドさんに上着を預かりますと言われ、地味にまだ昔の感覚が抜けきらないと思いつつ、自然と苦笑いをした。

「そうね。大量の海水を汲み上げる訳じゃないし、これで良いと思うわよ。高さもあるし、緩やかで長い距離の水路を作るんでしょ?」

「そうだね。嵐でも布を外しやすい作りだし、見た目は問題ないな」

 俺達はできあがった風車を見ながら、道中で話した内容を言い、空気を読んだ案内人が手で出入り口を開けてくれたので、中に入って図面と照らし合わせる。


「ここから海水を引き入れて、向こうに流す。問題はないな。歯車もメンテナンスしやすそうだし、この辺は整備の人の裁量だからなんとも……」

 俺は指をさしながら図面を見つつ、ある程度の事を確かめながら確認をする。

「これで問題はないだろう。ご苦労だった。後はすり合わせや話し合いだな。事務所に案内してくれ」

「かしこまりました」

 ロディーが物珍しそうに歯車を見ている横で、俺は案内役に案内を頼み、移動を開始する。



「では、なるべく緩やかに少量を流し、日の光で温めながら海水を運び、この箒の様な所に垂らす。でよろしいでしょうか?」

「あぁ。その後は先ほど説明した通りだ。後は様子を見て、増設なり蒸発所を長くしたりしても良い。それは任せる」

「わかりました。そのつど手押しポンプで汲み上げて、また箒にかける作りにすればよろしいのですね?」

「あぁ、そうだ。これで使う薪はかなり少なくなると思う」

 製塩所の責任者と大工を交え、図面を広げて指でアルキメデスポンプのあたりから、ゆっくりと指を動かしつつ説明し、お互い最終確認ってな感じで、打ち合わせはそろそろ終わりそうだ。


「普通に桶で汲み上げる方法では駄目だったのでしょうか?」

「掘った水路にゴミや海草が溜まる事や地盤の強度に配慮した。この様に少し離れた場所なら、水に動きがあるから、藻などはあまり発生せず、地盤も強固に作れる。それになるべくなら綺麗な塩がいいだろ」

 当時思った事を言い、多少の不純物があった方がいいのかと思いつつも、毒性のある藻とかが混ざるとまずいし、そういうのは避けたい。

 毒がある魚の大半は、餌のプランクトンとか海草だしな。

 かといって、地下百メートルくらいまで掘って、フィルターみたいなのをつけると、今の技術力じゃ無理だしな。



「それとこれは試作品なんだが……。銅でできている、鉄は錆びるからな。銅も錆びて銅青化すると思うが、取り替えや加工の点で材質はこれにした。あとはこの町の鍛冶屋に任せれば問題はない。王都の小さな鍛冶屋が作ったんだから、多分似た物は作れるだろう。それはそちらに任せる」

 確か銅や銅青に毒性はほとんどなかった気がする。なんか社会か歴史でならった足尾銅山の公害は、生成時に出るガスが原因で、雨とかが降ってどうのこうのだった気がする。あとは鉱泉とか。


「この様な物で、本当に水が汲み上げられるのですか?」

「何回か試したが問題はなかった。井戸で試してみるか?」

 俺は特に表情を変えず、話し合いも終わりそうなので提案をしてみる。



「図面にもあったが、斜めにして回せば水が上がってくるぞ」

「どれどれ。おぉ! すげぇなこれ!」

「本当ですね。これなら海水に混ざる砂も少なくて済みそうです。だからなるべく長く遠くからだったんですね」

 責任者や大工が桶に水を汲み、回してみて本当に水が上がってきたので、おもしろそうに勢い良く回している。


「太いと大量に水が来るから、蒸発させる関係で細くてもいいぞ」

 なんか調子に乗って大きいのを作りそうなので、とりあえず注意だけはしておく。

「わかっておりますよ。これなら色んな物に使えそうだ。海面より低い場所に海水が溜まったりしてる場所も多いんで」

 あぁ、こっちにもそう言う場所があるのか。ならどこにでも使えるな。


「日によって海水の高さが違うからな。高い時に嵐が来たら大変だろう?」

「えぇ。塩のせいで畑が作れないのです。それに放っておくと、沼みたいになりますので」

 管理人は本当に困った顔で片目を細めながら、こめかみの辺りを人差し指でさして渋い顔をしている。本当に困っているみたいだ。

「防波堤を作るにしても長くなるからな。干拓するにしても手間と金もかかる。塩害に強い植物で、何か利用できる物はあっただろうか……確か綿なんかが強かったな。あとは基本海岸線にある植物なら問題はないが、作物だと残留塩分濃度が問題だな……。折角なら食べられる物。トマトやキャベツ、タマネギなんかは海水を薄めればある程度は育つが、塩分濃度がどのくらいまでなら育つか研究が必要だろうな。アイスプランツという、表面に塩を隔離する物もあるらしいが、こちらではまだ見ていない。トレニア様に少しこちらからお伺いを立ててみる」


 そんな事を言ったら、責任者が苦笑いをしていた。多分だけど、塩分を含んだ土壌で作物を育てようって考えが異常なのかもしれない。

 なんだかんだで海岸沿いの植物は、塩に対してある程度対応できる様に長年かけて進化してるし、あるにはあるだろう。海岸で豆科っぽい葉っぱの植物とか見るし、マングローブみたいな物もあるからな。確かラベンダーとかローズマリーも強かった気がするな。一応植えてみるのもいいかもしれない。アシタバって日本原産だしなぁ……。こっちのこの辺にはないだろうなぁ。

 けどこの頃の航海技術的には、まだ別大陸とかの情報は少ないんだろうなぁ。


「それに、海抜が低い場所に溜まった海水の排水は、こちらで風車を建てる事を会議で話してみる。どんどん海に戻す事もしないと大変だからな。多分だが、今まで長年かけても塩湖になってないって事は、ここ最近……。季節が百回も巡ってないか、排水されたりして、循環して塩が結晶化していないんだろう」

 ウユニ塩湖とかみたいになってれば良かったんだけど……。ここは海岸沿いだしなぁ。

「さて、話し合いとしてはこんなものか。ある程度はそちらに任せる。図面があるから平気だろう?」

「はい。もちろんです」

 俺は笑顔で言うと、向こうも笑顔で返してくれた。空を見るとまだ昼前だし、今の施設の見学でもしてみるか?


「ねぇ。製塩所の視察しない?」

「あぁ、俺もそう思ってた所だ」

 ロディーもそう思っていたらしく、そう提案をしてきたので、責任者を見ると、目があった時に軽く頭を下げ、どうぞと言って手の平で製塩所の方を指してくれた。



「うむ、質素でいいな。作りも簡単だし、余計な金を使ってないのは昔の指示した役人に好感が持てる」

 そこには、レンガ作りで雨に濡れない為の簡素な屋根がかかっているだけだった。

 アル=ケ=スナン王立製塩所みたいなのが出てきたらどうしようかと思ったわ。


「へー。こんな感じでも問題ないのね」

「栄えてきたら、一応他国とかにバカにされないように、きちんとした建物は必要だと思うが、今はこれで十分なんだろう。入るか」

「そうね」

 中に入ると、海水を煮詰めているので湿度が高く、塩分もあるので変にじっとりとしている。


「蒸し暑いな。換気用に窓が多く、屋根の破風の下の部分が作られていないが、それでもこれか。作業員には感謝しないとな」

「そうね。塩は大切だもの。この方達のおかげで、私達が助かっているのだものね」

 ロディーがコテコテな王族じゃなくて良かったわ。汗や塩で服が駄目になるとか言われちゃ、作業員のやる気に関わるし。


 製塩所の中では常に人が動いている。薪を運ぶ、綺麗な海水を運ぶ、釜をかき混ぜる、結晶化した塩を木の皮で編んだ籠に入れる、それを外に運び出して乾燥させる。

 それが大きな製塩所の中で、半裸で頭にタオルを巻きながら、汗だくで全員が作業をしていた。

 汗とか入ってもなんか誤差な気がしてくるなぁ……。もうエリート塩じゃなければいいさ……。

「水分とか全部飛ばさなくても、塩になるのね」

「煮詰まって濃くなるからな。お茶に砂糖を入れても溶けない状態と同じで、他に行き場所がなくなれば、溢れるのと同じだと思うぞ」

 飽和状態とか言っても多分わからないと思うし、なんとなくそれっぽい説明をしておく。


「製塩量は一日でどのくらいだ?」

「はい。一日で十五袋ほどです」

 一袋六十キロとして、大体九百キロか。一日一人十グラム使うとして、王都の人口分は補えてる感じだな。これがこの施設で多いか少ないかは不明だけど。

 余剰分は保存食とかの加工品やパンにも使うし、国営ではない製塩所が他にもあるだろうし、国内の町や村にも行き、他国にも売る余裕は十分あるか。


「そうか。私が考えた物は天気に左右されてしまうが、最終的にはこの煮詰める課程を短縮させるだけで、薪の量を減らすのが目的だ。上手くやれば倍くらいには増えるだろうか?」

「太陽に晒して少なくなった海水を、さらに煮るのでそのくらいは行くかもしれません」

「先ほども言ったが、今後この塩は他国との貿易にも使われる予定だ。国王陛下が望めば増築して、更に生産量を増やせば、その分雇用も増えるだろう。予算の方は国から出ると思うが、町を拡張して家屋を建てる計画は立てておけ」

「かしこまりました」

 そして作業員に労いの言葉をかけようと思ったが、お偉いさんが現場でいきなり話し出すと手が止まるし、ペースが乱れるからこのまま退散しておいた。



「塩作りって大変ね」

 宿に戻り、イスに座ったロディーがそんな事を呟いた。

「そうだね。本当頭が下がるよ。塩の採れない地域では白い黄金とか言われてるけど、海があっても作れるってだけで、労働力として給金を払わないといけないし、必要な物だからこそ値段を吊り上げると大変なことになる。そういうのは低くしないと革命とか起こされるし」

 フランス革命とか、塩が引き金だしな。あれは何キロだか忘れたけど、税金として買えって感じで、しかも値上げが原因だった気がする。


「革命かぁ。税が重かったりしたり、不満が多かったりしたら起こるんでしょ?」

 ロディーは背もたれに寄りかかり、イスを傾けて天井を見てそんな事を言った。

 はしたないからそういうのは止めなさい……。

「まぁ、そうだね。何かに理由を付けて税を取り立てたりしたらやばいね。帽子は裕福の証だから税払えとか、トランプは楽しいから課税されやすいとかあったなぁ。その辺は難しいから何とも言えないけど、執務室にあった資料では確認してないし、この国は比較的大丈夫だと思うよ」

 まぁ、宇宙物とかだと酸素税とかあったなぁ。必要なのに上げて不満買ってたし。

 しかも男の名前でなにが悪いとか言って殴られてるし。

 必要な物こそ低くしないとなぁ。そういうのわかってて、国営でなおかつ薪代を抑えて欲しいとか言ってたんだろうなぁ……。


「おもしろい税金ね。どれだけ困窮してたのかしら?」

「逆だね。贅沢な暮らしをしてて、金が足りなくなったから課税。毎日パーティーとか、舞踏会とか。なんだかんだで義父さんは執務室に最低限の調度品とかしか置かないし、豪華な物を収集するとかもない。義母さんはアクセサリー類なんかワンポイントくらいで、お気に入りなのか同じ物を使ってる。贅沢してない良い国王夫妻だと思うよ。国民の血税を最低限しか使ってない証みたいなものだし」

 本当は俺のお小遣いだか給料も、ちょっと多い気もするけどね。王族は自由に使える金は少ない方が、国民には優しいと思ってるし。


「そうねぇ。貴族を呼んでやるパーティー一回で、兵士の給料何人分になるのか考えると、六十日に一回でも十分よね。まったくやらないのも、情報交換とかできないし」

「そうだね。俺が知ってるのは、贅の限りを尽くしたパーティーを短い間隔で開いて、税金上げて、国民の怒りを買って斬首だし。そういうのはコテコテの自分を特別階級出身者だと思って、国民は使い潰す物って考えの良い例だね。そんな国じゃなくて良かったよ」

 俺はため息を吐きながらイスに座り、鞄から紙を取り出したらそれをロディーに奪われた。


「まーたそうやって直ぐに仕事するー。視察先でも二人っきりなんだから、少しはイチャイチャしよーよー」

「せめて忘れない内に、箇条書きのメモくらいは許可してくれよー。塩で汚染された土壌の改良案とか、お姉ちゃんに聞く植物の内容とか。お兄ちゃんに聞く風車の予算とかさー」

「覚えてるじゃん。ニワトコは一回ペンを持つと長いから私が書いて上げるわ」

 ロディーはそう言い、奪った紙を持ったまま俺の膝の上に乗ってきた。

「さ。何を書けばいいの?」

 そして自分の筆記用具を出し、後頭部で胸板をポフポフやりながら聞いてきた。

「まずは――」

 そして俺はロディーが書いても思い出せる内容を言い、両手でおなかの辺りを抱きしめて軽く引き寄せ、肩越しに髪の香りを嗅ぎながら箇条書きの内容を見ていた。

 まぁ、その光景をお茶を持ってきたアニタさんに見られたけど、もうお互いに慣れているのかツッコミはなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 宇宙物の空気税は地球からの輸送コストだったり重工業コロニーの空気のろ過コストだったりでかかっていたやつを、『独立するんなら他国価格(関税)になるよ』ってのを無視したんじゃなかったっけ? そ…
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