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第12話 酔ってなくても年末の隠し芸ってできるよね? 後編

 昼食後に法務部っぽい所に書類を一枚預け、一応義父であるプロテアさんに報告をする。

「面白いな。無茶というより、これはほぼ無効だが向こうもやっておるし、王族とのいざこざをこの値段で済ませられるなら安いだろう。ま、その前に払わずに置いておいて、値段が膨れ上がるだろうがな」

「向こうが地位を利用するなら、こっちも使わないと不公平ですし? まぁ確実に親が来ると思うので、場を設けますので横から登場します?」

「いいなそれ! 法務に言って、乗り込んできたら小部屋を借りて私も出よう」

 プロテアさんは、もんの凄い笑顔で言っていた。もうシティでハンターやってるモッコリさんみたいな笑顔だ。


「では、今日の揉め事の報告は以上です。失礼します」

「まーまて。座れ」

 腰を少し浮かせたら引き留められ、もう一度座り直した。

「聞いたが、土木部隊がどうのこうの言っていたらしいじゃないか。何人くらい必要だ?」

 えー。それ本気で言っちゃうのか? まだ全然こっちの受け入れ体勢整ってないよ。


「業務との併用は無理ですし、まだこちらに教えられるだけの設備も知識も少ないので、やるなら隊長クラスになる数名の育成をしつつ、普段は任せる形になると思います。ですのでそれからですね。道路の整備や森林伐採、新たな道を拓く、河川を整える。人数は多ければ多いほどいいのですが、最低でも百人以上。最悪戦闘はしないので、制御できるなら軽犯罪者の服役中の業務にし、刑期が終わったらそのまま別な組織を作ってそちらに就職させて、国営の業者ってのを考えています」

 俺は先ほどとは違う、真面目な雰囲気と顔で言うと、プロテアさんも義父と言うよりは、王という雰囲気で聞いていた。


「……そうか。なら準備ができたなら言ってくれ。数名ほどプライドの低い、使い勝手の良い爵位持ちの子供の候補を作っておく。ある程度の地位がないと下は言う事を聞かないからな。ニワトコにとってはやりにくいだろうが、その時は上手く使ってくれ。以上だ」

「失礼します」

 俺は今度こそ立ち上がり、報告を終わらせた。



 そして執務室に戻り、プレートランマーの設計図っぽい物の続きを描く。

 四角い鉄板の四方を緩やかに曲げ、普段エンジンの乗っている場所に重りを乗せ、耐振の為に自由に動く取っ手を付けて、振動障害系の緩和ができるようにしておく。

 重心は低く、前方の丸い部分が振動するだけで前に進むはずだ。

 そして鉄製の大きなテーブルに、鍋を乗せた絵を描き、鍋との間に加熱用の魔法陣が置ける、大きなホットプレートっぽい絵も描いた。

 荷馬車に乗せると、木材でやばそうだし、足は必要だと思うよ。

 これでアスファルトの加熱もできるので、施工は簡単になり、プレートランマーで表面や下地を平らにできる。

 てか、軸に少し芯からずらした重りを付けて、回転させれば振動するんだし、半円の重りを入れた筒を前方に付ければ動くはずなんだよな。


「マジックアイテム科のアレ(・・)で、これが作れるんだ。本当は魔法って、科学との互換性って高い? ガソリンじゃなくて、個人の魔力消費で済むから、魔力切れの頃に交代すれば振動障害も押さえられそうだし。問題は魔力消費量だけど」

 そう呟くとドアがノックされたので、返事をするとアニタさんがお茶を持って入ってきた。


「お茶をお持ちしましたので、休息してはいかがでしょうか?」

「ちょうどこれは終わったので。区切りが良いからもらおうかな」

 俺は執務机からテーブルに移動し、ソファーに座ってお茶を一口含んだ。うん、良い香りだ。なんの葉っぱか知らないけど。


「で、ニワトコ様は、ああいうのはお使いにならないのですか?」

「ああいうのとは?」

「その……。マジックアイテム科の……」

 アニタさんは、少しだけ恥ずかしそうに言った。一応羞恥心はあるようだ。


「あー。使ってもいいんですけど、俺には魔力自体がないからね。ただの動かない棒になるかな? ってか元々ヒステリー……。感情を抑えられなくて、興奮状態になっている女性用の医療器具として、表に出始めてから結構目にする様になったと聞いたな」

「医療器具……ですか……?」

「だから俺は、別に持ってても気にしないし、作るのも当たり前だと思うんだよね。恥ずかしいとも思ってないかなー。けど周りがどう思うかわからないから、普通の寝室なら隠しておいた方が無難だろうね。あそこは研究室だし、あってもおかしくはないでしょう? アレからコレが作れますので、収穫は大きかったのは確かかな」

 俺は立ち上がって、さっき描いた図面を取ってアニタさんに見せる。


「振動と発熱だけでここまで!?」

「えぇ。この整地用のは、向こうにあった道具なので簡単でした。問題はそこの回転する部分と重さで、消費魔力と値段かな。発熱の方は値段が低ければ、一般家庭にあってもおかしくはない物だし、大抵どこの家にもあった……。けどこっちじゃ普及してないって事は、高いって事だよね……」

 俺はため息を吐き、ホットプレート的な? 物もなかったので言っておく。


「まぁ今まで見た事がないので、覚悟はしてますけどねー」

 そしてカップを持ってソファーに寄りかかり、上を向きながらもう一度ため息を吐く。

「最悪一台だけの導入で、様子見かな。楽になるなら随時購入で」

 から笑いをしてから体を戻し、お茶を飲んで焼き菓子を口に運ぶ。うん、今日も美味い。



「で、またあの馬鹿が突っかかってきたわけ?」

「そうそう、参っちゃうよ」

 夕食後、入浴前に魔法学校の話題になったので、今日の出来事を簡単に説明したら、ロディーが呆れたように声を出した。

「無知って怖いわね」

「知らなければ何でも許されると思ったら、無知は何やっても罰則されない事になる。だからちょっとだけ痛い目を見てもらうことにしたけど……。家から追い出されればよし。この分を取り返そうと、領民に重税を課すなら親バカを通り越して、ただの守銭奴。その場合は何かしら義父さんが対策はするでしょ」


「んー。で、アニタはニワトコの裸エプロンを見たのよね?」

「なんでいきなりそこに飛ぶの? ねぇ?」

「ちょっと気になって」

「後ろを歩いてたから、尻までしっかり見てると思うぞ?」

 そう言ったらロディーが口元に手を持って行き、何かを考えてる様な顔つきになった。


「私も見たいから着て」

 そう言ってクローゼットを漁り、町娘風の服装で付けるエプロンを突き出してきた。

「冗談、じゃなさそうだね」

 まだ風呂まで時間があるので俺は全裸になり、エプロンを付けて、水差しが置いてあるトレイを持って、給仕みたいな感じになった。


「お嬢様、お茶と焼き菓子です」

 そしてそっちの店風に一芝居したら、大声で指をさして笑われたので、トレイとソーサーを持って年末の一発芸風に、エプロンをはずして裸踊りをしたり、イスに座って脚を組み、見えてませんよ? とかしたら、お腹を抱えて笑い出し、何事かと思ったのか、ティカさんとアニタさんが入ってきた。

 ティカさんは能面の様な顔になり、アニタさんは笑いを必死にこらえているのか、スカートの上から太股の辺りを、腕がプルプルするくらい思い切りつねっていた。


「ニワトコ様。ロディア様。そこに座って下さい」

 ティカさんの威圧感のある超笑顔で言われ、俺は股間をわざと小さいソーサーで隠したまま正座し、ロディーはベッドに座った。

 そして凄く怒られた。

 王族がどうのこうの。寝室でも節度あるどうのこうの。やって良い事と悪い事がどうのこうの。

 その後ろで、アニタさんが更に笑いをこらえる為か、ティカさんに見えない場所で頬を思い切りつねっていた。

 年末の酔った勢い隠し芸は、ごく一部の人にだけ大不評に終わった。国境線の砦でも受けてたけど、ここじゃ色々無謀すぎたわ……。


「ニワトコの、セクシーな裸エプロンが見たかっただけなのに……」

「少しふざけただけだったのに……」

 俺は部屋着に着替え、お互いがベッドに座って、ため息混じりに呟いた。

「王族だけど、身内ならよくない?」

「問題ないと思うわよ?」

「だよね……」

 そして俺は思いきりため息を吐き、頭を掻いた。


「まぁ仕方がない。今度からやらなければ良いだけだ」

「夜に私がしてあげようか?」

 ロディーがニコニコと、少しだけ蠱惑的に言ってきた。

「ああいうのはバインバインな女性がやるから良いのであって、ロディーはだ――」

 そこまで言ったら枕が飛んできた。

 けどやっぱり夜にしてもらった。

 胸に貴賎なし! 裸エプロンは男の浪漫!

接骨木は2.5枚目です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 肩こりとかほんとに効くんだから教えてあげようよw
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