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第12話 酔ってなくても年末の隠し芸ってできるよね? 前編

分けるかどうか悩みましたが、分けました。

後半の方が少し短いです。

 翌日。もう一度魔法学校に行くと、校長が頭を押さえて口を開けていた。また来たのかって感じだな。

 仕方ないじゃないか。マジックアイテムとか見たいんだし。最前線にそんな便利な物はなかったさ。


「すみませんね。書いた物が燃やされたので、朝一での訪問で昨日の分を取り戻さないと。お忙しかったですか?」

「い、いえ。そんな事はございません」

 どう見ても無理矢理笑顔を作っているのがバレバレだ。本当にごめんなさい。

「図書室からの持ち出し厳禁ですからね。例え王族でも。いやー仕方がないよなー。貴賓室とかに持ち込めないもんなー」


「あの、ロディア様は今日はいらっしゃらないので?」

「えぇ、執務がありますので」

 そう言うと校長が軽く安堵の息を吐いた。一安心ってところか? こっちは脅したけど、ロディアは殴ったしな。職員会議的なので問題になったんだろう。

「では、今日も図書室に籠もらせていただきます」

 そう言って立ち上がり、俺とトニーさん、アニタさんで図書室に向かった。


「昨日と同じ物でよろしいですか?」

「そうだね。それでお願い」

 そう言うと、トニーさんは昨日、本を取った棚に歩いていった。

「何か手伝える事はございますか?」

「……ないかな? 暇だとは思うけど、読書をしているか、昨日のガキとかが来たら、教えてくれるだけでいいよ」

「わかりました。読書は頭が痛くなりますので、側で待機させていただきます」

 アニタさんは結構アホの子だった……。

「悪いね。付き合わせちゃって」

「いえ。比較的安全な校内という場所で護衛ができるので、普段より気が楽なのでお気遣いなく。口うるさいティカ様もいませんので」

「そう言ってくれるならうれしいね。俺だけだったらそのくらいの対応でいいよ。堅苦しいのは嫌いでね」

「お心遣いありがとうございます」


「アニタ、いくらご本人からの申し出でも、一定のラインは越えないでくれよ?」

「わかっていますよ。砕けるのはこの程度までと決めています」

「別に俺は気にしませんけどね。けど、打ち合わせ通りお願いしますね」

 トニーさんが本を持ってきてくれたので、早速燃やされた分をさっさと終わらせる。だいたいのページの場所は覚えているので、ある意味早いな。



 そしてまたサボリなのか、昨日のビバーナムと取り巻き達がやってきたので、アニタさんが小声で教えてくれた。

「てめぇ! 懲りずにまた来やがったのか!」

 とりあえずこういうのは、あまりかまわないのに限る。ってか鼻が治ってるな。回復魔法で治るのか? それともポーションを鼻にぶっかけたか、鼻から吸ったかだな。


「おい、無視かよこの腰抜け野郎」

「俺はお前と違って忙しいんだよ。悪いな、今日はかまってやれなくて。お友達とそこの日当たりの良い場所でお喋りでもしててくれ」

 俺は顔を合わせず、とりあえず軽く流し気味に言い、書物の模写を続けるが軽く頭に衝撃があり、大量のインクが流れてきたので、急いで学校の書物の回避を優先させた。

 多分俺の頭でインク壷を割ったな?


「俺はお前みたく暇じゃないんだよ。それとこれは迷い人の服を似た素材で作らせた物で、とりあえず普通の服じゃない事なのは確かだ。昨日のはお前に燃やされたから、仕方なく似たようなのを着ているが、二着分の料金はお前に請求する」

 インクをしたたらせながら言い、少しだけ睨みつけておく。


「はん! そんなもん着てるのが悪ぃんだよ。俺にはかんけぇねぇよ。お前がたまたまそこにいて、たまたまその服を着てただけだろ」

「お子様的な自分理論をありがとう。ならたまたまインク壷を俺の頭で割った生徒に、たまたま責任をとってもらうとする。まぁ、服代と迷惑料と慰謝料だな。金額は大金貨一枚な。払わない時期が延びれば延びるほど、利息を付けよう。悪質だからこっちも悪質で行くぞ? 十日で一割でいいな? とりあえず名前は書かなそうだから拇印ね。今日の日付は……っと」


 どこかの闇金風の暴利だが、嫌がらせ的にはこのくらいしないと無理だ。

「二人を押さえて。俺はこいつを押さえる」

 そう言った瞬間に、トニーさんとアニタさんが取り巻きの二人を押さえ、事前に用意しておいた紙を、油紙に包んでおいたので三枚出して、ビバーナムの手首を掴んだ。

「おい馬鹿、やめろ! 放せ!」

「あ、偶然にもインクが俺の服に付いてるじゃないか」


 殴られながらも掴んだ手の指を、無理矢理開かせて服に擦り付け、紙に押しつけてから離してやる。

「無効だこんなもん!」

「おかしいな? お前の親も私兵を使って人を部屋に閉じこめ、名前を書くまで返さないとかって情報を聞いたんだが……。似たような事をやっているのに、やられたら無効か。ふーん。まぁ俺には関係ないね(・・・・・・・・)。とりあえず一枚は俺、もう一枚は城の法務のところに預けるから、バレたくなければお前が金を払いに来るか、払えないなら泣きついて親を呼べ。偉い貴族なら痛くない金額だろう? じゃ、俺はまだ視察が残ってるけど、図書室はまた後日来るわ」

 俺はもう一枚の紙をビバーナムの前で落とし、背を向けて立ち去る。

「ふざけんじゃねぇぞてめぇ!」

「あ、コレ持ってて」


 ビバーナムは吠えたが、とりあえず無視してトニーさんに書き写したメモと書類を渡して図書室を出ると、廊下まで追ってきて手の平をこちらに向けているので、何もしないで立っていたら大きめの炎が飛んできたので、それを股間を押さえ、目をつぶりながら全身で受ける。

「誰が喜ぶんだ? こんなおっさんの裸なんて? それとも服しか燃やせない。エロ攻撃魔法なのか? 思春期だねぇ。そうやって女子の服も――」

「御髪が!」

 会話の途中で頭にアニタさんのエプロンがかけられ、ワシャワシャされた。アフロじゃなくて、チリチリに燃えてたらしい。

「少し髪が短くなったな。とりあえずやり返す機会があったら、同じ事するから」

 そう言って頭からエプロンを取り、腰に巻いて裸エプロンで貴賓室まで行く事にした。



「もう少しで終わったんだけどなー。もう模写は諦めるか」

 井戸を借り、インクを洗い流してからもう一度別なスーツを着て、ネクタイを締めながらため息混じりで呟く。

「少し馬鹿にされすぎじゃないですかね? そろそろ色々な問題も出てくると思うのですが」

「まだ正式じゃないしね。今はこういうやり方しかできないんだわ。けど十日で一割は暴利だったかな?」


「確かに暴利だと思います。ですがあのクソガキには良い薬だと思いますよ」

「ははは、アニタさんは辛辣だね」

「ニワトコ様のお言葉がなければ、顎の骨を砕いていたところです」

「流石元騎士団、言葉に重みがあるね。んじゃ軽くマジックアイテム科でも見て帰りますか。学食とかもの凄く気になるけど、毒殺を警戒して食事には気を付けるように言われてるし」

 そう言って貴賓室のドアを開けてもらい、トニーさんの案内でマジックアイテム科に向かった。



「戦争とエロは技術を飛躍的に進歩させる……。どこかで聞いた事があるんだよなぁ……」

 俺は今、手にモザイクがかかりそうな、振動している握りやすい棒状の物を持って呟いた。素材は何かの角なのか、ツヤツヤとした質感で妙な生暖かさがある。

 幸いな事に変なシミはなく未使用だ。


「いや、その。知的好奇心と言いますか、もしかしたらコレとコレでいけるんじゃないかと思いましてね?」

 そして目の前には、これを作ったであろう女性が恥ずかしげもなく立っている。この人がマジックアイテム科の研究者っぽい。

 ってかタイミングが最悪な時に来ちゃったな。

「まぁいけるのではなく、イけるだと思うんですよね。別に恥ずかしい事ではないと思いますよ? とりあえず、これはどういう原理で動いてるんですか?」

 とりあえず色々無視して、説明を求めた。


「この様に、魔法言語と魔法陣を描いた鉄っぽい物に、魔力を通すとですね」

 机にあった正方形の鉄に、指で触れて少し光ったと思ったら小さな火が出た。

「魔力がないと使えないって認識で?」

「はい。魔法が使えなくても、少なくとも人には魔力はありますので」


「俺にはないのでその感覚はわかりませんが、便利な事を補佐する感じでしょうか?」

「はい。ですが専用のインクが高いので、この様な物を作っても、皆はマッチと竈を使いますけどね」

「コストの問題か……」

 安いライターじゃなくて、メーカー品のオイルを使うお高いライターを持ち歩く感じか?


「えぇ、これは説明用に作りましたが、紙だって何だっていいんですよ。あとは魔力伝導率や、質量で消費魔力が変わります」

「……大きければ大きいほど、消費魔力が増え、更に伝導率が悪いともっと増えると」

「そのような認識で問題ありません」

 女性がそう説明してくれるが、手に持っている棒状の物はまだ振動を続けているので、うるさくない様に机の上にあった、タオルに置いた。


「時間差で発動とか可能ですか?」

「もちろんです、魔力を込めてから一拍置いてとか、太陽が少し傾くくらいとか」

「そうですか……。で、コレは止められるんですか?」

「はい、止められますよ?」

 これは……。兵器開発部に言った方がいいのだろうか? けどマジックアイテムの存在くらいは知ってるだろうし、求められるまで横から口を出すのはやめておこう。

 灯油に時限式発火装置とかマジでやばい。


「まぁ、ここに振動と発熱だか保温があるので、俺の欲しい物は揃ってますね。後日設計図を持って伺いますので、かかる魔力消費量や金額を算出してくれますか?」

 俺はタオルの上で振動している棒を指し、一応見積もり的な物を頼んだ。

「はい、そういうのは得意なので問題ありません。よろしくお願いします!」

 女性は笑顔で答えてくれたので、一応こちらも笑顔で返しておいた。視界の隅にある物の違和感がハンパないけどな!

 ってか最後まで気にしてる様子はなかったな。研究者してんなー。


「……あの、気まずくなかったんですか?」

 アニタさんが、貴賓室に戻る時にそんな事を言ってきた。まぁ同じ女性だし、仕方はないと思う。

「女性だって性欲はありますし、向こうにも似たような道具は溢れてました。それこそ季節が二千回以上巡る前の遺跡から、角みたいな物を丁寧に削ってできた物が出て来た事だってあるんです。エロは生命の源です。むしろアレで夫婦のマンネリを解消できるなら、どんどん低コストで作って欲しいくらいです。まぁ、この辺りは考え方とか文化の違いでしょうけど」

 そんな事を話しながら歩き、貴賓室にある道具をまとめ、魔法学校を出て自分の執務室に戻った。

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