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第11話 不良ってどこにでもいるよね 前編

「これなら問題はなさそうだ」

 ヘリコニア兄さんから翌日にはそんな評価をもらい、早速行動に移そうと思ったが、見積もりとかも届いてないし、長さもわからないので風車ができるまで保留にしておく。

 なので特にやる事が思いつかないのでツナギに着替え、緑化計画のゴミ捨て所に行く事にした。

 一応インターネットで得た知識だけど、本当かどうか自分でも調べないと。言った手前ね? 多分自然のコンポスト的な物になるんだと思うけど……。


「防壁の外に行くのにも、馬車に護衛かー。本当、ちょっとそこまでー。って気軽に行けないのが辛い」

「諦めて下さい」

 同行しているトニーさんから笑顔で言われ、なぜか俺に送られてくる、兵器開発部の報告書に一応目を通す。

「なんで俺なんだよ……。ってか、正直そっちだけでやって欲しいんだよなぁ」

「知識を持っているからではないのでしょうか? 他国より優位に立てれば被害が少ないですし」


「まぁ、そうなんだけどね。利益と損失を天秤に掛け、損失の方が多いと思わせるのが抑止。けどその天秤に損失を乗せないで、色々な理由で仕掛けてくる場合があるから、戦争は本当困る……」

 宗教やべー。の一言で済ませられるしなー。今の国(フローライト)前の国(ミニウム)は同一宗教っぽいからまだ安心だけど。


「誇りとか、価値観の違いですか?」

「そう……。なのかな? 勝ち負けじゃなく、バカにされたからやる。このままじゃ腹の虫が収まらない。被害を度外視してでも損害を与えて、自分自身がスッキリしたい。どうせ死ぬのは兵士で最後に自分だ。負けた時の事なんか考えない。こういうのがたまにあるから本当に戦争は怖い」

 昔の日本とかも、確かそんなので一族が滅んだりとかあったなー。鎌倉時代とか。


「元の世界でも、やはりそう言う事が?」

「えぇ。呼び捨てにされて気にくわなかったとか、価値観の押しつけとか。で、なんでフローライトとミニウムは戦争に? 詳しく知らないんだよね。砦にいて上の言う事聞いてたし」

「呼び捨てって……。ミニウムの、とある貴族の持っている兵が、我々フローライトの兵士が気に入らないという理由で、本当に弓を引いた事から始まり、国がその貴族の事をかばったのか、嘘の報告を鵜呑みにしたのかはわかりませんが、事実関係を確認せずに特使を送り込んで来て、こちらが悪いと一方的に言いたい事をぶちまけたので、放っておいたのです」

 よくある話っぽいな。前線とかの報告なんかの事実関係とか、詳しく調べられないだろうし。


「ですが国境を越える直前で宣戦布告し、町が一つ占領されましたが、事前に動きを知っていたので、三方向からの進軍で攻めました。その時一番兵士を送り込んだ、大きな主要道路上にあった砦にいたのが、ニワトコ様です」

「……俺、フローライトに引き取られて正解だったわ。あの国に保護されてたから、一応義理があったけど、その話を聞いて一気にどうでも良くなった。そんな理由で国家間の戦争かよ。その兵士か貴族の首を持ってきて、謝れば国土とか減らさずに済んだのに」

「フローライトの金山が欲しかったとか、色々噂がありますけど、一番は国王が感情的になりやすい人だったと聞いています」


「まさに腹の虫が収まらないって奴か。その貴族にどんなある事ない事吹き込まれたのやら……。千人規模で国境付近をうろつかれたとか、って言われたとか?」

「わかりません。けど損失分のお金とか遺族への賠償金、その貴族と特使の首は持ってこさせたので、しばらくは財政難で向こうは静かになるでしょうね。商人に偽装している組織の人間の噂ですけど」


「諜報とか防諜ってめんどくせぇー。できる人間に丸投げが一番だわー。関わりたくもない」

「けど、シルベスター様は組織の出身ですよ? ある意味結構関わっているかと」

「だろうね。動きとか気配の消し方が執事のソレじゃないし。人としてはいいけど、組織的には関わりたくないってのが本音。そういうの面倒そうだし」



 そんな事を話している間にゴミを捨てている場所に着き、腐っているゴミが悪臭を放ち、少しスコップを入れて天地替えをしてみると、結構土っぽくなっている。最初期に捨てた場所なんかは、もう土と言っても良いくらいだ。

「うぷっ。本当酷い臭いですね」

 トニーさんは前腕で鼻と口を押さえ、顔をゆがませている。俺だって鼻をつまみたいさ……。


「まぁ、腐ったゴミだから。この厚みなら、麦みたいな物なら十分に根は張れるなぁ」

「あら、ニワトコさん。どうしたんですか?」

 斜めに生えてた木材を雑に抜き、腐食具合も確認していたら、トレニア姉さんも偶然見に来たらしく、声をかけられた。


 あぁ、馬車を訓練の邪魔にならない場所に停めたからな。そこから歩いてきたのか。

「言った手前、本当にどうなってるかの確認ですね。知識しかありませんでしたし」

 そう言って木材を生ゴミに雑に刺し直し、とりあえず話をする事にした。

「ちゃんと土になっててくれて安心しました」

 一応人の目があるので、話し方はよそ行きの物になっている。


「そうですねー。これなら近隣の村から、ゴミを運ばせても良いかもしれません。ただ新しく村を作るとなると、木材の運搬とかもありますので、その辺も考えどころなんですけどね」

 トレニア姉さんは、バッグからシャベルを取り出し、ゴミの様子を見ながらメモを取っており、下の方の土になった部分の臭いも嗅いでいる。


「もう下の方はほとんど土ですね。悪臭もしませんし、腐敗も進めば腐葉土の様な扱いができます。小さな虫も既にいます。では、この上に乗せて下さい」

 そう言って、兵士が青々とした草をゴミの上に雑に捨てた。なんでそんなに大量の草を抱えてるんだろうと思っていたが、そういう事か。


「前に言われた緑肥のつもりです。コレもゴミと接している部分から腐って、やがて土になるんですよね? 麦の収穫後とかは、藁なんか飼い葉みたいな餌になるので、乾燥してない物で一応試しておかないと」

「ですね。近いならこまめに見ておくべきですよ。何かの芽も出てますし」

 なんかひょこっと、小さな新芽っぽい物も見えるので指をさす。


「問題はそこまでゴミが出るか。なんですよねぇ……。兵士の食堂ですから、百人単位での料理をしますが、各家庭単位だと、そこまで出ないかもしれません。なので少し遠くても、荷馬車でゴミを運ばせる案も出してます」


「畑というか、踏み荒らされた場所をどこまで元に戻すかにもよりますからね。それなら、捨てに行く人の手間賃だけで済みます」

「無理矢理ゴミを出す訳にも行きませんし。馬車で半日の場所にある町や村へ呼びかけが必要そうですね」

「やっぱり多少は費用がかかりますか」

「最初の案よりは、ずっと少ないですよ」

 その後は雑談になり、長話になるとトニーさんやトレニア姉さんの付き人に迷惑がかかるので、話題は少しだけだった。



「お姉ちゃんと会ったんだ、珍しー。執務室にいる時くらいしか捕まらないのに」

「へー。結構あちこち動いてるんだ。ってか捕まらないくらい移動が多いって事だよなぁ……」

 いつもの様に執務室で書類を書いていると、ロディーがくつろいでいるので、自然とそう言う話題になる。

「薬草の群生地から土を採取してきたり、専用の菜園? 実験場? で、成長の違いを確認したり。なんか成長の早い奴とか、大きい奴の花粉とか使って掛け合わせたり」


 まんまやってる事が品種改良で、この世界だったら多分変わり者扱いだな。もうされてそうだけど。

「もしかしたら、研究室か菜園で待機してれば会えそう」

「確率は高いらしいよ。夢は、山奥にある珍しい植物の採取だって。護衛とか身分の問題で無理っぽいけど」

 プラントハンターとかかな? 蘭科の植物とか、シャーマンに代々伝わる薬とか食いつきよさそう。



「そう言えば、囚人の鉱山って何が採れるのか調べてなかったわ」

 執務室に戻り、ある程度書き物をしてから、ふと思い出した。

「金鉱石だった気がするわよ」

 独り言の様に呟き、立ち上がって資料に指をかけたところでロディーが答えをくれたが、採掘量とかも見たいので、とりあえず持って執務机に戻る。


「悪いね。せっかく教えてくれたけど、他にも色々と調べたいんだ」

「なら仕方ないわね」

「精錬所というか、炉がなかったからなぁ……。ってか木が生えてなかったな。あの辺りの歴史って知ってる?」

「最初は森があったけど、逃げ出した囚人が潜んじゃうから、平地のは結構前に切り尽くしたって聞いてるわ」

「どうりで……。囚人に精錬工程をやらせようにも燃料がないんじゃ無理か。だから森と鉱山のある中間辺りに炉を作ってるんだな。運搬とかの都合上燃料があるところの方が便利なんだけどなぁ」


 採れるのが鉄鉱石で、石炭とかだと硫黄がどうのこうのって聞いたし、コークスがあったらタールが副産物で出たのにな……。ってか戦争の理由は絶対この鉱山だな……。

 そういや掘らせるだけ掘らせて、加工は別の場所だった? 細かく砕く場所とか見てねぇし。

 そもそもどこまで人力でやってるんだ? 細かく粉砕して、大量の水で選別してる様子と言うより、下流の海は綺麗だったし、あの近辺が泥でぐちゃぐちゃになってなかった。

 魔法か? その辺の秘密とか気になる。


「どうしたの? 真剣な顔して黙っちゃって」

「あぁ。炉があるのに金を作る途中の工程がないから、少し悩んでたところ。金鉱脈じゃない石とか、舗装で使うからもらってるけど、破砕とかの作業がなかったし」

「土属性が得意な魔法使いが、その辺やっちゃってるから、砕くのは炉の近くよ。選別もしてるし」

「へー。炉の方から細かい石をもらってくれば良かった。で、魔導書とか魔法入門の本って城にない?」

 土属性があるなら、整地に使えるかもしれないし。


「ここにはないわ。産まれてから季節が十回巡ったら教会で調べて、適性があれば魔法学校に推薦状が書かれるの。うちの国では奨学金とかも出してるから、誰でも入学はできる。そしてある程度になったら、国営の機関に就職。で、給金から少しずつ返済ね」

「へー。少しでも使えればエリートコースか。最初に何も言われなかったし、戦闘訓練やらされたから多分俺には使えないな。後で行ってみるか」

「そうね」

 俺は卓上ベルで誰かを呼ぶと、アニタさんが来たので、とりあえず魔法学校への視察予定を入れてもらった。

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[気になる点] >「あら、ニワトコさん。どうしたんですか?」 >斜めに生えてた木材を雑に抜き、腐食具合も確認していたら、トレニア姉さんも偶然見に来たらしく、声をかけられた。 > あぁ、馬車を訓練の邪魔…
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