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零
冬ですが、夏のお話。
米津玄師×DAOKOさんの「打ち上げ花火」を聴いて、ふと書きたくなりました。
夏の夜空に、大輪の花が開いた。
それは色も形も様々で、真っ暗になった夜の世界を、明るく照らす。
パッと開いてすぐに消える。
それでも次々と上がる花火は、まるで夏の始まりを祝っているかのように宵闇を染め上げていた。
その儚い打ち上げ花火を見る度に、僕の脳裏に、彼女の顔が浮かんでは消える。
「遅いなぁ。早く来いよぉ」
誘ってきたのは彼女の方だ。僕はあまり乗り気じゃなかったのに、彼女はお構いなしだった。
ただそれでも、彼女を待ちながら1人で見上げる一瞬の煌めきと、風にのって鼻腔のくすぐる火薬の匂いは、不思議と心地よかった。