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77 いつものお昼寝

「たまには外で寝転がるのも悪くないわね」


 とある天気のいい日の昼下がり。

 アイリスは教会の外でプニガミを枕にして寝転がっていた。


「アイリスお姉ちゃん。せっかくベッドから出てきたのに、どうしてまた寝てるのー? 一緒に遊ぼうよー」


「うーん……じゃあお昼寝遊びしましょう」


「わーい、お昼寝遊びだー」


 イクリプスは嬉しそうにアイリスの隣に寝転ぶ。

 しかし。


「ひまー。面白くなーい。っていうか、これ遊びじゃないよー?」


 すぐに飽きてしまったようだ。


「ねえ、プニガミ。アイリスお姉ちゃんは起きないみたいだから、二人で丘の下に行って遊ぼうよー」


「ぷにー」


 アイリスの枕になっていたはずのプニガミだが、呼ばれた途端、嬉しそうにイクリプスに飛びついていった。

 枕を失ったアイリスは、草の上に後頭部を落としてしまう。


「ちょっとプニガミ。酷いじゃないの。下に石とかあったらどうするのよ」


「ぷににー」


「あ。そこはちゃんと確認してたんだ。ありがと」


「ぷーに」


 プニガミは「どういたしまして」と自慢げだ。

 そんなプニガミの上にイクリプスが「んしょ、んしょ」と上って座り込む。


「アイリスお姉ちゃんも一緒に遊びに行こー?」


「そうねぇ……」


 お昼寝に適したポカポカ陽気ではある。

 しかし、もう十分にゴロゴロしたので、そろそろ起きるのも悪くない。


「イクリプスがそんなに言うなら、私も行くわ」


 アイリスはむくりと起き上がる。

 イクリプスは「わーい」と喜んでくれた。

 プニガミも「ぷにーん」と嬉しそうだ。


 そして二人と一匹で丘を下っていく。

 すると、丁度そこにミュリエルにシェリル、マリオンにジェシカが上ってきて、丘の途中で鉢合わせになった。


「のじゃー。迎えに行かなくても降りてくるところじゃったか」


「ま、ずっと寝てるだけってのも芸がないしね。皆はどうしたの?」


「どうもこうも。お昼をすぎてもアイリスが顔を見せないから、こうして見に来てあげたんじゃない」


 と、マリオンは腰に手を当て、呆れたように言う。


「そうなんだ。でも、私がお昼になっても起きないのは、いつものことじゃない」


「威張って言うことじゃないでしょ! 昨日だって夕方になってやっと起きて……た、たまには私だってあんたと遊びたいのに……」


 マリオンはモゴモゴと声を小さくしながら呟く。何やら耳まで真っ赤にしていた。

 それを見たアイリスは、自分も顔が熱くなっていくのを感じる。

 二人してうつむいて、モジモジしてしまう。


「アイリス様とマリオンさんは、本当に仲良しなんですねぇ」


 シェリルは笑いながら、しみじみと言った。


「イクリプス知ってるよー。お互いのことが大好きだと、その二人は結婚するんだよー」


 それを聞いたアイリスとマリオンは、飛び上がるほど驚いた。むしろ二人して同時に跳びはねてしまった。


「け、結婚!?」


「な、何で私とアイリスが結婚を……!」


「あれー? 違うのー? じゃあ、私もアイリスお姉ちゃんのこと大好きだから、私が結婚するー」


 イクリプスはプニガミから降りて、アイリスにムギュッと抱きついてきた。

 可愛い。

 なでなで。


「ありがとう、イクリプス。でも私たち姉妹だから結婚はできないのよ。ほら、結婚しなくても家族でしょ?」


「そっかー。ざんねーん。でも家族だー。わーい」


「ぷにー?」


「もちろん、プニガミも家族よ。一緒に住んでるんだもの」


「ぷににー」


 プニガミも「やったー」とぷにぷに跳びはねる。


「すると妾も教会に住んでいるからアイリスたちの家族なのじゃ。いや、あの教会はもともと妾を祭るために作られたのじゃから、妾が家長なのじゃ」


「ミュリエルが一番偉いんだー」


「そうなのじゃー。じゃからプニガミをぷにぷにさせるのじゃ」


「いいよー。どうぞー」


「のじゃー!」


 ミュリエルは嬉しそうに叫ぶと、プニガミに覆い被さった。


「ぷにぷにぃ」


 全身をもみくちゃにされるプニガミだが、嫌がっている様子はなく、むしろ気持ちよさそうだ。


「プニガミはぷにぷにな上にスベスベなのじゃ。シンディーがペロペロしたくなる気持ちも分かるのじゃ。わ、妾もペロペロするのじゃぁ!」


「ぷ、ぷにに!?」


 しかしペロペロと聞いた瞬間、プニガミは嫌そうな声を上げ、そしてミュリエルを振り落としてしまった。

 そして地面に転がるミュリエルにのしかかり、その上でプニプニと跳びはねる。


「のじゃ! プニガミに襲われてしまったのじゃ。誰か助けるのじゃ!」


 ミュリエルはジタバタともがいてプニガミをどかそうとする。が、プニガミの体が柔らかすぎて上手くいかないようだ。


「ふふ。それにしても家族と言えば、お父さんは今頃、どこで何をしているのかしら?」


 ジェシカが頬に手を当てながら呟いた。


「そう言えば、前に旅立ってから二年くらい経ったわね。実はドラゴンの里に帰ってきてたりして」


 と、マリオンが答える。


「お父さんって、マリオンのお父さんのこと?」


「そうそう。お父さんったら旅好きのドラゴンでね。私と結婚してからも、よく一人で旅に出ちゃうのよー。平気で何年も留守にしたりして。だからこそ、私たちもこうしてドラゴンの里を留守にできるんだけどね」


 なるほど、そういうことだったのか、とアイリスは納得する。

 今までマリオンの父親の話が出てこなかったので、ドラゴンは女だけでも子供を産めるのかなぁ、とか思ったりしていた。


「そろそろ一度、ドラゴンの里に帰った方がいいかもしれないわねー」


「そうね。お父さんが帰ってきてなかったとしても、たまに家を掃除しておかなきゃ」


 ドラゴンの親子は里帰りのことを話し合う。


「ドラゴンの里って、ドラゴンばかり住んでるんですよね。私、行ってみたいです! 帰るときは私も連れて行ってください!」


 シェリルが手を上げて、そんなことを言い出した。


「いいわよー。せっかくだから、シルバーライト男爵領とドラゴンの里で、友好条約とか結べばいいんじゃないかしら」


「それはいい考えですね! ドラゴンと友好条約を結んだ領主なんて、きっと他にいませんよ。王都に行ったとき自慢できます!」


 確かにそんな領主はいないだろう。

 この村にずっといると忘れがちになるが、ドラゴン二匹に守護神一柱、魔王の娘が二人に、スライム相撲の優勝スライム一匹と、とんでもなく濃い面子が揃っているのだ。

 その全員と仲良しこよしのシェリルは、人類最強の人脈の持ち主かも知れない。


「マリオンとアイリスちゃんが結婚するなら、お父さんにちゃんと紹介しておかなきゃねー。うふふ」


「ちょ、ちょっとお母さんまで何言ってるの!」


「そ、そうよ! 私たち、女の子同士だし……!」


 マリオンとアイリスは、至極当然の抗議をする。

 が。


「あら。私は気にしないわよー。だって二人が結婚したら、アイリスちゃんが義理の娘になるんでしょぅ? イクリプスちゃんとも親戚になれるし。いいことだらけじゃない」


 よく分からない理屈で返されてしまった。

 そんなにいいことだらけだろうか?

 何となく、そんな気がしてきた。


「えっと……どうしよっかマリオン……」


「どうしようって……どうしよう……」


 アイリスとマリオンは見つめ合い、そわそわ。


 いくら親の許しが出たからって、女の子同士で結婚なんて。

 第一、アイリスはマリオンを大好きだけど、それはあくまで友達としてであって。

 とはいえ、どうしてもということなら結婚もやぶさかではない。


 などとアイリスがぐるぐる考えていると、遠くの空から、大きな魔力が近づいてくるのに気づいた。


「あれー? もしかしてお父様かなー?」


 イクリプスも気がついたようで、その方角を見つめている。

 そして確かに、魔力のパターンが大魔王のそれだった。


 黒いマント。頭から生えた大きな二本の角。人間に例えるなら三十歳手前くらいの美形の男。

 そんな魔族が背中から生えた黒い翼を使い、シルバーライト男爵領に向かって飛んでくる。

 間違いない。

 アイリスとイクリプスの父親、大魔王ベルベレスだ。


 一体、何の用だろう。

 まさか、一向に人類を滅ぼす気のない娘たちに業を煮やし、自ら手を下しに来たのだろうか。

 ならばアイリスは、実の父親と戦わねばならない。


 だが、その割に敵意も殺意も感じなかった。

昨日から投稿を始めた『神竜が普通の人間になるため転生した結果 ~全パラメーターSSSって普通ですよね?~』もよろしくお願いします。

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