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30/78

30 余裕の勝利

 黒い怪物は、アイリスたちに気がつき、三つの頭を向けてきた。

 そして口を開き、三本の光線を放つ。

 それは一本でも村を完全に消滅させられるだけの魔力が込められていた。


「イクリプス。あれを跳ね返すわよ」


「うん。わかったー」


 アイリスとイクリプスは二人で反射結界を張り、三つの光線を受け止める。

 たんに防ぐだけでなく、鏡のように反射して、黒い怪物へと叩き付けた。

 大爆発が巻き起こり、炎で怪物の姿が見えなくなる。

 衝撃波が村まで届いたが、それもアイリスとイクリプスで防いでしまう。


「お母さん、私たちで追い打ちをかけるわよ!」


「はいはーい」


 二匹のドラゴンは、同時にドラゴンブレスを吐いた。

 ただでさえ燃えている怪物が、更なる熱量に晒され、苦悶の声を上げた。


「うーん、まだ原型が残ってる。やっぱり強いわね」


「あ、燃えながらこっちに走ってくるー。村に来ちゃ駄目だよー、えーい!」


 イクリプスは超重力を発生させ、怪物の体を地面にめり込ませた。

 これで完全に動きが止まった。

 だが、それでも怪物の体は崩壊しない。

 少しくらいは潰れても良さそうなものだが。


「すごーい。まだ立とうとしてるー」


「イクリプス。足下に重力を発生させるんじゃなくて、あいつの体内に重力を発生させたら?」


「たいなーい? お腹のなかー?」


「そうそう。動いてたら難しいけど、今は止まってるから。内側に圧縮しちゃえば、流石に死ぬでしょ」


「アイリスお姉ちゃん、頭いいー」


「そ、そう? ありがとう……じゃあ、二人でやりましょうか」


「うん、一緒にやるー。怪物をぎゅって潰すー」


 アイリスとイクリプスは手を繋いで、お互いの魔力を混ぜ合わせる。

 そして黒い怪物の体内に、千倍の重力を放つ黒い球体を発生させた。


「グオオオオオオオオオン!」


 怪物は叫ぶ。それが断末魔になった。

 グシャグシャと血をまき散らしながら崩壊し、その血すら内側に吸われていく。

 肉と骨が滅茶苦茶に混ざり、何だか分からないものになっていく。

 やがて限界まで圧縮され、とても密度の高い肉団子になって空中に浮かぶ。


「な、なんつー魔力……姉妹そろって非常識な……」


 マリオンは呆れた声を出す。


「うふふ。やっぱり魔族はこうでなきゃ。忠誠を誓いがいがあるわー」


「お母さん! だから、忠誠なんか誓っちゃ駄目だってば!」


 ドラゴンの親子は、もうすっかりくつろぎモードだ。

 しかし、あんな肉団子を村の近くに放置するわけにはいかない。

 かといって食べるわけにもいかない。変な病気になりそうだ。


「よし。蹴飛ばして宇宙に捨てちゃいましょ」


「私が蹴るー!」


「一人で大丈夫?」


「大丈夫だよー、てやー!」


 イクリプスは肉団子に向かって加速する。

 勢いそのままに、可愛い脚でキック。

 肉団子は空に向かってギューンと飛んでいく。

 そのまま落ちてくることなく、お星様になってしまった。


「イクリプス、凄い。ちゃんと一人で宇宙まで飛ばせたわね」


「あのくらい簡単だよー」


「そっかー。流石は私の妹。なでなで」


「えへへ、なでなでされちゃったー」


 そうやってアイリスがイクリプスを撫で回していると、下の方から、怒鳴り声のようなものが聞こえてくる。

 何だろうと思って見下ろすと、プニガミに乗ったシェリルが草原にいた。


「アイリス様! そんな手の届かない場所でイクリプスちゃんを独占するなんてズルいです! 戦いが終わったなら、帰ってきてイクリプスちゃんを私にも分け与えてください! というか、アイリス様のこともなでなでさせてください!」


「アイリスお姉ちゃん、シェリルが寂しがってるよー?」


「そうね。じゃあ帰りましょうか。マリオン、ジェシカさん、行きましょう」


「私は別にあんたたちのこと、なでなでしたいとか思ってないからね!」


「あら、マリオンったら。じゃあ私がマリオンの分までなでなでするわー」


「え、お母さんズルい!」


 実のところ、さっきの怪物は世界を滅ぼせそうなほど強かったのだが、もはや誰も気にしていない。

 そんなことより、アイリスたちは、だらだらと過ごすことで忙しいのだ。


        ※


「……大魔王様。どうやらまた負けたようです。しかしご安心ください。今回のは寝返りませんでした。ちゃんと死にましたぞ!」


「おお、一歩前進だな! この調子で次も頼むぞ……って、死んで喜ぶなよ! ちゃんと勝てる生物兵器を作れよ!」


「そう無茶を言わないでください。そもそも最初に作ったアイリス様が、どうしてあんなに強いのか私は知らんのですから。偶然上手くいっただけで……あれを超えるのは難しいですなぁ」


「くそ、どこかにお前より頭のいい魔族はいないのか!?」


「これでもクリフォト大陸一の頭脳と呼ばれています」


「魔族の人材不足が深刻すぎる!」


 大魔王は玉座で頭を抱えた。

 しかし、悩んだところでどうにもならないので、今日はもう酒でも飲んで寝ることにした。

書きためが出来るまでしばらくエタります

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