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18 教会に集合

「あ、アイリス様が帰ってきました! アイリス様ー、無事ですかー」


 村に行くと、シェリルが手を振って出迎えてくれた。

 そして一緒に、村人たちも手を振ってくる。


「おお、ドラゴンの姿がないぞ! 倒したのか!?」

「あんなに小さいのにドラゴンを二匹も倒してしまうのか……」

「やはり人間じゃなくて女神様だってのは本当なんだ……」

「神々しい裸だ!」

「全裸万歳!」

「ばんざーい!」


 全員がアイリスに向かって万歳を始めた。

 そのときアイリスは、自分の服がマリオンに燃やされてしまったことを思い出した。

 つまり、とても恥ずかしい姿を衆目に晒しているのだ。


「わぁぁぁっ!」


 恥ずかしさのあまり、アイリスはプニガミを教会へと猛スピードで飛ばす。

 風圧で草が千切れるほどの速度だ。


 そして教会に入り、扉を閉め切る。

 パジャマを着て、プニガミを抱きしめ、布団に潜り込み、頭まで隠れる。


「見られちゃった……皆に全部見られちゃった……」


 アイリスは羞恥心で死にそうになっていた。

 そのとき、教会の扉がドンドンドンと激しく叩かれた。


「アイリス様! 開けてください! 急に引きこもってどうしたんですか!?」


 シェリルの声だった。


「あ、開けないわよ! 私、しばらく教会から出ないから!」


「しばらくってどのくらいですか?」


「私の裸を見た人が全員、寿命で死ぬまで!」


「何十年計画ですか!? もう、変なこと言ってないで開けてくださいよぅ」


「いーやーだー!」


 アイリスが大きな声で叫ぶと、シェリルは大人しくなった。

 意外と諦めがいい。

 ちょっと寂しく思ってしまった。

 だが、今はどんな顔をして会えばいいのか分からない。

 少なくとも一週間は引きこもらないと精神的ダメージが回復しない。


「アイリス様ぁ」


 ところが、突如として布団が剥ぎ取られた。

 そして、開けた視界に飛び込んできたのは、シェリルの顔。


「うわぁっ! え、何で! 扉には結界を張ったのに! どこから入ってきたの!?」


「ふふふー、裏口からです」


 シェリルは澄まし顔で答えた。


「裏口……そこはノーチェックだったわ……」


「アイリス様。寝てばかりいないで、もう少し、自分が住んでいる場所のことくらい知っておきましょうよ」


「正論だわ……シェリルの癖に生意気ね!」


「むむ? とても理不尽なことを言われたような気がします……!」


 シェリルは頬をぷくーと膨らます。

 面白い顔だったが、しかし今は隠れるのが優先だ。

 アイリスはまた布団を被って丸くなる。


「もう、アイリス様ったら。裸を見られたくらいで大げさですね。プニガミ様もそう思いますよね?」


「ぷーに」


「ほら。プニガミ様もこう言っていますよ」


「……人事だと思って適当に……じゃあ聞くけど、シェリルは領民に全裸を見られて平気なの?」


「それはもちろん……は、恥ずかしい!」


 シェリルは悲鳴を上げた。


「ほらー」


「で、ですが……アイリス様は全裸率が多いじゃないですか! 私と初めて会ったときも全裸でしたし! 今更って感じですよ!」


「シェリルとは女同士だからいいの! 領民の中には男の人が沢山いたじゃない……ああ、もうお嫁に行けない……!」


「あれ? アイリス様、お嫁さんになりたいんですか?」


「いや、特には。言ってみただけ……悲壮感が出るかと思って」


「なーんだ。アイリス様がどこかにお嫁に行ってしまわれたら困ってしまいます。ずっとここにいてくださいね。何なら、私のお嫁さんになりますか?」


「だから、女同士だってば……」


「ふふふー、言ってみただけです♪」


 顔を出して覗くと、シェリルがなぜか勝ち誇っていた。

 それを見たアイリスは、布団の中に隠れているのが馬鹿らしくなり、ため息を吐きながら這い出した。


(あれ? これでシェリルの目的達成? つまりシェリルの勝ち? 勝ち誇るのには根拠がある……?)


「た、ただ者じゃないわ!」


 アイリスは戦慄した。


「はい?」


 シェリルは不思議そうに小首をかしげた。


「ぷにぷに」


 そして、お嫁に行くなんて十年早いぞ、とプニガミに言われてしまった。


「大丈夫よ、プニガミ。お嫁さんなんて考えてもいないし、想像もできないから」


「ぷーに」


「あ、プニガミ様は今『よかったよかった』と言っています!」


「違うわよ。『嫁のもらい手がなかったら、お前らまとめて俺がもらってやるぜ』って言ってるのよ」


「ハードボイルドスライム!?」


「ぷにっ!」


「こ、今度は何と……?」


「僕の発言をねつ造するなって」


「ねつ造だったんですか!」


「うん。よかったよかったで合ってたわ」


「むむむ。アイリス様の発言の信頼性が損なわれましたね。次からは何を言われても適当に流すことにしましょう」


「ええ……」


「冗談ですよ」


「……シェリルの発言こそ信頼性がないわね」


 などと掛け合いをしていると、教会の中に、新たな人影が二つ入ってきた。


「お邪魔するわねー」


「お母さん、帰ろうよー。こんな奴に構うのやめようよー」


 声だけで、ジェシカとマリオンだと分かった。


「し、侵入者!? 一体どこから!」


 とシェリルは身構える。


「裏口からよー」


 ジェシカはのほほんと答える。


「な、なるほど……盲点でした!」


 シェリルは激しく頷く。

 自分も裏口から入ってきたくせに。

 記憶喪失だろうか?


「それで、お二方は何者なのですか? ここは守護神アイリス様を祭る教会。アイリス様が認めた人しか立ち寄ってはいけないのです。いえ、そもそもここは私の領地。怪しい人は追い出しますよ、ぷんすか」


 シェリルは怒りを「ぷんすか」という台詞にして表した。

 アホっぽさが極まっている。

 とてもではないが貴族には見えない。

 メイド生活が長すぎて、貴族適性0000になってしまったのだろう。


「あらー、私たち、怪しい人じゃないわよー」


「怪しい人は皆そう言うんです!」


「えー、だって、そもそも〝人〟じゃないし? ね、マリオン」


「当然よ。私たちは偉大なドラゴン! 人間なんかと一緒にしないで!」


 そうマリオンが言うと、シェリルは「はあ?」と口を開けた。


「ドラゴンって……何を言ってるんですか。どう見たって人間ですよ」


 確かに、変身魔術を使ったドラゴンは、人間にしか見えない。

 だが、その変身魔術が下手くそなドラゴンが一匹紛れ込んでいるのだ。


「シェリル、こいつの頭を見て」


 アイリスは指摘する。


「はあ……角みたいな飾りが付いていますね。可愛いです」


「あと、後ろから何か生えてるでしょ」


「はあ……尻尾みたいな飾りが付いていますね。これまた可愛いです」


 シェリルは〝それがどうした〟という顔をする。

 が、マリオンの尻尾がピョコピョコ動いた瞬間、表情を一変させる。


「うごっ、動いた!? え、本物っ!? 本物の尻尾が生えた種族ですか!」


「種族っていうか、だからドラゴンだってば」


 マリオンは再度、自分がドラゴンだと明かす。

 しかし、今度もシェリルは信じなかった。


「またまたー。冗談がキツいですよ。ついさっきドラゴンがこの村に来たばかりですからね。ドラゴンの話には敏感になってるんです。あまり不用意にドラゴンの話はしないでくださいよー」


 と、なかなか分かってくれないシェリルに、マリオンは業を煮やした。


「分からない女ね! ちょっとこっちに来なさい! 証拠を見せてあげるわ!」


「わ、わ!」


 マリオンはシェリルの腕を引っ張り、裏口から外に出る。


「あらー。マリオンったら短気なんだからー」


 ジェシカは娘を追いかけていく。

 心配なので、アイリスとプニガミも行くことにした。


 そして、外に出ると、案の定。

 マリオンがドラゴンの姿になって草原に立っていた。


「ぎゃおーん!」


 おまけに盛大に咆哮を上げる。

 せっかくドラゴンがいなくなって村の人たちが万歳していたのに。

 これでまたパニックになる。

 現に、マリオンを前にした領主シェリルは、目をぐるぐる回し、声にならない声を漏らしている。


「はわわわ、私の眼前にドラゴンが……はわわわわ、食べないでください……」


 そしてシェリルは草むらの上に、ぱたりと倒れた。

 マリオンは、まさか気絶されるとは思っていなかったらしく、あわあわしだす。


「だ、大丈夫!? お母さん、どうしよう!」


「もう。びっくりさせるからよ。とりあえず人間に変身して看病してあげなさい」


「はーい」


 また少女の姿になったマリオンは、シェリルを担いで教会に戻っていく。

 だが、シェリルの看病などより、村の人々を安心させるのが先決ではなかろうか。

 そう思ったアイリスだったが、丘の下に行って事情を説明する度胸はなかった。

 そこで大きな声で「ドラゴンはこのアイリスが何とかしたから大丈夫でーす!」と叫んでおいた。

 これで、大丈夫のはずだ。多分。

小耳に挟んだのですが、なろうはブックマークでも2ポイント入ることを知らない人がかなりいるとか。

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