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シュッ・・・・・スル・・・キュッ
姿見で確認しながら薄物の帯を締める。
「ママきれぇ~ね~」
畑も後は収穫を待つばかり、そろそろ普段着ではなくて、着物を着ようと着付けをしていると、隣でうっとりとして頬を薄っすら染めた陽菜が呟いた。
「陽菜も着物着てみる?」
えっと驚いた顔をして直ぐに嬉しそうにハニカム陽菜。
「陽菜もこれきちぇいいの?」
「用意するからちょっと待っててね。」
子供用の着物を用意して陽菜の着付けをしていく、うるうるした瞳で姿見に移る自分を嬉しそうに眺めてる。
「はい出来た、陽菜超可愛い!」
後ろから抱きしめる形でぎゅっとすると嬉しそうにもじもじ。
「陽菜か、わ、いいの?」
「陽菜は世界一可愛いよ!」
ふふっと笑いながら、
「ママみてぇ!ママとおしょろい」
うちの子超絶可愛い過ぎる~!
それから陽菜と二人で絵本を読んだり、縁側で一緒に麦茶を飲んで過ごし、
夜になり、月の照らす縁側に出る。
「今日は花火をします!」
「はにゃび?」
「じゃじゃ~んっ!」
手持ち花火の袋を出して陽菜に見せると興味津々でガン見。可愛い。
「ママ、これはにゃび?」
「そうだよ、一回ママがやって見せるから怖かったりしたら、止めよう。」
袋から手持ち花火を取り出して、丁度いい大きさの石に立てた蝋燭の火に近付ける。
先端の紙を切り離し、火をつけると直ぐにシューと音を立てて燃え出した。
「ママっ!」
びっくりしたのか私の後ろにさっと隠れてしまった陽菜だったけど、視線だけは花火に釘付け。
黄色掛かった白の火が段々とピンク・青・緑と色を変えて行くのをみて、陽菜の瞳もキラキラと輝きだした。
「ママ!しゅごいっきれぇーねー!」
直ぐに火は消え、それを用意しておいた水の張ったバケツに入れる。
「陽菜もやってみる?」
「陽菜も?!やりゅーっ」
「その前に花火をする前に守らないといけない事があります。陽菜は守れる?」
火傷は怖いからね。
「陽菜ママとしゃんとやくしょくまもりゅよ!」
さっきバケツに入れた使用済みの花火を出して説明開始します。
「では、まず花火は人に向けたらいけません!ここから凄~くあっつい火が出てたでしょ、これで火傷するから非常に危ないです。」
「あいっ!」コクっ!
「なので花火は火を付いたら下に向けて色や音を楽しみます。火が消えてもまだ熱いので、触ったらダメです。直ぐに水の入ったバケツの中に入れましょう。守れる?」
コクコクと取れそうな程頭を振って目線はずっと花火に釘付け。
好きな花火を選んだ陽菜を後ろから覆う体制になって、先端の紙を取り、花火を持つ陽菜の手を上から覆う。
「誰も居ない方向に向けて火をつけるんだよ。」
陽菜が選んだ可愛らしい動物の絵柄がプリントされた花火を握りしめ蝋燭に近付ける。
シューッと勢いよく火が噴射する一瞬、少し陽菜の身体がびくりとなったが、直ぐに目をキラキラとさせて私をしたから覗き見る。
「ママみてぇ!陽菜のはにゃびきれーでしょ!」
うんうんと頷き、手元が狂わないようにだけしっかりと向きを気を付けながら、陽菜と花火を楽しんでいたところだった。
花火の光で何かが微かに見えた。
えっと思ったのも束の間、直ぐに気のせいだと自分に言い聞かせ、そろそろ家の中に入ってお風呂に入り寝てしまおうと思ったら、
「ママ!だりぇかいりゅよ!」
・・・・やっぱり居るよね。真っ暗な夜に溶け込むような色をしてますけど、かなり小さいですけど、居るよね。
門扉の柵の間からこちらをのぞき込む小さな瞳が一つ、二つ、・・・三つ・・・四つ。
マジですか?