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只今縁側に腰かけて水滴のついた麦茶の注がれた冷たいコップを片手に涼んでます。
なんとか着物を着られるようになり、畑を耕して肉体労働も頑張り、その成果が今目の前に広がっております。
瑞々しい緑色に輝いた芽が沢山目の前に広がり、もうそれだけで満足してしまいそうだけども、毎日水をあげて雑草を抜いて食べられる日が今か今かと待ち遠しい!
この異世界に来てから丁度4ヶ月経ちました。未だユーマとは遭遇してません。(笑)
一歩も塀の外側に出る事なく平穏無事に過ごしていました。が麦茶を飲みほしたところで何やら騒がしい怒鳴り声が遠くに聞こえてきました。段々とその声が近付いてきているような・・・。
耳を澄ましていると、草を掻き分ける音と共に顔を出したのは小さく可愛らしい灰色の猫耳を頭に生やした女の子が、西洋風っぽい可愛らしい門扉の柵の間から私と目が合った。
女の子は急いでいたのか、身体全体で息をしている様な感じで忙しなく浅い呼吸を何度も繰り返し額からは血が滴り落ちている。
思わず草刈り用のホーを投げ捨てて女の子に近づくと一瞬にして彼女の身体が強張り恐怖に飲まれた表情に変わった。
「何もしないよ、怪我してみたいだけど、大丈夫?」
安心させるように目線を下げて終始ニコニコと話しかけると、怪訝そうな顔をしながらも逃げることはしないで私の事を見つめてくれた。
その時、怒鳴り声が直ぐ傍まで近づいて来て、女の子の顔から血の気が引き真っ青をなるのを見て、何も考えずに身体が動き、門扉の柵を開いて少女の腕を掴み中に引き込んだ。
身体が強張っていたためか、抵抗する暇もなかった女の子は唖然とした顔をして私を見つめてくるが、今はそれどころではない、直ぐに門を閉めた処に、怒鳴り声の主が現れた。
「手前ぇこのクソガキがっ!手間取らせやがってっ!絶対ぇ捕まえてやるからなっ!」
女の子に家の中に入る様に促し、二人で縁側から中に入る
「んだ?なんだってこんな深淵の森の中に塀なんか・・・。あっおいっ!ここに猫獣人のガキが来なかったか?!」
私に気付いて声をかけてきたが、無視。答える気はありません。面倒だしさっさと何処かに行ってしまえばいい。
「おいっ!手前ぇ聞こえてんだろっ!ここに猫獣人が居るんだろっ出せ!!」
ハイ・・・シカトします。直ぐに内側の戸を閉めました。
「頭ぁっ!見つかりましたか?!」
とぞろぞろと集まって来たけど、知らんぷり。コミュ障ですから、子供ならまだ大丈夫だけど、大人なんかと話したら絶対に吃るから嫌なんだよね。
その中の誰かが門を開けようと手をかけようとしたが、触ることすら出来ない様で、怒鳴ったり開けようとしたり蹴りや殴ろうとしても何かの壁に阻まれるように意味をなさなかった。これは神様の御蔭だね!
「神様っ!マジありがとうございますっ!でもせめて怒鳴り声とかも遮断してくれると嬉しいんですけど!」
小声で神様に祈ります。しかし、怒鳴り声が消える事はなく、残念でした。本当に観察してるんですかっ?!こんなに困ってるんだから改善してくれてもいいんじゃないですかね?!
「あんなに怒鳴らなくても聞こえるのにね~早く帰ってくれるといいんだけど、」
「・・・・・・・・・・あっぅ・・・。」
「っ大丈夫!?」
女の子は少し躊躇いながらも言葉を喋りだそうとしたが、緊張からかそのまま意識を失って前のめりに倒れて私に倒れかかって来たのを受け止める。
まだ小さく軽かったからそのまま客間に抱っこして、布団を敷きそこに寝かせ、私は早速お粥を作って目が覚めるのを、小説を読みながら待った。