未定
次の日、俺は、近くの書店に足を運んだ。 これと言った用事はなく、用は、ただの暇つぶしだ。
店内に入り、物色していると、ひと際目立つ物が見えて来る それは、ライトノベルコーナーだ。
ライトノベルの表紙は 美少女が目立つように載っていて、男なら誰でも一度は手に取ってしまうこと
があるだろう。
実際に俺も読んでみたいと言う衝動に駆られ 手に取って見た。読んでみると冒頭から よくある
異世界モノだと言う事がわかる。
「またか」と、つい口に出してしまった。どうして この手のラノベは、「無能な一般人」を
異世界に連れて行きたがるのだろうか、と言うのが俺の感想だ。
どうせ、この主人公が、何かしらの能力に目覚めて世界を救うんだろう。と思うと、急に読む気が
失せてしまい本を棚に戻そうとしたところ
「読むのを止めるのですか?」
「・・・・・・・・・❗️❓」
背後から声を掛けられた。
「そのライトノベル面白いですよね」
「・・・・・・・・・・そうだね」
これが 俺の処世術だ、下手に波風を立てず相手に会話を合わせる。
「特に見所なのは 主人公がどんな敵よりも強いとこですよね。」
「・・・・・強い?」
そうか、このラノベも主人公が無双するのか。残念だ
「別に主人公が強いからってそれが面白さとは、関係ないと思うよ。大事なのはシナリオだろ。」
しまった、つい本音が出てしまった。
「そうですよね 私もそう考えてた時期がありました。でも」
と、彼女は、声を荒げて
「それでは、売れないんですよ どんなに練ったシナリオを考えても 読者は見てくれない
読者が見たいのは シナリオではなく、可愛いキャラと最強主人公が無双している所
です。だってそうでしょう?売れてるラノベは、全部それが当てはまるのですから。」
そこで、俺は漸く彼女の方に体を向けた。
「そうか、君がこのラノベの作者なのか」
「はい」
「そのあれだ、俺も最後まで読んでないから何とも言えないけど購入して
読んでみる事にする その上で今度 感想を伝えるよ。」
と言うと彼女は
「ご迷惑をお掛けしてすいません」
と深くお辞儀をした後に
「ありがとうございます」
と笑顔になった。
やれやれ 俺も飛んだお人好しだな 。
その後 帰宅し、購入したラノベを読んでみる事にした。しかし、読もうとした途端に鋭い
痛みが 口の中を襲った。
「痛ぇぇぇぇー・・え?何だこれ。」
そこには 歯が一本抜かれた跡があり、歯茎が血で覆われていた。
「何だよこれ どうなってるんだ」
突然の事で 頭が真っ白になりかけたが、すぐに冷静を取り戻して 抜けた歯を探そうとした。
「ない 何処にもない。」
10分ぐらい歯を探したが、見つからず 仕方がないので 諦める事にした。
「偶然か?」
と思い、再度 ラノベを読もうとしたら、キーーンと激しい耳鳴りがした。
「うわぁぁぁ」
溜まらず叫んでしまった。
「何だよこれ もしかして呪いか? この本を読む事で発生しているのか」
だとしたら、方法は一つだ、本を読まなければいいんだ。
俺は文字を見ずに本を閉じた。
その結果、さっきまでの現象が嘘みたいに収まった。
「でも不自然だ、書店では 何事も無かったはずなのに まさか あの女が原因なのか
だとしたら、いつ 何処で 呪いを掛けられた? クソ 分からない」
自分で解決さくを模索するが 当然 解決などせず、その日は 眠りについた。