知佳の過去
一応、これは第1話です。
犬本知佳、つまり私は今、カツアゲされていた。
「お嬢ちゃん、お年玉たくさんもってるんでしょ?お兄さんたちにわけてくれよ」
中学生の集団の中の一人がそういうと、その他のまわりのやつがニヤニヤと笑った。
今は一月の上旬だ。つまり、お正月真っ只中。私のような小さな子供はお年玉を沢山持っていると考えたようだ。
私も馬鹿ではない。
そういうカツアゲがあると予測をし、大人の人から離れないということをしていたのだが…。
まさか、一人でトイレに行って出てくるタイミングで起きるとは、思いもしなかった。
ここは、私の家の近くにある公園のトイレ裏だ。叫べば私の家族が直ぐにでも駆けつけてくれるだろう。
しかし、声が出ない。何故?
…答えが出た。原因は恐らく『恐怖』だ。
彼らが恐ろしくて声が発せられないのだろう。
気づけば、手が震えていた。
「お年玉をくれればお兄さんたち、何もしないから。ね?」
生憎、そうしたいのだが、現在1円たりと持っていない。
お金は家に置いてきてある。お金は大事だから。
友達と一緒に来たが、友達は3人仲良く遊んでいる。私は友達に「ちょっとトイレ行って来る」と言ってトイレに行ったので長くてもあまり不思議に思わないだろう。
しかも此処から友達が遊んでいる広場は見えづらい。勿論向こうからも見えづらい。
逃げるということは出来ない。トイレ裏を囲うようにして5人で私を囲っている。
もう積みである。私に残された選択肢は『ただ時を待つ』。それしかない。それしかできない。
「お年玉わけてくれないなら痛い目見ちゃうぞ〜?」
いっそもうお願いします。私を楽にして下さい。
そういいたいが、声が出ない。
目の前がうるうるしてきた。
…泣いてる?
恐怖のあまり、泣いてるようだ。
力が抜けて尻餅をついた。
少しでも距離を取ろうと、後ずさりしたが、すぐにトイレの壁に当たった。
頭を守りたくて頭を手で隠しながら丸まった。
……。
怖い…怖いよぉ…。
誰か…助けて…!
「おい」
それは一瞬の出来事だった。
中学生より20センチぐらい小さい少年が、彼らを殴り、宙に浮かせた。
次は庭ですね。