第一話 第八部 怒り溢れ
私は堀近さんをおいかけて小走りし続けていた。ガツガツと歩いて行く堀近さんを私はただ、怖がりながら追いかけるだけだった。私と堀近さんが室内ブルペンに到着すると無言でキャッチャーの座る位置に堀近さんが移動した。私は急いでキャッチボールの用意をする。
堀近「……クソッタレがぁああ!!!」
バシーーン
堀近さんが腕をプルプルさせながらグローブをたたきつけた。憤りを覚えた顔にはおぞましさもあった。
堀近「あのやろう散々バカにしやがって! ……でも俺には勝てねぇ…あんなのに勝てるわけがねぇよ…。」
そういって堀近さんが涙を流し始めた。私には何か縛られた感情が混みあがった。私の姉だというところに、そんな感情が生まれてしまった。あんなふうに姉を悪い物扱いされるのも…妹の私の身としては心が痛んだ。かといって姉をかばうわけでもない。あんな態度をされては怒られても当然だ。妹の私にでさえ怒りがでてくるからだ。姉妹という理由もあってその感情は大きなものだった。
堀近「…すまないな。…いいよ、ピッチング練習だ。」
そういってゆっくりと構える。私はそのミットにめがけて一球一球丁寧に投げる。
シューーー ズバァアアン!
堀近さんからの返球が返ってくる。
バシン!
その返球にはものすごく重い気持ちが募っていた。私は申し訳ない気持ちをこめて返球した。
シューーー ズバン!
私の思いに一つの終着点が生まれた。いままでの姉を取り戻すためには野球で勝つしかないと。あのとてつもない大学に勝つということだ。
堀近「すわるぞ。」
そのためには私の力、周りの力が必要だ。全員の力が合わさって戦ったとしても勝てる確立はごくわずかしか考えられない。だからこそ勝ってみせる。相撲でいう金星をとれば、姉の気も戻ってくれるはず。あの天狗となった鼻を…。
シュバァアアアア
堀近「!!」
バシューーーン!!!
へし折ってみせる!