第一話 第七部 プレッシャー
堀近「今……ここでですか?」
真菜「…ええ。」
私はぞっとして鳥肌がたった。あんな姉はいままで見たことがない。怖いというか、表現を悪く言ってしまうと「えげつない」。野球をやっている人にしかわからないオーラってあるかもしれないけれども、今の姉の姿をみたら経験者以外でも怖くて逃げ出してしまいそうだ。堀近さんの顔色が悪くなっていく。空気が張り詰めている。そして堀近さんは大きくため息をついた。
堀近「ぜひともやりたい…ところですが、今は練習しているところを邪魔してはいけないので。」
真菜「……そう、それじゃあ大会で戦うときを楽しみに待っていますね。」
堀近「ええ。目に物みせてあげますよ。」
そういってまた帰り道の方、私の方角を見て歩き始めた。
ザッザッザッザ…
私の横を姉が通りすぎた。私は息を荒くしていた。あんな表情は見たこと無い。何も感じられなかった。むしろ私の心を消し去っていく雰囲気だった。私はその場から全く動けなかった。
美由紀「ちょっと真菜! 雨宮くん、岸くん。二人でも大丈夫?」
岸「問題ないぞ。」
雨宮「アイツのことは頼んだ。」
そういってもう一人の女性が走って真菜姉のことを追いかけた。その人の顔にもあせりとも思えない、不思議な表情をしていた。あの姿を見たのはここの人たちが始めてなのだろうか。
雨宮「…す、すみません。それで…俺たちはこのまま偵察続けていても大丈夫でしょうか。」
堀近「あ、ああ。俺はこれからブルペンで受けに行かないといけないから。」
そういって堀近さんが歩いて行く。私も歩かなきゃいけないのに足が出なかった。さっきのを見てしまっては…。
堀近「おい椎葉、いくぞ。」
佐奈「はい。」
その言葉にやっと足が反応してくれた。私は小走りで堀近さんのところに向かった。