第一話 第六部 一触即発
何を言っているのだ、姉は。その姉の言葉には感情も何もなかった。ただ、発しただけの言葉になった。
美由紀「ちょっと真菜! すみません、うちの真菜が大変失礼なことを…。」
堀近「いえいえ、大丈夫ですよ。椎葉さん、あなたが言いたいことは十分にわかります。あなたの実力も把握しております。」
堀近さんが淡々と返事を返していく。きっと心の中では怒りがあるのだろう。それを抑えるかのように言っていた。私は足がプルプルしてきた。私にはこの怒りが抑えきれなかった。それも姉だからだ。
堀近「でもですね、そう上ばかり見ていると足元をすくわれますよ?」
一触即発の状況になった。いままで堀近さんは怒りを抑えていたのではない。初めから真っ向勝負をするつもりだったんだ。
真菜「あっそ。」
そう言葉を吐き捨てるとスタスタと帰る方向に向かっていった。
雨宮「おい椎葉!」
佐奈「真菜姉!!」
私は怒りを抑えきれず、叫んだ。そして姉のところにガツガツと向かっていった。
佐奈「なんなのその態度! いくらなんでもひどすぎるよ!」
真菜「…姉に対して楯突くつもり?」
姉は後ろ向きで首をすこしこちらにむけ、目を尖らせて言った。
佐奈「そうよ! いくら姉であってもその発言や態度には許せない!」
私がそういうと姉はこっちを向いて近づいてきた。
真菜「…あんたが私に勝てるとでも?」
すごく大きい。なんてとてつもなく大きな壁なんだろう。私は今押しつぶされそうになっている。だけど…だけどっ!
佐奈「…勝てるよ!!!」
真菜「…そう、まあせいぜい頑張りなさい。」
そういって私の横を通りすぎた。そして堀近さんに近づいていく。
堀近「うちらは強いですよ。とくに今年は。」
真菜「…なら、勝負します? いまここで。あなたぐらいでしたら肩を慣らさなくても三振を取れるわね。」
とんでもない威圧感が堀近さんを襲った。