第四話 第十七部 まだ私は…。
堀近「…すまん。」
私は堀近さんの声を聞いてゆっくりと立ち上がった。そろそろ足にも疲れがきた。立ち上がるだけで足に大きな負担をかけていることがわかる。でも…こうであっても投げきらなきゃいけない。それが私の役目だから。
佐奈「堀近さん…。ブルペンで受けてもらったとき、私は堀近さんがいる間に必ず神宮大会で優勝させてみせますと言いましたよね。」
堀近「ああ。」
佐奈「まだ諦めてないですからね。後続が絶対に打ってくれると信じてます。」
私はマウンドに歩いていった。もうほとんど後が無いのは確か。しかし最後までやってみなければわからない。真菜姉だって相当きているはず。もう一踏ん張り、私の体がもつことを祈って投げるしかない。
真菜「雨宮、必ず打ってきて。私も正直辛い。」
雨宮「かなり汗かいてるな…。わかった、ここで打って楽にしてやるぜ。」
真菜「たのむね。」
投球練習が終わって八回の表の攻撃になった。バッターボックスには四番の雨宮さんが立っている。ここが一番の正念場、絶対に打たせない。
堀近「良い気合の入り方だ。燃料を使い切るつもりだな…。それならそれに答えて俺は最大限のリードをするだけ!」
まずはフォークボール。内角低めのストライクゾーンギリギリに!
シュゴオオ
雨宮「(落ち着いて…冷静に!)」
ストーーン バシーン!!!
ストライクワン!
雨宮「(アレがストライクゾーンか!)」
堀近「(よし、これは大きい。)」
最初のフォークボールがストライクゾーンに入った。一つストライク取るのにもかなり苦労する。ストライクゾーンが小さく見える錯覚もするけれども…あのミットだけ見ていれば大丈夫。堀近さんが受けるミットだから!
シュッ
シュゴオオオオオオ
堀近「(内角低めの良いコース、さっきと同じなら打ったとしても抑えられる!)」
雨宮「(これしかねえ。ここで行かなきゃ勝てない!!)」
ギィイイイン!!
佐奈「(打球は!?)」
堀近「ライト!!!(たのむ、とってくれ!)」
雨宮「いけえええ!!(振りぬけたがあたりは芯じゃねぇ、でも行くなら行ってくれ!!)」
打球はライト後方へと伸びていく。でも勢いも殺していけてる…。これなら取れるはず!!
高坂「とどけええええ!!」
高坂さんが飛びつく。とって!!!
ポーーン
スタンド「わあああああ!!!」
雨宮「っし!!」
ライトスタンドギリギリに…ボールが高々と跳ね上がった。