第一話 第四部 室内練習場のキャッチボール
私は家のすぐ横にある、室内練習場に入った。私の両親がお金をかけて立ててくれた私たち専用の室内練習場。両親には本当にお世話になっている。いつか私と姉で親孝行しないと。
シュルルルル バシィイイン!
何も言わずに姉が投げてきた。相変わらず姉にしかない球筋だ。いままでいろんな人とキャッチボールをしてきたけど、姉みたいな球筋は見たことがない。一体何回転しているのだろうと思うぐらいだ。キャッチボールなのにキャッチャーで受けているような感覚になる。
シュルルルルル ズバァアアアン!
異常なまでの風切り音、意識よりも上にグローブを構えないといけないほどのノビ。そして何よりも投げるまでの風格が信じられないほどビリビリ伝わる。いつもキャッチボールをやっていて怖いと思っている。でもその経験が私の実践に役立っていく。このおかげでいままで投げていて怖いと思ったことはない。たった一度、姉の学校との練習試合の時を除いては…。
シューーー ズバーン!
私もらしくなってきた。球筋が安定してきている。それでも姉にはまだ劣らない。そして最大の違う点は私は左投げ、姉は右投げ。
真菜「…なかなか良い球投げるようになったね。」
佐奈「ありがとう。」
真菜「…5球だけ8割ぐらいで投げるわね。」
そういって振りかぶる。私はしっかりと構える。姉の8割は他の人の全力投球に値する。そんな球を8割かという気持ちで受けようとすると大変なことになる。全集中をフォームとボールにむけて…
シュバァァァアアアア
ズバーーーーン!
佐奈「いたーっ。」
ものすごい球だ。8割で投げていても十分抑えられるほどだ。球の速さで言うなら私の全力と同じぐらい。そう思うと私は…。