第四話 第八部 恐れるな
プレイ!
真菜姉の投球が始まった。腕を胸の部分にあて、一回深呼吸するとゆっくりと足を上げて体を捻る。そしてためにたまった力を一気に放つように投げる。
シュバアアアアア ドシューーーーン!!!
ストライクワン!!
オオオオオ
会場からは大きな声援と拍手が沸き起こる。初球153キロ。速いには速いけどそれだけじゃない。圧倒的威圧感に球のノビ。そしてダイナミックな投球から生まれる重い球。さらには…。
シューーー
高坂「うわっ。」
グンッ バシーーン!
ストライクバッターアウト!
高坂「まじかよ…。」
決め球のフォーク。恐ろしいほどに落ちる。しかもただのフォークではない。スライダー気味に横変化も与えるフォーク。球の回転をコントロールできるフォークは私にもまねできない。いや、まねできる人は本当に何年かに一度の人でないと出来ないかもしれない。とにかくあのストレートだけが大きな武器ではないことはたしかだ。
シュゴオオオオオバシーーン ブン!
ストライクバッターアウト!
坂本「くそっ!」
まずストレートをバットに当てることが出来なければ何も始まらない。それぐらいすごい球だからだ。
堀近「ふぅーー。」
堀近さんが大きな深呼吸をしてバッターボックスに入る。堀近さんは何か対策をとってきているのだろうか。
真菜「…。」
岸「(こいつの読みは鋭いからな。なんとかリードしないと。)」
真菜姉がサインにうなづき、投げる
シュゴオオオオオ ブン バシュゥゥウウウン!!
ストライクワン!
堀近「っつ!」
完全に振り遅れている。でもバットの位置なら当たってもおかしくない位置。これならもしかすると…。
シュゴオオオオ ブシィ バシューーーン!
ストライクツー!
あぁ、ボール球を振ってしまった。本当に球は見えているのだろうか。
岸「(フォークで。)」
真菜姉が足を上げる。そして…。
シュッ
堀近「(来た! 恐れるな、振れ!)」
体に当たるかもしれないというあぶない球。しかしそれは…。
グンッ!
フォークだ!
ブン!! バシーーーン!
ストライクバッターアウト!
岸「(怖がらなかった!?)」
真菜「ちっ。」
三振になってしまった。けれども堀近さんは悔しがっていない。逆に真菜姉の方が険しい顔になってる。どういうことなのだろうか。