第一話 第三部 どこまでも追いかけて
佐奈「ということで、今回はここまでで。ありがとうございました。」
下北「おっつかれー。佐奈ちゃんそろそろ大会でしょ? 頑張ってね。」
小田「そうだね! 応援してるよ! 私も試合見に行くから!」
佐奈「みんなありがとう。今年は神宮大会に出てみせるよ。」
そういって私はテレビ通話を切った。もうそろそろ大会。国立でもすごいんだぞというのを見せてあげなければ。そして…勝って勝って…。姉と一緒に…。
運動着に着替える。春だけれども夜はまだ少し冷え込む。ウインドブレーカーを着て私は自分の部屋を出た。
ガチャ
姉も同時に出てきた。階段を下りて鍵を取る。靴を履いている間に姉はすぐに外に出て行った。
佐奈「私もついてきていい?」
真菜「…ついてこれるならね。」
私は靴を履き終えると外にでて鍵を閉め、軽い体操をした後に姉の後ろを追いかけ始めた。いままでもこんな感じ、ずっと姉の後ろを追いかけている。野球をやっている姉はすごくかっこよかった。わたしも姉みたいになれるよう野球を始めた。姉にいろいろと教わってスタメンに選ばれるほどにもなった。いつしか姉はあんなにすごくなって…。私は追いつこうとひたむきに努力してるけれども…。
離れていく。
真菜「…疲れてるなら休みな。」
佐奈「はぁはぁ…私は…大丈夫だよ。」
ペースがものすごく速い。付いていくだけで精一杯なのに姉は余力を残している。あきらめたくない。姉に追いつきたい。その一心が私の体の支えにもなっている。私は最後まで……。
真菜「キャッチボール、できるか?」
私は家に戻ってきたころには息が切れていた。それでもキャッチボールという言葉を聴くと、疲れていても体が動く。唯一姉と一緒に練習できることだ。受けるほうとしてもすごく怖いけれどもこんなことは私にしかできない特権だ。私は大丈夫だよという表情を見せてグローブをとった。