第四話 第四部 グータッチ
ガチャン
私は鍵を閉めて家から出た。私と真菜姉は横にならんで二人で歩いていた。私服で、バッグはそれぞれの学校指定スポーツバッグ。向かう先も同じ、神宮球場。私の知り合いであまり仲の良い姉妹はいないと聞くけれども、私たちは仲良しの姉妹のように周りからは見えていた。でも真菜姉とは近くても、気持ち的には大きな谷底があるほど遠く感じた。これから戦う相手なのだから…。
真菜「佐奈。」
佐奈「何?」
真菜「変に意識してはだめだよ。」
佐奈「へ?」
真菜「ふぅー…、試合になったら私も一人の選手として思って。姉だからといって変に意識すると自分の投球を見失ってしまうから。」
佐奈「……。わかった。一人の選手として戦うよ。」
真菜「ありがとう。」
そうして私たちは電車に乗った。乗ってからは何も会話もせずに電車に揺られていた。でもそんな中、私は嬉しさがこみ上げていた。さっきの会話で姉から久々にありがとうという言葉を聴いた気がする。本当に嬉しかった。
プシューーー
球場前の駅に到着し、歩くこと10分、球場前に到着した。そして目の前には堀近さんがいた。
堀近「椎葉、来たか……、あ。」
真菜「どうもです。」
堀近「…どうも。」
佐奈「それじゃあ……真菜姉。後は試合で。」
真菜「………。」
堀近「行くぞ。」
真菜「佐奈。」
佐奈「え?」
真菜姉が右手を突き出して、手をグーにしている。なんだろう、これは。
真菜「……思いっきり、戦おう。」
佐奈「…うん!」
私と真菜姉は笑顔でグータッチした。そしてグータッチを終えると。
真菜「………覚悟してね。」
佐奈「!!」
真菜姉が去っていく。……一番気合の入った雰囲気が私には見えた。武者震いがする。これから…あのものすごく巨大な相手と戦うのかと思うと…ワクワクしてきた。