第三話 第三部 決意
「よっしゃああ! 声出していこう!」
「ばっちこいやぁああああ!」
キィイイイン!
「らぁああああ!」
バッティング練習、みんなの声が練習場に響き渡る。第一試合以降から気合が入ってきたが、神宮大会を決めてからさらに気合が入っていた。私たちにとってみれば大きな収穫になった。打撃も好調になってきている。これなら大会本番も心配はせずにいけそう。
堀近「もう心配はなさそうだな。」
佐奈「みなさん元気にやっていますので…。あ、ピッチングしに行きます?」
堀近「そうだな。」
私と堀近さんは歩いてブルペンに移動していった。私は昨日姉に言われたことがどうしても気になっていた。私は堀近さんに声をかけた。
佐奈「堀近さん。お聞きしたいことが。」
堀近「なんだ?」
佐奈「私、昨日姉にフォームを変えたほうが良いといわれました。体の開きが早くて、球も軽いと…。私、そうなってますか?」
すると堀近さんは何かピリッと感じとって目つきをかえて言った。
堀近「気づかれちまったか…。」
佐奈「えっ?」
気づかれた? どういうことなのだろう。
堀近「椎葉、姉のフォームはトルネードスローだろ? なぜかわかるか?」
佐奈「なぜか? うーん。」
堀近「お前と姉は似てるんだ、体格が。」
佐奈「体格?」
すると堀近さんは上を向いて話した。
堀近「姉が大きな活躍し始めたのは三年になってからかな…。あのころにフォームが変わってすごく良い投手になったんだよな…。」
そして堀近さんはまた私の方を見た。
堀近「俺から見ればお前も姉も体が細い。つまり力がものすごくあるというわけではないんだ。運が良いことに二人ともセンスもあって地肩がある。さらにいえば身長も女性にとっては高い。しかしそれだけでは足りなくなってしまうところがある。体の付き方が男性と女性では違うからな。だから姉はトルネードスローというさらに球の重みや球威、速さなどをつけたってことだ。」
佐奈「それでは私は…。」
堀近「姉と違ってまだまだ体全体の力を使えてないということだ。それと元々のクセに体の開きが早いのが入っている。だから…姉は球が軽くて打たれるって言ったのだろうな。」
佐奈「………。」
堀近「すまねぇな、神宮大会も近いってのに。」
佐奈「堀近さん!」
私は覚悟を決めた。ここでやらなければいつまでたっても姉に追いつくことが出来ない。大学で姉と戦えるチャンスなんてもうほとんどない。いまの私を姉に見せてやりたい。元の姉に戻したい。その気持ちでいっぱいになった。
堀近「どうした?」
佐奈「……今からフォーム改造します。手伝ってください!!」