第一話 第一部 夢に向けて投げ込んで。
堀近哲三「さあ、ここだ!」
私は振りかぶって右足を上げた。ミットから一度目線をはずして、もう一度みてそこに向かって!
シュゴォオオオオオオ
バシィューーーン!!
堀近「ナイスピッチング! もう一球だ。」
六大学大会に向けての調整は万全になってきた。早く…試合で投げたい!
シュバァアアアアア
ズバァアアアアアン!!
堀近「よし! お疲れ!」
椎葉佐奈「お疲れ様です。」
私は軽いダウンのキャッチボールをした。今日も構えたところに投げることができた。私は少しほんわりとした気分になっていた。
佐奈「早く試合で投げたいです。」
堀近「おいおい、それで成績落としたらまずいぞ。一応奨学金貰っているんだから成績落とせないのわかっているだろ?」
佐奈「大丈夫です! 講義も毎日出ていますし、今まで 『秀』しかとっていませんから。」
堀近「ふん、良くいうぜ。」
佐奈「それを言うなら堀近さんもそうですよ。」
堀近「俺は一度『優』とったことあるぞ。」
佐奈「そうなんですか。」
私はキャッチボールを終えて、帽子を取ってお辞儀をした。
佐奈「あっ、今日は少しだけ早めに帰らないといけないので。ランニングは姉と一緒にやっておきます。」
堀近「そうか。じゃあ又明日な。」
佐奈「お疲れ様でした!」
私は急いで更衣室に移動した。今日は自宅に帰って、同じ講義仲間と宿題の話し合いをネットでする約束がある。だからちょっと早めに帰って準備しなければいけない。
大会まであと二週間。去年は二位という結果で春と秋、神宮大会に出れることが出来なかったけれども、この一年間で大きく私たちは成長した。堀近さんは今年が四年生。春はラストチャンスでプロにアピールできるのも最後のチャンスかもしれない。そして最大のチャンスでもある。だからその舞台に堀近さんをたたせてあげたい。そして…姉と勝負がしたい。
私は急いで自宅に到着するとすでに電気がついていた。鍵はかかっているけれども、姉が帰ってきているようだ。
ガチャ
佐奈「ただいま。」
椎葉真菜「……お帰り。」