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戦闘チュートリアル編 その1

「ああ、姫様、こちらにおいででしたか。む……? 何を笑っているバレンシア」


「う? あ、クレアさん」


 女神様のくだらない今日の一言にツッコミを入れたそのすぐ後、いつの間にかすぐ近くまでやって来ていたクレアさんに声を掛けられた。

 クレアさんの服装は、私服ではなくいつものメイド服に、当たり前の様に剣を一振り腰に提げている。慣れてしまったのもあるが、なんて剣の似合うメイドさんなんだろうか……。


「い、いえ、なんでもありません。ふう……。まったく、直接お会いした訳ではありませんが、あのお方は中々に興味深く、さらにとんでもない曲者の様ですね……。これは油断なりません」


 そんな反応だと面白がって沢山送り付けてくるようになるよ、きっと。


「誰の話だ? しかしお前にそこまで言わせるとは只者ではなさそうだな。よし、私も協力しよう、片付けに行くぞ。姫様のためにも今後の憂いは断っておくに越した事は無いからな」


「なんでそうなるの!? めが……、私のお友達の話だから心配しなくても大丈夫だよ!!」


 なんという物騒で直線的な発想……。さすが戦闘メイドさんのクレアさんだ、怪しきは消せを地でいっている。

 しかもそれが私のためだからっていうのがさらに恐ろしさを増強させている。マジ震えてきやがった……、怖いです。


「めが? わ、分かりました、申し訳ありません。姫様がそこまで仰るのですから、本当に何一つ心配は無いのでしょう」


 うんうんと頷いて納得するクレアさん。私の言葉を無条件で信頼してくれるのは嬉しい。


 クレアさんみたいな真っ直ぐな性格の人は女神様とソリが合わないと思うなー。まあ、実際会う事は無いと思うけどね。……フラグじゃないよね?






 さて、休憩はたっぷりと取ったし、スキルの確認も終わったところでそろそろ……、次の行動に移るとしますか!

 次、えーと、次は……、と。


「シアさん、次は何に、あ、クレアさんはこれからどこか行くの?」


 そういえばここは、入り口から入ってすぐの広いロビーだった。という事は販売所を覗きに来たか、工房の外に用事があるんだろう。


 折角なのでクレアさんも巻き添えにしてどこかへ行くのもいい。それとも何か目的があるのならそっちに私が付き合うという手もある。

 やはりオンラインゲームと言えば複数人での行動、だよね。人の数が増えれば増えるほど、できる事、やれる事が増えていく。


 ……シアさんがちょっとしかめっ面になっちゃってるけどとりあえず放置。私の疑問にはついつい全部答えそうになっちゃうから、誰かいるときはあんまり喋らないようにするんだっけ? ちょっと寂しそうだね。


「特に急ぎの予定がある訳ではありません、強いて言うなら木材の採取に町の外へ行く必要があるくらいです。そのためにはまず戦闘に関してのチュートリアルを受けねばなりませんが」


「木材? 鍛冶には木材も使うの? でも木材ならそこの販売所でも売ってると思うけど……」


 クレアさんはリアルでは戦闘メイドさんなのだが、意外にも生産スキルである鍛冶を真っ先に取りに来ていた。

 まあ、料理上手でさらに武器の収集が趣味とくると、生産スキルを選ぶのも意外でも何でもなかったかもしれない。


「は、言葉が足らず申し訳ありません。木材は武具の製作にも勿論使うのですが、そちらの目的ではなく、正確には町の外の伐採所で『木工』のスキルを手に入れねばならないのです」


 木工? それは新しいスキルだね。名前からすると木材加工全般における大分類的なスキルかな。

 今の言い方からすると、クレアさんにとって木工のスキルは必須っていう事なんだろうか? あ、木材を加工して作る武器のために、と見た! 木刀とか、弓矢とか。


「それではまだ言葉が足りませんね。簡単に言ってしまいますと、鞘の製作は木工スキルで行うからですね」


 オウフ。全然違った!


「へー、鞘を作るんだ? ……え? 鞘って別で用意しないといけないの!?」


 なにそれメンドクサイ。と思ってしまうのも無理はないと思う。


 言われてみれば、剣を一本作ったら鞘も一緒に出来上がっちゃいました、っていうのはおかしい気もするよね。でもそれなら、鞘も金属製にして鍛冶スキルで作れちゃえばいいのに。


「はい。鍛冶スキルを取得した際に無償で受け取った素材は、丁度このショートソード一振り分でして」


 そう言うとクレアさんはインベントリを開き、鞘の無い抜き身の剣を一本取り出した。

 それはショートソードの名前そのままの短めの真っ直ぐな刃の剣で、飾りも何も無い、まさに何の変哲も無いただの剣だった。


「初期装備として配られたこのカットラスには鞘が付いていたので、こうして腰に提げているのですが、こちらはさすがに抜き身のまま持ち歩く訳にはいかず……。折角作り上げたというのにインベントリにしまって持ち歩くのでは勿体無い、と言いますか、面白くありません。私と同じ考えを持つ者も多く、無ければ作ればいいと早速作り始める者も何人もいたのですが、素人鍛冶では全く形に出来ず素材の無駄となるばかりで、と、言い忘れていました、ショートソードの鞘のレシピは誰も手に入れていない様なので、ゼロから形にするしかなかったのです」


「ああ、ハンディクラフトで新規に作成? でもいきなり鉄を叩いて鞘を作れっていうのは無理があるよね」


 スキルが上がれば適当に叩いてるだけでイメージどおりの形に仕上がるらしいけど、スキルを覚えたての、鍛冶仕事もやった事が無い人がいきなり何か形にしようだなんて本当に無理がありすぎる。


「はい、剣は自動生産でしたので何の問題もなかったのですが。どうしたものかと皆で悩んでいたところ、伐採所に木工スキルも鞘のレシピも売っているぞとメールが送られてきたので、では行ってみるか、となった訳です。私は姫様がまだ工房内に居られるのではと思い、一人別行動を取って参ったのですが」


 それで今さっき私たちを発見した、と。ここまでがクレアさんの辿って来た経緯の様だ。


 ふむふむ。戦闘メインの人とか、早速採取地を探しに出た人からの情報かな。

 こういうまだ何も分かってない、初期の手探り感は最高だよねー。クレアさんやけに口数多いし、表情は例によって無表情だけど、内心はかなり楽しんじゃってるんじゃないかなこれは。ふふふ。


 ……うん? メールが送られてきて?


「メール? お友達から?」


 カイナさんかな? 工房の中にいなかったし。


「いえ、今日知り合ったばかりの方達です。フレンド申請の練習にと次々と申し込まれてしまい仕方なく全員登録する事にしたのですが、その後引っ切り無しにメールの山が送られてくる様になってしまったのです。一通一通返信しても、またすぐにその返事が送られてきて……、正直面倒になってしまっています」


「え? うわ、それって……、アレだよね?」


「ええ、女性プレイヤーと仲良くなろうという魂胆が見え見えですね。『今暇?』、だとか、『こっちPT一人空いてるんだけど来ない?』とかばかりでしょう?」


「何故分かる……。あ、ああ、これはまさかナンパをしているつもりなのか? もっとストレートに誘えんものなのか、情けない。確かに鞘の情報をくれた女性以外は男からの誘いばかりだな。ふん、鍛冶仲間以外は削除しておくか」


 ふん、と鼻から息を一吐き、ウィンドウを開いてポチポチと押していくクレアさん。


 あらら、皆さん残念でした。でもクレアさんはもう恋人がいるからね、どう転んでもお友達以上にはなれないから早めに諦めがついてよかったんじゃないかなー。


「思わせ振りな態度を取って貢がせればいいのでは? 勿体無い」


「おお、そんな手があったか、これは早まったな。ふふ」


 いつもなら怒鳴る所だけど、まさかのノリノリ!! やっぱりクレアさんはかなり楽しんでるみたいだね! ふふふふ。……でも、シアさんのは純粋に本心からの言葉なんだろうね……。




 クレアさんをフレンドに登録してからパーティー(以下PT)を結成。どちらも確認ウィンドウの許可ボタンを押すだけなので簡単だった。

 何故かリーダーはシアさんだが、そこはもう気にするだけ無駄なのでスルーしておく。やはり参加申請、招待を送れるのはPTリーダーのみらしい。ショーターイ! とか叫びながら招待を送りたかったのに。

 ちなみにPT名は『姫様と愉快な下僕達』。……突っ込まないぞ。


「なんだこのPT名は……。せめてメイド達に直せ」


「はいはい。『姫様と愉快な下僕メイド達』、と。これでいいでしょう」


 私は、突っ込まないぞ。

 

「ルビを振っただけか! ……まあ、いいだろう」


「いいんだ!?」


 はっ!? むう、クレアさんめ……。



「では出発の前に、簡易戦闘チュートリアルを終わらせてしまいましょうか」


「ああ、まだそれが残っていたな。それでは姫様、訓練所に向かいましょう」


「あ、はーい。戦闘かー、ちょっとドキドキしちゃうね。ふふ」


「か、可愛らしい……。さ、お手をどうぞ」


「何を勝手な! それに、態々移動せずともこの私がいるのですから、ここで済ませてしまえばいいんです」


「なにそれこわい」


「どういう意味だ?」







はい、タイトル詐欺でした。戦闘は次回!

という訳で続きます。



今回は大体3000文字くらいですね。

チュートリアルが終わったら、毎回これくらいの文字数でだらだら続けていこうと思っています。

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