覚醒1ー5
エラルドはホムンクルスと向かい合う。
[来たか。エラルド。あの日の借りを返して貰おう][ジェイル!貴様!………今教えてやる!お前の選択は間違えていたと][エラルドさん!ここは我々に任せて貴方はジェイルを!][すまん。おそらくこの軍隊は奴が操っている。司令塔を失えば楽になるさ]
エラルドはジェイルに向かって走る。黒装束を放り投げるジェイル。腕からレーザーが伸びる。[食らえ!必殺奥義!天誅斬!]激しい火花を上げてエラルドに襲いかかる。腕を交差させ受け止める。[クッ………なんてプレッシャー。奴め。この圧力が進化だと?]ヒューマライザーが砕け散る。
[マズイ!後方!手の空いてる者!エラルドの援護を]
[クッ。やべぇな。アイシャ。戻れそうに無い。なら当たって砕けろだ。見せてやる。父親の戦いを]
肩を回すジェイル。[改造しすぎたか。弱いな。人間も。まだ判らんのか?人智の結晶。人造人間。勝てる訳が無いだろう][………力を追い求めた結果、化け物になったか。無様だ。ナゼこんな奴を戦友と呼んだか。自分が情けない][まだやるか?往生際が悪いな。人間の性か]
アイシャ。見ているか?全ては私の出来心だった。お前を保護したのも。だが一度でも俺を父親と呼んでくれた時。ホムンクルスの人造人間の可能性を感じた。こいつとなら上手くやっていけると。だから俺は守る。人間を。未来を。さらばだ…………
[食らえ?ジェイル!]ジェイルの胸に血清弾を撃ち込む。[効かぬ!グローッ]気迫で弾を弾き返す。
グワッシッ
首を鷲掴みにし、天高くエラルドを掲げる。[この瞬間を10年間待っていた。お前の償いをこの戦いに捧げる。心配するな。直ぐにお仲間も送ってやる。さらばだ!盟友]グッシャッ!
力が抜けるエラルド。投げ飛ばすジェイル。全く勝ち目は無かった。[クッ………エラルドー!………]総理大臣は叫んだ。その叫びは雨の中に消えた。[総理!ここは危険です。お逃げ下さい][………イヤ。逃げぬ。彼もそうした様に。一寸でも光があるなら、それを追い求める。直ぐにアイシャの元へ連れていけ]リムジンが歌舞伎町を立ち去る。
[クッソー!お前ら!退くな!多少の犠牲は覚悟の上だ!行けー!]隊列を乱して進む特殊部隊。次々に落とされていく。
その日、歌舞伎町は雨が降っていた。暗雲と血が重なり革命の日となった。その日の内に日本各地に散らばる使徒が制圧した。日本は地下実験室で開発されていた、軍事機密、人造人間ホムンクルスの傘下に下った。人間はその力の前に屈するしか無かった。
総理大臣はエラルドの家に着いた。傘も差さずに近寄る総理大臣。[アイシャ!無事か!直ぐに来い!君を保護する][エッ?父さんは?][…………亡くなった。君を守る為に。君はホムンクルス。10年前、エラルドが保護した…………][父さん…………私はどうすれば?][どう選択しようと勝手だ。君が人間の味方をしようがホムンクルスに戻ろうが。だが忘れるな。一度でもお前を人間として育てた男がいた事を][…………父さん………何故、私を保護したのか?][その答えは生きていれば見つかる。君の父親の様に]
リムジンに乗り込む二人。[運転手さん。お願いします。国会議事堂まで][待って!歌舞伎町に寄れる?少し遠回り?][………イヤ。君がそうしたいなら。歌舞伎町まで]
アイシャはその光景を目に焼き付けた。
…………殺戮と破壊。それが私を造った。私にもその危険が。でも私は迷わない。エラルドが、父さんが認めた娘だから…………[充分か?行こう。いずれ奪還する日を待ちながら]アイシャは頷く。[総理!私を戦士に育ててくれ][構わない。君の素性は隠しておこう。名前も]
…………父親も知っていた。いつかこんな日が来ると…………
ジェイルはリムジンに目を移した。[フン。逃げ惑え!アイシャ。今はそれで良い。だが逃げ続けてどうなる?包囲網が狭まり、やがて捕らわれの身となる。その日まで生きるが良い]
ネクスト リザーバー。その席は人造人間の物だった。