辛い時の合言葉
この小説は違法な行為を推奨するものではありません。
小学校二年生か、三年生か、思い出せないけれど。
辛い時の合言葉を、決めたことがある。
——小学校特有の、純粋で、高校生とは違った意味でのバカっぽい友達なかま。
その友達なかまグループ三人で、公園の芝生に寝っ転がった。
不意に、一人(修紀)が言い出した。
「なぁ」
ん? と返事をしたのは、慶弥だ。
ボクはそのとき、遠くの空を見つめていた。
青い空が、薄い雲で覆われていた。
「つらいときの、合言葉って知ってるか?」
知らない、と慶弥は答えた。
「知らない」という声で、ボクの意識は空から会話へうつった。
慶弥にワンテンポ遅れて、「さあ?」と答える。
「実は、おれも知らない」
「ハァ?」
気の抜けたような声が、公園に響く。
「知らないから、決められるってことじゃないか」
修紀が、目を輝かせた。
ボクら二人も同調する。
——そのとき、合言葉を決めた。
ピーポー……ピーポー……
シンプルな旋律を響かせて、警察がやって来る。僕は今、車のトランクの中だ。
黒いパーカーの男に連れ去られて、「アジト」なるところに向かわせられるらしい。
臓器の売買とか、変なことがなかったらいいな……。
そう祈りながら、約束を思い出した。
――辛いときは、助けて、って、言うんだ。
——それ、合言葉じゃなくない?
――でも、大事だろ?
——……まぁね。
「ツライ!」
ボクは大声で叫んだ。
すると、パトカーが近づいてきて、無線が聞こえた。
「もしかして、巧か!?」
「その声は、慶ちゃん!?」
「助手席に、シュウも乗ってるぞ!」
何と二人は警察官だったようだ。
思わぬ形で再開したが、顔は見えないボクたち。そのあとボクらは救出され、ついに顔を見られる形で再会を果たした。




