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辛い時の合言葉

作者: 真貴与 里音
掲載日:2026/04/24

この小説は違法な行為を推奨するものではありません。

 小学校二年生か、三年生か、思い出せないけれど。

 辛い時の合言葉を、決めたことがある。


 ——小学校特有の、純粋で、高校生とは違った意味でのバカっぽい友達なかま。


 その友達なかまグループ三人で、公園の芝生に寝っ転がった。

 不意に、一人(修紀)が言い出した。


「なぁ」


 ん? と返事をしたのは、慶弥だ。

 ボクはそのとき、遠くの空を見つめていた。

 青い空が、薄い雲で覆われていた。


「つらいときの、合言葉って知ってるか?」


 知らない、と慶弥は答えた。

「知らない」という声で、ボクの意識は空から会話へうつった。

 慶弥にワンテンポ遅れて、「さあ?」と答える。


「実は、おれも知らない」

「ハァ?」


 気の抜けたような声が、公園に響く。


「知らないから、決められるってことじゃないか」


 修紀シュウが、目を輝かせた。

 ボクら二人も同調する。


 ——そのとき、合言葉を決めた。


 ピーポー……ピーポー……

 シンプルな旋律を響かせて、警察がやって来る。僕は今、車のトランクの中だ。

 黒いパーカーの男に連れ去られて、「アジト」なるところに向かわせられるらしい。

 臓器の売買とか、変なことがなかったらいいな……。


 そう祈りながら、約束を思い出した。


――辛いときは、助けて、って、言うんだ。


 ——それ、合言葉じゃなくない?


――でも、大事だろ?

 

 ——……まぁね。


「ツライ!」


 ボクは大声で叫んだ。

 すると、パトカーが近づいてきて、無線が聞こえた。


「もしかして、巧か!?」

「その声は、慶ちゃん!?」

「助手席に、シュウも乗ってるぞ!」


 何と二人は警察官だったようだ。


 思わぬ形で再開したが、顔は見えないボクたち。そのあとボクらは救出され、ついに顔を見られる形で再会を果たした。

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