表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/54

第十話 束の間の休息と、繋がる絆

サンライト王国の「心臓」が再び脈打ち始め、街全体が黄金の輝きを取り戻した祝祭の夜。アルスたちは一時、戦いの喧騒を離れ、王宮へと帰還しました。

サンライト国王ゼノスは、謁見の間でアルスの手を力強く握りしめました。

「アルス男爵、そしてルミナスの精鋭たちよ。……貴公らは、我が国の歴史そのものを救ってくれた。ドルトンたちの洗脳が解け、貴族派も解体・再編されることになった。これからは真の友好国として、ルミナスと歩みを共にしよう」

 アルスは静かに一礼し、傍らで安心したように微笑むセリア王女、そしてエリック王子を見つめました。

「約束、覚えてるよ。ソル王子」

 アルスが呼びかけると、小さなソル王子が「賢者さま!」と叫んで駆け寄ってきました。アルスは彼を抱き上げ、かつて枯れていたあの一枚の葉を返しました。今はスキルの力で『永遠の黄金葉』へと修復され、触れるだけで温かな魔力が伝わるお守りになっています。

「わあ……! 木の神さま、元気になったね! ありがとう、賢者さま!」

「ああ。この木が守るこの国を、君が立派に継ぐんだよ。……さあ、僕は少し、自分の家の様子を見てくるね」

遠き聖都の情景:代官ハンスとフィリアの視点

 その頃、ルミナス王国の自治区『聖都マイ・ルミナス』。

 アルスたちが不在の間、この街の運営を任された代官ハンスは、執務室で山積みの書類を片付けていました。

「……ふむ。サンライト王国への追加物資の輸送計画は順調か。アルス閣下が遺していった『複式簿記』と『魔導計算機』のおかげで、これほどの規模の街でも一人で管理できてしまう。……恐ろしい御方だ」

 ハンスは窓の外、夜でも活気に満ちた市場を眺め、独りごちました。

「閣下は今頃、隣国で神話の続きを書き換えておられるのでしょうな。……私たちは、閣下がいつ帰ってきてもいいように、この『帰るべき場所』を一点の曇りもなく守り抜くだけだ」

 一方、領主邸のバルコニーでは、第二王女フィリアが月を見上げていました。

 彼女の手には、アルスから届いたばかりの魔導通信機――アルスが「情報の波」を修復して作り出した、双方向の通信機が握られています。

「……アルス様。世界樹を救われたのですね。……あなたの声を聞くだけで、私の不遇だった日々が、すべてこの日のための準備だったと思えるのです」

 フィリアは、自らの『翻訳』スキルを使い、アルスが送ってきた複雑な数式や古代語の断片を、領地の運営に役立つ形へ書き換える作業を続けていました。

「待っています、アルス様。……あなたが世界の歪みをすべて直し終えた時、その物語を一番近くで聞き、後世に語り継ぐのが、私の役目ですから」

 聖都の夜風が、アルスへの深い愛と信頼を乗せて、遥かサンライトの空へと流れていきました。

次なる旅路への予感

 翌朝。アルスはサバス、ロイ、リィナ、そしてミーナを伴い、王宮の門前に立っていました。

「……さて。ハンスもフィリアも、しっかりやってくれているみたいだ。……ロイ、準備は?」

「万全です、閣下。……エルフの国、シルヴァニア。人の足では辿り着けぬその森の入り口、私が斬り拓きましょう」

「サバス、リィナ。……ミーナも。……行こうか。世界樹の『裏側』へ」

 アルス一行は、サンライト国王一家の見送りを受け、ついに伝説の精霊王国へと続く、未知の領域へと足を踏み出しました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ