第三十六話:ルミナスの黎明――情報の賢者と剣聖の決断
建国祭の熱狂が、一瞬にして凍りつきました。
演壇に立つガストン侯爵の背後から、漆黒の甲冑を纏った「貴族派」の隠し兵団が姿を現し、国王を包囲します。
決断
「……認めぬ! 我が血脈の誇りを汚す者共は、この場で根絶やしにしてくれるわ!」
狂乱したガストン侯爵の合図とともに、広場は戦場と化しました。
【エドワードvsレトヴィス伯爵:宿命の抜刀】
王座へと続く大階段。そこを塞ぐように立ちはだかったのは、当代随一の『剣豪』、レトヴィス伯爵でした。
「エドワード……貴様、レトヴィスの『武』を裏切り、あの無能に膝を屈したか」
「……いいえ、父上。僕は『無能』に屈したのではない。アルスの見据える『真理』に、僕の剣を預けたのです」
エドワードが『剣聖』の神速で踏み込みます。父子の刃が交錯し、火花が夜空を焦がす。伯爵の放つ重厚な斬撃を、エドワードはアルスが修復した「古代の流体歩法」で受け流し、その懐へと滑り込みました。
「父上が教えてくれなかった『守るための剣』……今、ここでお見せします!」
銀光が一閃。エドワードの剣が、伯爵の愛刀を根元から断ち切りました。殺さず、ただその「武の象徴」を砕く。膝をついた父を背に、エドワードは前へと進みました。
【包囲網の完成:同盟の絆】
貴族派の私兵団が数で圧倒しようとしたその時、広場の四方から怒号が響き渡りました。
「サンライト王国騎士団、参る! ルミナスの若き賢者との盟約に従い、逆賊を討て!」
第一王女セリアの夫、エリック王子率いる黄金の騎兵隊が突入。さらに、ラインハルト辺境伯の精鋭たちが、サバスとロイの指揮下で、貴族派の伏兵を次々と無力化していきます。
「サバス様、左翼は掃討完了です」
「よろしい。ロイ殿、閣下の背後は一歩も通さぬように」
「言われるまでもありません!」
【アルスvsガストン侯爵:崩れ去る虚飾】
混乱の頂点、アルスは国王の前に立ち、ガストン侯爵と対峙していました。侯爵は隠し持っていた「禁忌の魔導核」を起動させ、周囲の魔力を暴走させようとします。
「これこそが真の英雄の力だ! すべてを灰にしてくれるわ!」
「……侯爵閣下。貴方は最後まで、情報の『劣化』に気づけなかった」
アルスが宝剣『ソル・レイス』を掲げます。
分子振動の術式を最大出力で展開。アルスの瞳が、侯爵が操る魔導核の「不安定な結合点」を正確に射抜きました。
「――修復。暴走する力を、平穏な『秩序』へ戻す」
ソル・レイスの刃が魔導核に触れた瞬間、爆発的なエネルギーは淡い光の粒へと分解され、王都の空へと霧散していきました。
力が抜け、その場に崩れ落ちる侯爵。
「……バカな……私の、英雄の力が……」
「英雄の力とは、壊すことじゃない。……守り、繋ぐことだ」
アルスは静かに剣を鞘に納めました。
朝日が昇り、ルミナス王国の新しい歴史が、本当の意味で「修復」された瞬間でした。




